取材も報道もしない報道機関 ―ここまできたNHK―
- 2014年 5月 12日
- 時代をみる
- NHK半澤健市
これがNHKである。私はショックを受けた。
一つの雑誌記事を紹介する。雑誌は『月刊マスコミ市民』の2014年5月号。記事タイトルは「事実を報道しなくなったNHKローカル局―籾井新体制の影響か」。筆者は田嶋義介氏(島根県立大学名誉教授)である。
《過去最大の参加者が集まる》
内容は明快だ。
二つの反原発集会を、NHK地方支局が、報道はおろか取材もしなかったというものだ。
一つは、2014年3月8日に行われた「上関原発を建てさせない山口県民大集会」である。県内の50を超える脱原発市民団体が大同団結し山口市の維新記念公園で大会は開かれた。過去最大の約7千人(主催者発表)が集まった。民放各社は夕方からのローカルニュース番組で報道し、翌朝の新聞各紙も紙面を割いた。「ところが、NHK山口放送局は取材も報道もしなかった」のである。不満をもった実行委は、「報道についての要望と質問」をNHK山口放送局長に提出した。放送法第四条二項の「政治的に公平であること」、四項の「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に反する行為ではないか、というのが質問の主眼である。NHKの回答は、「個別ニュースの編集判断については答えない」とし、「放送法違反ではないか、との指摘には反論せず、取材もしなかった理由も明らかにしていない」という。この対応に反発した「原発いらん!山口ネットワーク」は代表が350人の会員に受信料支払いの一時停止を呼びかけたという。
《他の取材項目等を総合的に判断した結果》
二つは、3月16日に行われた鹿児島市の九州電力川内(せんだい)原発の再稼働阻止を掲げての「さよなら原発かごしまパレード」である。県内80団体の呼びかけで、鹿児島市中央公園に、過去最高の約6千人(主催者発表)が集ったのち市内の繁華街を練り歩いて再稼働反対を訴えた。民放、新聞各社は報道したが、NHK鹿児島放送局は取材もしなかった。HPを通じての問い合わせに、NHKは「当日の他の取材項目等を総合的に判断した結果、取材しておりません」と返答した。「今夏にも再稼働かと全国的に注目されている川内原発をめぐる県民6千人の意思表示より優先すべき取材項目があり、取材しなかったというわけだ」と田嶋氏は書いている。
昨13年12月1日には、伊方原発(愛媛県伊方町)の再稼働に反対する「NO NUKES えひめ」集会に、四国の脱原発運動史上最高の約8千人(主催者発表)が松山市の城山公園に詰めかけた。この時にはNHK松山放送局は取材、報道した。
昨年末には報道したのに、今年3月に報道しなくなったのはなぜか。NHK上層部の指示か、現場の自主規制なのかはわからない。この間に起こった変化は今年の1月25日に籾井会長の就任である。田嶋氏は「NHKが事実隠しを続ければ、報道機関とはいえなくなるのではないだろうか」と結んでいる。
《「それがどうした」という読者がいても》
以上は半澤による田嶋記事の要約である。「それがどうした」という読者もいるだろう。
「リベラル21」には一日約1000件のアクセスがある。しかし「ここまできたNHK」を知る読者は1割もいないだろう。そう思って私はこの紹介を書いた。本稿の目的はそれだけである。
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