「積極的平和主義」など安倍首相の訪欧発言に驚く
- 2014年 5月 10日
- 時代をみる
- 池田龍夫
欧州訪問中の安倍晋三首相の自己PRが凄まじい。アベノミクスや集団的自衛権容認を得意げに喋っているが、各国はどう受け取っているだろうか。最後の訪問国ベルギー(5月7日付夕刊)では、中国の海洋進出や軍拡の傾向に名指しで非難しており、ギクシャクしている日中関係打開に水を差す発言に驚かされた。
「巧言令色鮮し仁」の類い
安倍首相の「積極的平和主義」という言葉のレトリックであることは明らか。「平和のため、戦争に備える。戦争になりそうな存在を力でねじ伏せる戦術で、そのためには軍備の強化が必要であり、本格的な軍事衝突に発展する恐れが潜む。「巧言令色鮮し(すくなし)仁」の譬えにドンピシャな、安倍首相のレトリックではないか。首相が目指す集団的自衛権容認、非核3原則の見直し、武器輸出3原則のなし崩し――等々、戦争準備への道案内をしているようだ
平和主義を掲げた憲法改正に狙いがあることは見え見えで、日米同盟(対米追随)をテコに地球の裏側にまで「国防軍」を派遣する意図を感じる。欧州各国は「安倍発言」を儀礼的に受け取っているに違いなく、それに気づかぬ日本政府の能天気ぶりには驚く。
原子力推進国フランスとの提携も禍根残す
さらに原子力推進国フランスと共同開発に合意した点は重大だ。脱原発を標榜しているドイツをパスしてフランスと手を結ぶとは危険極まりない。具体的には高速増殖炉もんじゅを取り上げ、日本の技術を提供するとはオコガマシイ話ではないか。もんじゅは度重なる事故で本格稼働の道は開けていない。首相の大言壮語を信ずる技術者はいるだろうか。核廃棄物の〝捨て場〟にも協力し合うというが、「絵に描いた餅」のそしりを免れまい。
尖閣問題、オバマ大統領発言を〝誤訳〟とは・・・
多少旧聞だが、来日したオバマ米大統領の共同記者会見(4月24日)で〝誤訳〟があったことが、ピースフィロソフィーの指摘で明るみに出た。この問題を伝えた4月27日付琉球新報によると、日本政府は通訳機を用意。日本のメディアは同時通訳を通じてオバマ発言を伝えた。ところが、「重大な誤り」を指す「profaunnd mistake 」を、「正しくない」と訳したことを受け、そのまま報じていた。オバマ氏が安倍氏に平和解決を求めた強い語調なのに、オバマ大統領の真意が伝わってこない。同席した外務省高官が違和感を持たなかったとは考えられず、政府は直ちに訂正報道すべきであり、これを放置したメディアの責任も大きい。
沖縄の基地問題などを英語と日本語で発信している日本の平和団体ピースフィロソフィー(カナダ)の乗松聡子代表は「オバマ氏が尖閣問題処理に安倍首相に直接釘を刺した言葉を日本のメディアは重視せず正確に報じていない。読者、視聴者に誤解を与えるような話ではないか」と話していたが、まさにその通りの失態である。
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