「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」
- 2014年 7月 11日
- 交流の広場
- 熊王信之
1武力攻撃に至らない侵害への対処
(1)「純然たる平時でも有事でもない事態-中略-こうした武力攻撃に至らない侵害に際し、警察機関と自衛隊を含む関係機関がー中略-いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するための態勢を整備する」
これは、具体的に云えば、「2国際社会の平和と安定への一層の貢献」の結果、米国を始めとする西側先進諸国に依るテロとの戦争に加担した我が国への正体不明のテロリスト等に依る攻撃が予測されるような事態に即応した体制整備の必要性を云う。 出入国管理を含む関係行政機関を含めて治安維持と有事に即応した体制を整備することを指す、と理解すべきである。 この結果は、必然的に警察機関の準軍事化が予測される。 米国を観れば一目瞭然である。 各級警察機関は、重武装し軍事訓練を実施している。 更に、SWAT等と云う特殊治安部隊も増強されている。 この例に倣うことになるのであろう。
(2)「警察や海上保安庁などの関係機関が、-中略-対応能力を向上させ、情報共有を含む連携を強化し、具体的な対応要領の検討や整備を行い、命令発出手続を迅速化するとともに、-中略-必要な取り組みを一層強化することとする。」
これは、準有事にあっても治安維持に即応した体制を整備する、との意であろう。 治安機関の準軍事化とともに、治安維持態勢に即応した法制の整備も含まれよう。
(3)は、日本領の南西諸島のような場所で、外部からの侵入等があった場合における有事即応体制の整備である。 小型潜水艇や、潜水用具を使用しての小規模偵察部隊や海兵隊等に依る日本領土の占拠があった場合における即応体制を整備せんとするものである。 具体的には、竹島の如く、日本領土への侵入があった場合に、速やかに実力排除を行おうとするものである。 当然、そうした実力の整備も含まれるので、現行陸・海・空の三自衛隊である体制に海兵を加えることも勘案されるであろう。 更には、上陸支援艦等の補正も。
(4)「自衛隊と米軍部隊が連携して行う平素からの各種活動に際して、-中略-米国の要請又は同意があることを前提に、-中略-必要最小限の「武器の使用」を自衛隊が行うことができるよう、法整備をすることとする。」
これは、例えば、米第七艦隊の哨戒に随伴している海上自衛隊艦艇、乃至、航空機に依る対潜哨戒時その他において必要であれば攻撃も出来得るように関係法令を改正せんとするものである。 また、米艦隊基幹艦艇である航空母艦よりの偵察等により国籍不明艦艇等が発見された場合等における自衛隊機等に依る警戒、乃至、必要とあれば攻撃も可能にせんとするものであろう。 航空自衛隊機に依る米艦隊直援も含むであろう。 尚、これには日本の領海内における場合、との限定は無いことに注意。
更には、「米軍部隊」とあることから、海軍に限定はされず、陸軍、乃至、海兵隊との共同演習時や出動時にも及ぶこととなるであろう。 更には、沖縄等にある米空軍基地所属空軍機との航空自衛隊機との連携も想定されよう。 具体的には、朝鮮半島の有事も想定され得る。
なお、尖閣諸島においては、現在でも偶発的衝突の危険性は実在している。 中国に依る防空識別圏設定があったことに依り、その運用次第では、何時でも軍事的衝突が起こる危険性が実在する。 日本の場合は、領空侵犯に対応するのは、航空自衛隊の戦闘機に依るスクランブルであるから、中国機(民間機も含む)の日本領空への接近時にスクランブルをした自衛隊機に対して、反対に、中国の設定した防空識別圏内に自衛隊機が侵入したとして、中国空軍機がスクランブルをかければ、尖閣諸島上空における偶発的戦闘の危険性は大きい。 また、自衛隊機に依る哨戒時も同様である。
ただし、米空軍機と航空自衛隊機に依る個別の中国防空識別圏内の飛行時には、中国側は特段の措置は取らなかったので、衝突は生じなかった。 しかし、依然としてその危険性は現存する。
なお、海上保安庁巡視船艇と航空機は、海上保安庁との直接通信を保持しその指示に従い現地で活動している。 外国船舶の規制は、抑制的であり、現在に至るも中国当局船艇との摩擦は生じて居ない。 一時、中国当局船艇からの放水を受けるも対抗策は講じなかった。
尖閣諸島防空識別圏問題 Wikipedia
2国際社会への平和と安定への一層の貢献
(1)いわゆる後方支援と「武力の行使との一体化」
此処に書かれたものを具体的に想定することは困難であろう。 抽象的文言にのみ存在する修飾的限定句を連ねているだけで、要するに、イラクやアフガニスタンへの派兵をも合法化せんとするものである。
中身は、なかなか笑わせてくれるが、これでは実際に戦場で戦っている「他国軍隊」が承知するのか。 例えば、ウの(イ)では、「我が国が支援活動を実施している場所が『現に戦闘行為を行っている現場』となる場合には、直ちにそこで実施している支援活動を休止又は中断する。」とは、弾が飛んで来れば逃げる、ことを云うのであろうが、そんな真似をするなら最初から来るな、と云われるであろう。
(2)国際的な平和協力活動に伴う武器使用
所謂、「あてと褌は、向こうから外れる」と云うものである。 色々と限定しても無駄。
実際に戦場では、そんな修飾語句に囚われて右往左往する者は居ないであろう。
立法実務で複雑な法令を作成しても、実務で戦場に在れば、無視されよう。 反対に、複雑な法令に拘れば戦死の憂き目にあうことであろう。 最初から無視されることを前提にするなら別だが。
しかし、本当に気は確か。 こんな条件を書いた人は。 例えば、ウにあるが、「我が国として、『国家又は国家に準じる組織』が敵対するものとして登場しないことを確保した上で」とは、一体、どうやって条件設定をするのか。 笑止千万。 テロとの戦いにおいて、何時いかなる敵対勢力が眼前に出現するかを予測すること等は不可能であるのは常識であろう。
全く想定不可能な場合に限定して無難な派兵を実施する如く装うが、実態は別であることは自明である。 空証文を見せて自衛隊員を死地に送るのは止めよ。
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/housei_seibi.html
安全保障法制の整備について 内閣官房
「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(閣議決定)全文とQ&A
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