「尖閣・ロシア大統領の北方領土視察」に関する孫崎享氏の「ツイート」
- 2010年 11月 4日
- 時代をみる
- 北方領土孫崎享尖閣
尖閣
30日朝日「中国、首脳会談を拒否。”日本が雰囲気壊した”日本政府としては非常に驚いた」と報道。「驚き」ではない。「当然の帰着」。
その情勢判断出来ない「日本政府」が判断能力不足で問題。
多々失敗を重ねているが最大の問題は「棚上げの約束なし」とする政府答弁。過去の事実を歪めるのみならず、将来武力衝突を避けるメカニズムを破壊する動きだけに深刻。中国事態は深刻とのメッセージ。しかし日本はそううけとれないだろう。
日中国交回復、平和友好条約作成時、尖閣はトゲ。双方とも領有権主張。「棚上げ」という言葉で合意したわけでない。しかし双方とも、「尖閣の問題をここで協議案件にしない。先に送る」態度で合意。かつその後外交チャネルで中国はしばしば「国交回復時、平和友好条約時棚上げし、それを基本原則とする」点を確認している。
言葉で「棚上げに合意した事実ない」は全くの詭弁。それを外務官僚が説明してるなら責任重大。民主党も歴史勉強すべし
棚上げ方針(実質)を明確に述べたのは78年8月10日の鄧小平・園田外相会談。この点はツイッター済み。更に事実あり。78年4月中国漁船が突然尖閣諸島周辺に集結。日本巡視船の撤退勧告にもかかわらず滞在。二週間後の撤去の事件有り尖閣無視し平和友好条約締結不可。
永野信利著『天皇と鄧小平」では次の記述。「5月10日佐藤大使が外務次官と会談。日本側より尖閣問題持ち出し。次官会談打ち切ろうとしていたのに対し同席の堂ノ脇公使食い下がり”最終決着をしないで会談を終えれば条約を結べなくなる”と指摘。押し問答の末、結局中国側は日本側が示した3点を確認した。
”尖閣諸島問題は大局的見地に立って処理することとし、この問題に関する日中国交正常化の際の双方の態度に変わりはない”。(引用了)
もし外務官僚が外交文書をひっくり返し「棚上げ」という単語がないことで「棚上げで合意事実なし」というなら余りに姑息。実質内容日本側からも持ちかけ。
「棚上げなし」の政府答弁は過去の実態を否定するだけでなく将来に深刻な影響。民主党の責任重大。今日の外務省、前原大臣は確信犯の様相。他の民主党議員の責任重大。日中国交回復、平和友好条約作成時の外交チャネル対話をチェックし実体的な「棚上げ合意」の事実の有無確認が早急に必要。
ロシア大統領の北方領土視察
1日朝、国後島訪問に向かったとみられると報道。単純。今やロシアが日本を気遣う理由なし。NATOはロシア敵視政策を終了。ロシア、対日政策で米国要因考慮する必要なし。ロシア、中国とはさまざまな協力必要。ロシア大統領の北方領土視察は当初中国訪問後を予定。
ロシアの主な貿易相手国(09年):上位からドイツ、オランダ、中国、イタリア、ベラルーシ、ウクライナ、トルコ、米国、フランス、ポーランド、日本。
ロシアにとり経済でも中国が日本より重要。ロシアが中国に配慮し日本軽視は自然の成り行き。日本の環境ますます厳しい。
日本での議論何が問題か。基本戦後の処理、及びサンフランシスコ条約で日本関与し決着。この点意図的外し論議。
日経「管総理:固有の領土。大変遺憾、前原外相:適切な対応」北方領土ロシア実質支配。先方国内法で対応。これには「適切な対応」(何あるの?狼少年の懸念)。尖閣日本実質支配。国内法に従い粛々。中国対抗措置は想定外。。両政策併存は矛盾。日本外交論理欠如。国際的支援獲得は無理
戦後の基礎はポツダム宣言。日本はこれを45年8月14日受諾。領土は「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ 」。
極東委員会の「降伏後の対日基本政策」も同じ。「千島列島が日本領で有るか否か」は連合国側が千島を「吾等ノ決定スル諸小島」に該当するかの問題。
連合軍最高司令部訓令(21年1月)は日本の範囲に含まれる地域から、千島列島を除外。
この流れの理解には終戦前、米国がソ連参戦を求めたことと関連。 ルーズベルト、ヤルタで千島ソ連に提供し代わりに参戦求める。
トルーマン大統領発スターリン宛書簡(45/8/18)「千島列島の全てをソ連極東軍司令官に明け渡すことに合意」。
次いでサンフランシスコ条約。「日本国は千島列島に対するすべての権利、請求権を放棄する」。この時千島に国後、択捉が含まれているかが一つの議論。署名前日吉田首相は「千島南部の択捉、国後両島が日本領であることについては帝政ロシアも何らの異議を挟まなかったのであります」と発言。しかし翌日千島放棄の文書に署名。
2つの意味。吉田首相は択捉、国後を千島南部と認識して署名。両島が歴史的に日本という論理は受け入れられなかった。従って国際的に国後択捉日本でなく、ソ連に属することは米ソで決着。
流れがどこで変わったか。鳩山総理の平和条約締結交渉。2島で合意計る。
五六年九月米国国務省は日本に「日ソ交渉に関する米国覚書」。日本はサンフランシスコ条約で放棄の領土に対する主権を他に引き渡す権利を持っていない。同条約署名国はかかる行為に対してはおそらく同条約によって与えられた一切の権利を留保するものと推測される」。政策企画部長ケナン等北方領土についての争いが何年間も日ソ関係を険悪なものにするかもしれないと考えた。
冷戦時代米国は基本的に終結していた北方領土を問題化させ、日本国内世論をあおり、日本を対ソ包囲網にがっちり組み込み。この図式尖閣と類似。基本的に既存の紛争回避の仕組みを壊し尖閣を問題化、対中包囲網に組み込み。常に日本人内に協力推進者を見つけ、これを育成擁護。
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http://twitter.com/magosaki_ukeru から孫崎享氏の許可を得て転載。
――孫崎享氏は、元外交官(イラン大使、外務省国際情報局長など)・元防衛大学校教授。――
なお本文の「尖閣」は、6:08 AM Oct 30th~6:44 AM Oct 30 th 尖閣1~尖閣7として発信されたものであり、「ロシア大統領の北方領土視察」は、4:25 PM Oct 31st~6:09 PM Nov 2nd ロシア大統領の北方領土視察1・2、北方領土1~6、尖閣と北方領土 として発信されたものである。また、改行はすべて編集部による。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1081:101104〕
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