米国のベテラン諜報専門家達が、オバマ大統領に「ウクライナの証拠を公開せよ」と要求
- 2014年 8月 25日
- 時代をみる
- グローガー理恵
これは、日本では報道されていない情報だと推察します。
7月29日、アメリカのベテラン諜報専門家達が、「ウクライナ上空で起こったマレーシア旅客機撃墜事件について、オバマ政権が分離派を撃墜事件の責任者として責めているが、その確実な証拠がまだ公開されていないではないか。オバマ大政権が明確な証拠を握っているのなら、それを公開すべきである」と要求し、オバマ大統領に宛てて、公開文書を提出しました。文書は、かつて米国の情報機関に任務していたベテラン諜報専門家達が「ウクライナ危機」をどう見つめているのか、またそれについて彼らが実際にどのような懸念を抱いているのか、などについて言及しています。大変に興味深い内容の文書だと思いましたので、それを和訳して、ご紹介させて戴きます。
なお、文書の和訳文の中で「*」のマークが付いた箇所は、一番最後に訳注が付いているということです。後に、訂正や変更をすることもありますので、その旨どうぞご了承下さい。
公開文書が掲載されていましたインタネット・メディア「Consortiumnews」の記事(英文)へのリンクです。:http://consortiumnews.com/2014/07/29/obama-should-release-ukraine-evidence/
Consortiumnews.comから: オバマはウクライナの証拠を公開すべきである
(日本語訳:グローガー理恵)
ウクライナ上空で起こったマレーシア航空機17便の撃墜事故が、現地の内戦を米国とロシアとの対立へと変じていっている状況の中、米国諜報機関のベテラン達がオバマ大統領に、この惨事に関する何らかの証拠を大統領が持っているのなら、それを公開して誇張表現を静めるようにと要請している。
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2014年7月29日
大統領に宛てた覚書
覚書作成者:ベテラン・インテリジェンス・プロフェッショナルズ・フォー・サニティー*(Veteran Intelligence Professionals for Sanity -VIPS)
マレーシア航空機撃墜に関する情報について
エグゼクティヴ・サマリー
ウクライナを巡り、米国とロシア間の緊張が危険な状態で高まっていっており、我々は、閣下のアドバイザー達が、事態のエスカレーションの危険性を充分に認識しているのか全く確かではありません。
マレーシア航空機17便の撃墜から12日後、オバマ政権は、この事件の責任は誰にあるのかを決定するために、どのような証拠が存在するのかを要約するコーディネートされたインテリジェンス・アセスメントを未だに出していません。ー いわんや、閣下の政権は、マレーシア航空機はロシアによって供給されたミサイルでウクライナの分離派によって撃墜されたのであるとの度々の主張を、疑う余地なく、支持しています。
閣下の政権は、分離派が、そのような兵器類を所有していることを示すような衛星画像を提供することはありませんでしたし、他にも幾つかの「これまでに言及されなかった問題点」があります。オバマ政権の主張の背後に、もっと明白な証拠を閣下が提示したがらないーもしくは提示できないーのだとしたら、ワシントン、そして閣下自身の信憑性は失われ続けていくことになるでしょう。以下は、米国情報機関の様々な部門における任務期間の合計累積年数が260年になる、元インテリジェンス・オフィサー達による見解を表明したものです。
我々、下記署名した元インテリジェンス・オフィサーは、7月17日のマレーシア航空旅客機17便撃墜事件の責任はロシアにあるとして、これまでに提出された証拠に関して我々が抱いている懸念を閣下にお伝えしたいと思っております。我々は政府任務から退役しており、我々の中で、CNNやフォックス・ニュースまたは他の地方局に雇われている者はおりません。我々は、この覚書によって新鮮で異なった観点を提供するようにしたいと意図しております。
我々はベテランの情報アナリストとして、非常事態状況の場合を除いて、判断へと急ぐ前に確定的な情報を待つ、ということには慣れていますが、ロシアに対する告発は、事実に基づいた、もっと明らかに疑う余地のない証拠に根ざされるべきであると考えています。そして、このことは紛れもなく、旅客機撃墜のような激昂的な事件に関して当て嵌まるものです。また、我々は、曖昧で浅薄な証拠が出された素人臭いやり方に困惑しています。ーこれらの幾つかは「ソーシャル・メディア」を通して為されていることです。
