テント日誌 5月29日(木) 経産省前テントひろば991日目 商業用原発停止256日
- 2014年 5月 31日
- 評論・紹介・意見
- 経産省前テントひろば
美味しんぼ問題について
―― 権力による真実の封殺を許してはならない。―――
経産省前テントひろば(文責:高瀬晴久)
1 美味しんぼ「福島の真実」編に対して政府や自治体関係者(安倍首相、石原環境大臣、福島県、福島市、双葉町、大阪府知事、大阪市長など)やマスコミは猛烈な誹謗、中傷、抗議・攻撃を行いました。石原環境大臣は「何を意図しているのか理解できない」と、安倍総理は「根拠のない風評」とそれぞれ発言し、福島大学学長は、荒木田准教授の発言を公然と批判しました。それは、(1)鼻血の多発があたかもデマであり、(2)鼻血が被ばく(放射能)と関係がなく、(3)「風評被害を助長する」というものです。福島で起きている事実や放射能被害に対する科学的知見の無視、あるいは黙殺して行われた公権力によるこれら攻撃は、政府の言いなりにならない者を委縮させることを狙ったものであり、雁屋哲氏の「表現の自由」、小学館の[出版の自由]を侵害するものであり、福島大学学長の行為は大学教員の「学問の自由」に対する侵害に他ならず、井戸川克隆前双葉町長に対して浴びせられた、まるで嘘つきであるかのような人格攻撃は重大な人権侵害です。絶対に容認できるものではありません。
2 福島では、100ミリシーベルト以下の被ばくでは健康障害はない、福島第一原発事故によって放出された放射能では健康障害は生じないという誤った宣伝が、行政によって地域、学校で徹底的になされてきました。今回の異常なまでの攻撃は健康への不安・異常を口に出せなくなる空気を助長し、放射能に不安を感じながら生活している人たち、とりわけ子育て中の人々を今まで以上に抑圧する結果を招いています。
故郷を追われ、職業をなくし、地域コミュニティを奪われ、家族バラバラにされ、健康不安を抱え、先の見えない生活に疲弊している福島の人たちは、将来に対する不安も、現実に起こった出来事すら口にできない状況に追い込まれようとしているのです。私達はこの攻撃に満腔の怒りを持って抗議するものです。
3 しかし、彼らがいかに声高に攻撃しようとも、井戸川克隆さん自身が語るように、多く人々の鼻血の体験や、また、多くの人々が直接見聞きした事実を消し去ることは出来ようはずもなく、それは逆に、政府に対する疑念を広げ、放射線管理区域に相当する地域に住み続けることへの危険性と放射能健康障害の事実を浮かび上がらせ、多くの市民の反発と怒りをも生み出しています。一連の事態が明らかにしたのは、これらの事実が焦点化(顕在化)する事に対する政府・福島県の危機感とその深さに他なりません。
4 “鼻血”が福島原発事故による放射能汚染が原因であることを明らかにした調査は存在します。
1) 鼻血の事実は沢山報告されています。①伊達市立保原小学校の保健だより(2011年7月)1学期に鼻血を出す子が多かった事が記載されています。②国会議員質問でも多く触れられています。(平成24年6月14日、参議院東日本大震災復興特別委員会での自民党、森まさこ議員)③雑誌「デイズジャパン」
の編集長広河隆一氏はチェルノブイリの原発事故後、周辺住民5人に1人は鼻血を訴えていたことを明らかにしています。④何よりも井戸川さんが自ら“鼻血”の事実を証言しています。
2) 環境省環境保健部は5月8日付で「放射性物質対策に関する不安の声について」を発表し、「東京電力福島第一原子力発電所の事故の放射線被ばくが原因で、住民に鼻血が多発しているとは考えられません」と述べています、しかし、“鼻血”が放射線被ばくに因るものでないとは一切証明していません。一貫して、健康被害調査をサボタージュし、データを隠し続け、沢山の鼻血の事実に対し、その原因が放射線被ばくではないと証明もせず、「考えられません」と切り捨てる態度は科学的な態度ではなく、憲法13条「・・生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法、その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」に反しています。
3)”鼻血”が福島原発事故による放射能汚染が原因であることを明らかにした科学的な調査結果は現に存在します。それは「水俣学の視点からみた福島原発事故と津波による環境汚染」(中地重晴)2013.11 (大原社会問題研究所雑誌 No661/2013.11)です。http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/661/661-01.pdf
