日独比較の陥穽
- 2014年 8月 22日
- 交流の広場
- 熊王信之
ブルマン!だよね氏は、時折、ちきゅう座にお立ち寄りになられて、辛辣な警句や時代の波を冷静に見つめた洞察を披歴されておられます。 今回も、なかなか面白く拝見いたしました。 「何に自分の限られた時間を使うかは、各人それぞれの機会費用ですので、まっ好き好きですが。」とは云い得て妙と肝に銘じたいと思います。 私もそうした滋味掬すべき寸言の一つも投稿してみたいものと思っております
面白くもおかしくもありませんが・・・ ちきゅう座 ブルマン!だよね 2014年 8月 22日
さて、最近、何度か見聞きしましたことですが、日本の戦後処理に関わって、またもやドイツと比較する傾向が見受けられ、ふと疑問を感じたことがあります。 その中で、朴槿恵韓国大統領が訪独された際に、日独比較論を述べられた折のメルケルドイツ首相の反応が興味深く印象に残っています。 一部ドイツ側の言明にあったように日独では、戦前・戦後の歴史的経過、戦後処理を巡る政治的環境、更には、冷戦下で政治体制の相違した同民族と事実上の国境を接する過酷な現実との対処、等々で大きく状況が相違した事実を考えなければならないと思われるからです。
更に、ドイツの戦後処理経過を賞賛される論者に共通しているのは、負の側面を等閑視されるように思われることがあります。
例えば、冷戦後のドイツは、NATOの中核国として米国が唱導する「対テロ戦」に参画して実際に武力を行使して自国軍派遣対象国国民を殺戮し、自国軍からも戦死者を出している事実があります。 日本と日本人が、頑強に他国での自衛隊に依る武力行使を阻んできたことから考えると、こと平和に関しては、隔絶した差が存在します。
Bundeswehr Trauerfeier f. 4 Soldaten getötet in Afghanistan / Funeral for 4 German Soldiers (アフガニスタンでのドイツ連邦軍戦死者の葬儀です。 日本でも観られるようになるのでしょうか。)
そもそも、ドイツは、こと国防に関しては戦前と同等に国防軍を擁していて最近まで徴兵制を取っていたのです。 これは、旧ワルシャワ条約機構諸国と向き合っていた事実から必然的なことであったのでしょうが、現在も、ドイツ国内の米軍基地が占める比重が大きいことから、NATO諸国以外を仮想敵国と見做していると断じざるを得ません。 即ち、ドイツには米軍の欧州軍とアフリカ軍という二つの地域統合軍の司令部が存在し、ドイツから他国へ「対テロ戦」を仕掛けているのです。 世界でこれほどの米軍が駐留している国は他にありません。
この国の本質を観るには、東西ドイツ統一前の「基本法」を観るのが良いでしょう。 基本法では、戦う民主主義を採用していた(現憲法も同じ)ことは、以前に触れましたが、その本質は、「反共」です。 勿論、ナチスの犯罪を断罪しこれと同等のネオ・ナチスを取り締まることも忘れてはいませんが、左翼の取り締まりとは温度差があるように見受けられるのは私だけの感想でしょうか。 ナチを違法とはするものの、その本質であった「反共」は確りと継承していると言えば皮肉に聞こえましょうか。 圧倒的な米軍駐屯地と化した国が反共の砦として東側に対した(している)ことは確かです。
ナチスの犯した犯罪を償うための保障に関して言えば、イスラエルが中東におけるアラブの民を虐げる戦費に充てている事実は皮肉なことです。 この事実から、イランとネオ・ナチスの交流がマスコミに流れたことがありましたが、「敵の敵は友」との古の格言が今も生きて居る、のでしょうか。
因みにナチス時代の軍装品や勲章等は、今でも収集家に人気があり、実物は高価で取引されていますし、模造品が多く流通しています。 制服類は、ナチス時代に製造していた会社が再生産した本物と同等のものが売買されています。 ネオ・ナチスが身につけるものとは限りませんが、その必要もあるのでしょうか。 私も、映画の影響で、ドイツ海軍Uボート乗員用革コートをドイツのメイカーから買いました。 当時の革コートから再現したものでボタンも複製で、発売までに数年かかったそうです。
(本稿とは関係ありませんが、ドイツへ旅行される方で女性が注意されるべきことは、ドイツでは、売春が合法であり、赤線地帯が存在することです。 不届きな男性は、それが目当てでドイツへ行かれる人もいるそうで、私の知人は、彼の地のその場所で知り合いに会ったそうです。 知人の話は余りに卑猥で、交遊はそれ切りになりましたが。 しかし、この事実は、売春まで国家管理下に置く、と云うナチス並みの発想で、女性の人権を売春従事者のみ例外扱いするものです。 人権獲得の歴史から観れば異端です。 私のみの意見でしょうか。)
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