諜報専門家として我々は、不完全な情報資料がプロらしくない使われ方をされているということに当惑しています。我々がアメリカ人として願うことは、閣下が、より確定的な証拠を実際に握っているのでしたら、これ以上の遅延なく、その証拠を公表する活路を開いていくということです。この撃墜事件の直接的または間接的責任がロシアにあると告発することに関して、特にはっきりとした態度をとってきたのは、ジョーン・ケリー国務長官です。しかし、証拠は明確ではないのです。彼の声明は、時期尚早のようであり、「陪審員候補者団を毒そうとする(だめにしようとする)」試みのような特質を含んでいます。
ロシアを悪し様に言う
プロパガンダ促進のために惨事を利用することよりも、真実そのものに関心を抱く者たちは、以前のアメリカ合衆国の「パブリック・ディプロマシー」の営為から価値ある教訓を学ぶことができます。我々は、この以前のアメリカ合衆国の「パブリック・ディプロマシー」の営為に、ある不気味な類似性を見ているのです。我々が言及しているのは、1983年8月30日、シベリア上空で起こった大韓航空機007便撃墜事件の直後におけるレーガン政権の振る舞いについてです。我々は、この惨事について簡単なサマリーの概略を下記します。何故なら、閣下は未だ、この惨事に関して必要な情報を充分に与えられていないであろうと考えるからです。その類似点は、貴方にとって明白となるでしょう。
我々がインテリジェンス・オフィサーとして長期在任したことの有利な点は、我々が身をもって、目撃したことを覚えていることです; 我々がアナリストとしてや他の役割を果たしたキーイヴェントを忘れるようなことは、めったにありません。別の言い方をするなら、我々のほとんどが、30年以上前の1983年8月 30日、シベリア上空で大韓航空機007便が撃墜された時、「自分達がどこにいたのか、正確に覚えている」ということです。当時、我々情報局員は「現役」にありました。閣下は21歳でした。; 今日貴方を囲んでいる多くの人達は、未だもっと若かったのです。
したがって、閣下は、KAL007事件というものが、どのように捉えられていったのか、言わば、初めて、知ることになるのかもしれません。; マレーシア航空17便の撃墜事件が、如何に扱われるのかに関しては、米国・ロシア関係にとって深刻な影響があることに、閣下は、今、気づかれるかもしれません; そして、閣下は、モスクワとの繋がりが、完全破損された状態になってしまうのを防ぐことに、価値を見いだすことになるでしょう。我々の見解は、米国・ロシア関係の断絶という由々しいリスクを避けることの方が、他の如何なる考慮すべき問題よりも遥に重大であるということです**。
1983年8月 30日の悲惨な撃墜事件の数時間後、レーガン政権は、KAL007便の乗客269人全員が殺されたのはソビエトの責任であると、利用可能な情報を歪曲するために、レーガン政権の非常に熟練されたプロパガンダ・マシーンを使いました。旅客機は航路から何百マイルも逸脱し、国家機密に関わる軍事施設のあるカムチャッカやサハリン島の上空、ロシア領空を侵犯した後に撃墜されたのでした。ソビエトのパイロットが旅客機に着陸するようにと合図することを試みたのですが、KALのパイロットはソビエトパイロットからの度々の警告に応答しませんでした。ソビエトの地上管制は、飛行機の正体について混乱している真っ最中にーその数時間前には米国のスパイ機が付近を飛んでいたことがありーパイロットに発射するようにと命令したのでした。
間もなく、ソビエト政府は自分たちが恐ろしい過ちを犯してしまったことに気づきました。米国インテリジェンスも機密的インターセプト(傍受)から、惨事は過ちに起因したものであり、故意の殺人行為に起因するものではないことを知っていたのです。
《1988年 7月3日、アメリカ海軍ヴィンセンス・ミサイル巡洋艦が、ペルシャ湾上空を飛んでいたイラン航空の民間機を撃墜し、290人の乗客を殺した行為を、ロナルド・レーガン大統領は、そっけなく、「無理もない事故」と弁明しました。》
