60%以上の若者が集団的自衛権行使に反対 -日青協のアンケート調査結果から-
- 2014年 7月 31日
- 時代をみる
- 岩垂 弘集団的自衛権
安倍政権が進める憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認を若者はどう見ているのだろうか。「中高年に比べて関心が低い」と言うのが一般的な見方だが、この問題に関する調査が、青年団の全国組織、日本青年団協議会(本部・東京)でまとまった。それによると、若者もこの問題に対して決して無関心でなく、むしろ平均的な一般国民よりも強い危機意識を抱いているようだ。
青年団は地域を基盤とする若者の組織で、地域の発展を目指してさまざまな活動を展開している。戦争直後には全国の至るところにこの組織があったが、その後の急速な高度経済成長によって農村の解体、都市への人口集中が進み、それに伴って青年団の衰退も進んだ。が、今なお、北海道、東北、北陸、四国、九州などを中心に青年団が健在で、日青協傘下の青年団員は公称で15万人とされる。
日青協の機関紙「日本青年団新聞」2014年7月号によると、日青協は6月6日から20日にかけて、主に10代から40代の男女を対象に「集団的自衛権に関するアンケート調査」を実施した。「多くの市民がこの動き(集団的自衛権の行使容認に向けた解釈改憲の閣議決定の動き)に危機意識を抱き、反対の声をあげてきた。報道機関が実施した世論調査でも、様々な意見が出されていた。次代を担う若者は、この動きをどう見ているのか」というのが、調査の狙いだったという。
調査方法は日青協のウエブサイトにアンケート特設ページを設け、ウエブサイトやSNSを通じて回答を呼びかけ、それを集約した。
回答を寄せた人は624人(男性416、女性208)。年代別では30代前半129人、30代後半104人、10代後半89人、20代後半65人、40代前半62人、20代前半44人、40代後半43人、その他88人)。
アンケート項目は2つ。
まず「集団的自衛権の行使容認について」。回答結果は「反対」62.5%、「賛成」19.4%、「どちらとも言えない」16.0%、「難しくてわからない」2.0%。
回答に添えられた意見を拾うと――
[反対]
○チカラを力でねじ伏せることが解決だと思えない。(鳥取県・20代女性)
○自国を守るのは当然としても、同盟国の援護をするのは、単なる戦争の助長でしかない。(福井県・20代男性)
○攻撃されたので攻撃し返す。また攻撃され、攻撃し返す。どこかでやめないと誰もいなくなってしまう。理想論かもしれませんが、殺し合いなどしなくて済むよう、話し合いで解決できるよう、私たちは日々学んでいるのではないかと思うからです。(福島県・40代女性)
○確かに北朝鮮や、中国、韓国など、他国も緊迫した情勢が続いていますが、集団的自衛権では、何も解決にはならないと思います。むしろ、今より悪い状況になることが想像できます。現在の利益ばかり追い求めすぎているように感じます。自分の子ども世代が、戦争に行くようなことがないよう祈ります。絶対反対です。(兵庫県・30代女性)
[賛成]
○国際社会で外交力を行使していくためには必要だと思います。(高知県・20代男性)
○他の先進国の防衛のありかたの方が私は当たり前と考えます。(滋賀県・40代女性)
○中国やロシアを放置しておくわけにはいかない。世界の平和を守るためにも、必要なことである。(岡山県・20代女性)
第2のアンケート項目は「憲法解釈の変更について」。回答結果は「反対」67.3%、「賛成」13.0%、「どちらとも言えない」15.2%、「難しくてわからない」6.5%。
回答に添えられた意見を拾うと――
[反対]
○時の政府が勝手に憲法を解釈することは許されない。憲法が無きに等しく、これは独裁者がすることだ。(岐阜県・40代男性)
○憲法の意味がない。改正するには国民投票が必要なのに、解釈で解決されたら国民の意見が反映されない。(京都府・10代女性)
○憲法の解釈で自衛隊ができ、今や集団的自衛権の解釈にまで至っている。簡単に変えていいものではない。(島根県・40代男性)
○そもそも憲法第99条に「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」とあり、憲法範囲を超える解釈の変更は正式な憲法改正手続きを経なければ立憲主義を否定することになるからだ。(東京都・40代男性)
○憲法の本質って、政権をも縛ることでしょう。(北海道・20代女性)
○変える必要はない。世界に先駆けて非武装宣言をしていることにもっと胸をはるべきだ。世界にも非武装を呼びかけるべき。(滋賀県・30代男性)
[賛成]
○日本人が無傷で他国の人が血を流せばいいなんて間違っている。(静岡県・20代男性)
○国民がオッケーなら良いと思う。(沖縄県・30代男性)
○時代に応じて社会情勢に応じて、日本にとって国民にとって絶対的にその変更が必要ならば、国民がちゃんとわかるように理解できるように説明がしっかりなされるならば、良いのでは。(香川県・30代男性)
○時代が変われば解釈だって変わらなければ、いずれ形式だけの形骸化した憲法しか 残らなくなると思うから。(愛知県・10代男性)
○政府には国の大事なことを決定する権利があるから。(滋賀県・30代女性)
集団的自衛権行使容認と憲法解釈の変更。どちらも、なんと若者の60%以上が「反対」なのだ。
このアンケート調査結果を見て、私は6月29日付の毎日新聞朝刊の記事を思い出した。それは、同社が、安倍政権が集団的自衛権行使容認のための憲法解釈の変更を閣議決定する直前の6月27、28両日に行った、集団的自衛権行使に関する全国世論調査の結果を伝えた記事で、集団的自衛権行使容認「反対」は58%、「賛成」は32%だった。ほぼ同じ時期に日青協が行った若者対象のアンケート調査では、集団的自衛権行使反対は62.5%。2つの調査はやり方やサンプル数が違うので、単純に比較することはできないが、日青協のアンケート調査結果は、集団的自衛権問題に対する若者の意識を知る上で、1つの貴重な判断材料にはなるのではないか、と私は思う。
ところで、安倍内閣は、7月1日の臨時閣議で、集団的自衛権の行使を認めるために憲法解釈を変える閣議決定をした。その後、若者たちの間にある集団的自衛権行使容認反対・憲法解釈の変更反対は一層強まっているのではないかと私は推定する。一般国民の間でも、そうした傾向が散見されるからである。
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