最後は金目(かねめ)でしょ
- 2014年 6月 21日
- 交流の広場
- 熊王信之
福島第1原発事故の汚染土貯蔵施設に関わる「最後は金目(かねめ)でしょ」との石原伸晃環境相の発言を巡って、巷間では、辞職を求める声が大きくなっているらしい。
何が、問題なのか、と不謹慎にも思わずには居られない。 原発関連だけでは無くて、今の今まで、全てお金で解決して来たのが、日本と云う国であるのに。
例えば、電源三法と呼ばれる法令を御存じだろうか。 三法とは、電源開発促進税法、
特別会計に関する法律(旧 電源開発促進対策特別会計法)、発電用施設周辺地域整備法、この三法を指す。 その主目的は、電源三法交付金を建設する発電所の地元地方自治体へ渡すことにある。
電源三法の「電源」を開発と呼び換えても良いし、米軍基地と呼び換えても良い。 何から何まで、お金で合意を取り付けて来たのが事実である。 石原環境相は、その事実を指摘しただけである。 馬鹿正直にも。
こうした話は、我々の身近にも沢山あり、事例には困ることが無い。 例えば、私の友人に関西の或る閑静な郊外に自身の給料の割に、可成りの大きさのある庭園が付いた自宅を買った者が居た。 ところが、その近在に時ならぬ宅地開発話が起きて、友人を含めて反対運動が起こった。 開発業者との事前折衝では、住民の強硬な発言を恐縮して聞いていただけの開発業者側だが、その夜遅くに業者の社員が友人の自宅を訪れて、些少ですが、と菓子折りと現金の入った封筒を差し出したそうである。
玄関先で、業者側の態度に激怒した友人を茫然と見つめた社員は、ほんまに反対したはるんですか(本当に反対をしておられるのですか)、と半信半疑であったそうな。
開発関連の業務に詳しい私に相談があり、実態を説明しながら、大規模開発のある地元自治体からして「開発協力金」なり、「開発負担金」等々の名称で業者側より金銭を徴収していることからして、地元住民も、迷惑料として何がしかの金銭を提供すれば、合意に至るのが常識化している、のが現実で、例外的に、自然環境の保全等を目的に本当に開発そのものに反対する住民は珍しい存在、と回答しながら忸怩たる思いがしたものである。
蛇足ながら、友人には、法令に基づいて規制をするためには、新たな開発時には、「建築協定」を締結する義務を定められるように条例を制定する必要を説いたのであるが、それには、金銭目的で反対する住民の合意は得られることの無い現実を考え併せる必要をも説明をしなければならなかった。
現代日本の慣行からして、裏面の問題を表面に出した石原環境相は、礼儀に反する、とは言えるであろう。 そのような問題は、公務から外れた夜の街で話すべきものである。 くれぐれも、公務中に話すべき事柄ではないのである。 これだから、お坊ちゃまは困る。
表裏一体で話すと誤解を招くのは当り前である。 そんなルール違反をする開発関連業者は、私の知人には居ない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%BA%90%E4%B8%89%E6%B3%95
電源三法 Wikipedia
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