モスクワにとって最も不名誉な事件とするために、レーガン政権は、米国の電子インターセプトから出た無罪弁明の証拠を隠蔽しました。「モスクワによる故意の民間機撃墜」が、ワシントンのスローガンとなりました。ニュースウィーク(Newsweek)は、「空中での殺害」とのヘッドラインで飾られた報道を行いました。
《どうやら、あれから余り変わっていないようです; 今週のタイム(Time)は、「冷戦II」と「プーチンの危険なゲーム」を特集として報道しています。サイモン・シャスターによるカバーストーリー、「ロシアにて、罰のない犯罪」は、ウィリアム・ランドルフ・ハーストのコース「イエロー・ジャーナリズム101(Yellow Journalism 101)***」では、「A+」に値することでしょう。》
KAL007が撃墜された時、米国情報機関のテレビ・映画部門のディレクターであったアルヴィン・A・スナイダーは、「できる限り多く悪口をソ連に浴びせる」との一致協力の取り組みに参加させられたと、1995年に出版された彼の著書「Warriors of Disinfomation-(仮訳:偽情報の戦士たち)」に書いています。
彼と彼の仲間も、また、「メインストリーム・メディア」を召し連れたことで(イエロー・ジャーナリズム101***で)A+を獲得しました。例えば、ABCのテッド・コッペルは、「何がアメリカ政府のプロパガンダ組織によって大量生産されていったのか、それとも、コマーシャル放送ネットワークによって大量生産されていったのか、ほとんど区別がないような時だった」と、愛国的な誇りを持って特に言及しています。
政策を中心に情報を「整える」
「我々は、ソ連が冷酷無残にも残忍な行為をなし遂げたという見方を伝えたかったのである」と、スナイダーは書き、1983年9月6日、レーガン政権が、国連安全保障委員会に、不正に変更されたインターセプトの複写を提出するまでに至ったことを、さらに書いています。
10年後になって初めて、スナイダーが全部揃ったインターセプトの複写を確かめた時 ーレーガン政権が隠蔽していた部分も含めてー彼は、国連安全保障委員会に提出された米国のプレゼンテーションの中で、どれだけの主要的要素が虚偽であったのかということを完全に認識したのでした。
インターセプトは、ソビエトの戦闘機パイロットが米国のスパイ航空機を追跡しているものと信じていたこと、そして、暗闇の中で航空機の正体を見分けることが困難であったことを明らかにしていました。グランド・コントロールからの命令で、パイロットはKAL旅客機のまわりを旋回し、戦闘機の翼を傾けて、旅客機に着陸をするようにと指令しました。また、パイロットは、警告射撃も発砲したと述べています。この情報は、「我々に提供されたテープにはなかった」とスナイダーは記述しています。
スナイダーにとって、レーガン政権が、ソビエト政府を中傷するために、虚偽の告発を国連へ、またアメリカの人民ばかりでなく、世界へも公開していたことが、明々白々となったのでした。スナイダーは彼の著書の中で、この欺き行為に加担した自分の役割を認めていますが、シニカルな結論を出しています。彼は、こう書いています: 「このストーリーの教訓は、いかなる政府も、我々の政府も含めて、自分達の目的/意図に合う時には、虚言をするということである。秘訣は、一番最初に虚言をするということなのだ。」
信憑性が問われるジョーン・ケリーの羨むには程遠いような、これまでの言動と並んで、 閣下の政権とメディアのステノグラファーによるマレーシア航空17便の撃墜事件の責任はロシアにあるのだとの、こじつけの企ては、我々を、スナイダーが描写するシンドロームが、閣下ご自身の政権においても働いているのだとの結論へと、残念ながら、導くことになります。; すなわち、「まず一番最初に汝自身の嘘を言うのだ」とのエートスが、「汝らは真実を知るであろう」を置き換えることになってしまったわけです。最低限、我々は、一番最初に出走ゲートを出ようとの決断で不穏当な性急さを示したのは、ケリー国務長官だと思っています。
双方が真実を語っていることはあり得ない
我々は、いつも、早合点して行動するのではなく、証拠に基づいた情報分析をしていることを誇りに思ってきました。今日までに公開された証拠は綿密な精査に耐えていません。; (公開された証拠は)17便の撃墜に関して、どっち方が嘘をついているのか、との判断を可能にさせるようなものではありません。我々のプロとしての全体的体験からすると、ロシア側を疑いたい気持ちにさせられます。ーほとんど直感的にです。もう少し最近になってからの我々の体験、ーとりわけケリー国務長官が、もっともらしい上辺だけの報告を次々に「証拠」として執着していく無分別さを観察することがー、我々の以前の特定な方法で解釈する傾向をバランスさせるのに大いに役に立っています。