この中の18、19ページに、「(11)双葉町民の健康調査の中間報告」があります。この調査は、「岡山大学大学院環境生命科学研究科の津田敏秀氏,頼藤貴志氏,広島大学医学部の鹿嶋小緒里氏と共同で,双
葉町の町民の健康状態を把握するための疫学調査を実施した」ものです。曰く「今回の調査による結論は,震災後1年半を経過した2012年11月時点でも様々な症状が双葉町住民では多く,双葉町・丸森町ともに特に多かったのは鼻血であった。」と述べられており、「双葉町,丸森町両地区で,多変量解析において
木之本町よりも有意に多かったのは,体がだるい,頭痛,めまい,目のかすみ,鼻血,吐き気,疲れやすいなどの症状であり,鼻血に関して両地区とも高いオッズ比を示した(丸森町でオッズ比3.5(95%信頼区間:1.2,10.5),双葉町でオッズ比3.8(95%信頼区間:1.8,8.1)」といった数字が示されています。
付言すれば、環境省が依拠する国連科学委員会UNSCEAR(アンスケア)なる団体は、世界中で発表される放射線の影響に関する多くの科学論文の中から原子力推進に都合のいいものだけを選別する為に原子力マフィアによって設立された団体であり、ICRPはこのアンスケアによって選択された論文だけを基に勧告を作成するのです。環境省が根拠とする報告書のベースとなった報告書(平成25年10月25日公表)に対し日本の64の市民団体は、この調査結果が客観性・独立性・正確性において疑問があり、被ばくの過小評価が住民の保護や人権尊重に悪影響を及ぼしかねないことについて深刻な懸念を表明し、国連科学委員会と国連総会に対して見直しを求める共同アピールを出したことは記憶に新しいところです。
5) 風評ではない! 被害は東電と政府にこそ要求すべきものだ!
風評被害の大合唱が行われました。しかし、被害が有るとすれば、それは、東電と国に要求すべきものです。美味しんぼの表現をもって風評被害を語るのは筋違いです。福島第一原発事故が全ての原因であり、責任は東電とそれを“安全神話”の下で推進してきた国が負うべきものであることは明白です。
6) 放射能健康被害対策が急務。
5月19日(月)福島県民健康調査検討委員会が開催され、調査結果が公表されました。小児甲状腺がんないしその疑いが89名です。国立がん研究センターによる日本国内の甲状腺がん発生率は、15歳から 19才歳の年平均で20万人当たり1人程度です。有病期間3年と仮定すると20倍を超える発生率です。異常多発(アウトブレイク)は明らかです。鼻血が焦点にされましたが、事態は遥かに進行しているのです。現在の健康調査は行政調査である為、データの本人開示もなく、健康相談や予防対策に結びついたものになっていません。チェルノブイリでは、事故の4年後から小児甲状腺がんが多発し、がん以外に、若年白内障、歯と口の異常、血液、リンパ、心臓、肺、消化器、泌尿器、骨及び皮膚の疾患など広範囲に健康障害が起きています。福島第一原発事故から3年2カ月を迎える今日、事態は急を要しているのです。
経産省前テントひろばは、美味しんぼ「福島の真実」編に対する誹謗、中傷、攻撃に断固として抗議するとともに、福島とともに歩む取り組み(福島原発告訴団に連帯し、福島疎開裁判を支援し、放射能健康診断署名を国民的な運動に広げ、放射能健康診断の制度化を求める)を進めることを改めて宣言します。
2014年5月27日
テントからのお知らせ
1) 6月1日(日) 第9回東電本店合同抗議(13時~13時45分)
呼びかけ:たんぽぽ舎、テントひろば 賛同団体:81団体
6月1日(日) 川内原発再稼動やめろ 官邸・国会前★大抗議
14時~17時 首相官邸前・国会議事堂周辺 主催:首都圏反原発連合
2) STOP再稼動!テント1000日 6・8記念集会
6月8日(日)14時~16時30分
明大リバティーホール 福島の祈り★神田香織
3) 6月12日(木)~14日(土)川内現地行動
ツアーの募集は締め切りました。個人で参加の人は現地行動の責任者と 連絡を。(070-6473-1947)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion4866:140531〕
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