川内原発審査>驚くべき実情!火山影響評価<政府交渉報告
- 2014年 7月 31日
- 評論・紹介・意見
- 小川
7月29日、川内原発の火山影響評価について、院内集会と交渉がもたれました。
阪上さんの報告(長文ですが)を転送します。
オウム返しに形式審査のみで九電の申請を認めるという驚くべき実態です。
また以下でTV解説もあります(約1時間)
http://www.ustream.tv/recorded/50679689
川内原発審査>驚くべき実情!火山影響評価<政府交渉報告
みなさまへ
昨日行われた川内原発の火山審査についての政府交渉のご報告です。
やりとりは記憶によるものですので、誤認があればお知らせください。
規制庁は
渡邊桂一氏(安全規制管理官(地震・津波安全対策担当)付管理官補佐)、中
桐裕子氏(安全規制管理官(PWR担当)付管理官補佐)、野田智樹氏(技術
基盤課原子力安全専門職)、川口司氏(長官官房技術基盤課課長補佐)の4名
市民側は約70名
鹿児島から北畠さん、関西から小山さん、島田さん、アイリーンさんが参加さ
れました。新潟から武本さんも。また、交渉には終始福島みずほ議員が参加さ
れました。
交渉で一番驚いたのが、火山影響評価ガイドで策定が要求されている「火山活
動の兆候把握時の対処方針」について、九州電力の補正申請には、方針の具体
的な内容が記載されておらず、審査書案にも「火山活動の兆候を把握した場合
の対処方針を示していることなどから、火山ガイドを踏まえていることを確認
した」と書くだけですませているところ、その中身を聞くと、方針が示されて
いればよいとの形式論を繰り返すだけで、方針の中身についても、それについ
てどのような議論をしたのか、その妥当性について何を根拠にどのように判断
したのかについて、何も答えられなかったことです。
火山影響評価ガイドは「火山活動のモニタリングと火山活動の兆候把握時の対
応を適切に行うこと」を要求しており、火山活動の兆候を把握した場合の対処
とは以下の3つだと規定しています。
(1)対処を講じるために把握すべき火山活動の兆候と、その兆候を把握した場
合に対処を講じるための判断基準
(2)火山活動のモニタリングにより把握された兆候に基づき実施する方針
(3)火山活動の兆候を把握した場合の対処として、原子炉の停止、適切な核燃
料の搬出等が実施される方針
これに対し、九州電力の補正申請は
「対象火山の状態に顕著な変化が生じた場合は、第三者(火山専門家等)の助言
を得た上で破局的噴火への発展性を評価し、破局的噴火への発展の可能性がある
場合は、発電用原子炉の停止、適切な燃料体等の搬出等を実施する」とあるだけ
です。むりやり上記と対応させても
(1)対処を講じるために把握すべき火山活動の兆候(→「対象火山の状態に顕
著な変化が生じた場合」ということ?言葉を言い換えただけ!)と、その兆候を
把握した場合に対処を講じるための判断基準(→見当たらない)
(2)火山活動のモニタリングにより把握された兆候に基づき実施する方針(→
「第三者(火山専門家等)の助言を得た上で破局的噴火への発展性を評価し」)
(3)火山活動の兆候を把握した場合の対処として、原子炉の停止、適切な核燃
料の搬出等が実施される方針(→「破局的噴火への発展の可能性がある場合は、
発電用原子炉の停止、適切な燃料体等の搬出等を実施する」ただのオウム返し)
という具合で、中身がなく、オウムのように繰り返しているだけです。
これに対して、審査書は「火山活動の兆候を把握した場合の対処方針を示してい
ることなどから、火山ガイドを踏まえていることを確認した」と書くだけでパス
させているのです。
このような中身のない記載は重大事故対策などでも多々みられます。それはそれ
で問題ですが、それでも先日の交渉では、担当者に聞けば、審査の過程で、何が
問題になり、どういう理屈で判断したのか、それなりに答えがありました。
しかし、この火山活動の兆候把握時の対処については、何を聞いても何も出て来
ないのです。やりとりをおおよそ再現すると以下のようです。
Q:原発の運用期間とは何年か
A:原発に核燃料が存在する期間とガイドにも規定されている
Q:それを何年と想定しているのか
A:年数ではない
Q:年数を想定しないと噴火の可能性について判断できないではないか
A:原発に核燃料が存在する期間だ
Q:田中委員長は30年と説明しているがこれは運転期間と間違えているのでは
A:そうかもしれない
Q:運用期間はもっと長くなりますよね。いったい何年ですか
A:数十年かもしれない
Q:最大何年だと想定しないと審査ができないはずだ
Q:兆候把握時の対処にある核燃料の搬出は何年くらいかかる想定か
A:サイトにもよるしそのときの状況にもよるので一概に決められない
Q:川内の場合、何年と想定して対処方針を決めたのか。これを想定し
なければ、核燃料の搬出が本当にできるのかわからない、兆候の把握の
仕方にも関わってきますよね
A:核燃料を搬出するとの方針を確認した
Q:その方針が妥当であるかどうかを判断しなければならないのでは
A:審査は方針を確認するだけだ
Q:対処しますと言えばオッケーなのか。審査の意味がない
A:事業者は核燃料の搬出の方針を示して、我々はそれを確認した
Q:火山ガイドには「対処を適切に行うこと」とある。適切かどうか
を判断するには、核燃料の年数など中身を聞かないとできないはずだ
A:火山ガイドの解釈が違う。方針を確認するだけだ。
巨大噴火については、噴火の時期と規模を予測することは困難だと政
府答弁書も認めています。その場合に、核燃料の搬出という何年も何
十年もかかる対処が本当に可能なのか。具体的な方策も根拠もなしに
ただ再稼働を急いで形式的に進めていることが、この火山問題では特
に顕著に表れているということだと思います。
交渉はその後、火山学者が審査の過程でまったく無視されていること
についてやり取りがあり、火山学者を集めた会合を、審査の前に実施
することを強く求めました。
こんな状況で安全確保などできません。審査書案の中身もそうですが、
審査の在り方そのものが問題であることが明らかになったと思います。
以下FFTVで解説しています。
http://www.ustream.tv/recorded/50679689
原子力規制を監視する市民の会 阪上 武
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion4935 :140731〕
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