ケリーが、『「証拠」と思われているものは、確かめることができるのだ』と口に出す度に、そのことが、東ウクライナで配られた、でっちあげの反ユダヤ主義のビラや、ウクライナに潜入したと伝えられている疑わしいロシア特殊部隊の写真のように思われるのです。『「証拠」は「フッ」と、突然消えたり現れたりするもの』と、かつてケリーは、異なったコンテクストの中で言っていました。しかし、これらの誤報はまだ、2013年8月30日にケリーが、『「我々は」、9日前のダマスカス周辺で起こった化学兵器使用事件は、バッシャール・アル=アサド政府に責任があるということを「知っている」』と、35回も断言したような途方もない虚誕(whopper)に比べると、小さな微罪のように思われます。
2013年9月3日、ー議会の承認を待つためにシリア攻撃を取りやめると閣下が決断した後、ケリーは未だ、(ケリーの主張に対して)全く共感的な上院外交委員会の前で 、シリア攻撃を強く要求する証言をしていました。その翌日、ケリーは、プーチン大統領からの異例な個人的批難を誘発しました。プーチン大統領は、「彼は嘘を言っている。そして彼自身、自分が嘘を言っているのを知っている」と述べたのでした。
同様に容易ならないことは、2013年9月の第一週の間、閣下とウラジーミル・プーチン大統領が、シリアの化学兵器を破壊し放棄させる取引の最後の仕上げをしていた時に、ジョーン・ケリーが言ったことです。このケリーの言葉は、我々にとって、今日に至るまで不可解なものとなっています。2013年9月9日、ケリーはロンドンに居ましたが、彼は、そこで、『シリアの化学兵器使用は、オバマ大統領が設けた「レッドライン( 越えてはならない線)」を越えたのであるから』と言って、まだ米国のシリア攻撃を売り込んでいたのです。
ある正式記者会見において、ケリーは、バッシャール・アル=アサドが、いつかは化学兵器をあきらめるであろうとの可能性を唐突にも払い除け、「彼は、そんなことをするつもりなんてない。不可能なことだ」と述べました。その、たったの数時間後に、ロシアとシリアは、ケリーが不可能であると退けたこと(アサドが化学兵器を放棄すること)を、その通りに実行するとシリアが合意したと発表したのでした。閣下は、その合意書に署名するために、ケリーをジュネーヴに派遣しました。そして、9月14日、この合意が正式に決定されました。
7月17日のマレーシア旅客機の撃墜に関して、我々は、ケリーが例によって判断へと急いだと考ています。そして、信憑性を問われるような彼の言動が、ロシアに対する外交的およびプロパガンダ操作において大きな不利点を呈示していると思うのです。我々は、閣下がこの無価値な「パブリック・ディプロマシー」攻撃態勢に対して停止を命じることを提案します。しかし、閣下が何れにしても、それを押し進めていくと決めるのでしたら、我々は、閣下が、もっと信憑性の損なわれていない政治家か女性を見つけることを試むようにと提案します。
二つの内のひとつの選択
これまで公開された曖昧で断片的な情報から判断すると、見たところどうも説得力がないように思えるように、もし、撃墜事件に関する情報が同様に説得力のないものなのでしたら、我々は、閣下が、この宣伝戦から手を引き、撃墜事件の調査を引き受けている人達の調査結果を待つようにと強く提案します。しかし、もし、一方で、閣下の政権がもっと明確な立証力のある情報を持っているのだとしたら、我々は、それが、たとえ「情報源および情報入手法」を傷つける何らかのリスクがあるのかも知れないとしても、閣下が、その公開を承認することを考慮して下さることを強く提案します。
過去において、大統領が、所謂「人類の様々な意見にきちんとした敬意をはらうこと」や軍事行動を正当化することを明らかにするために、機密を抛つ必要性を認識した危急の時がありました。
CIAのシニア・ベテランとしてミルトン・ベアデンは、『「情報源および情報入手法」を公開するよりも、それを守ることによって、米国家の安全にもっと害がもたらされる時がある』と述べました。例えば、ベアデンは、ロナルド・レーガンが、1986年4月5日に、西ベルリンのラ・ベレ・ディスコで起こった爆弾事件に対する報復として、米国がリビアを攻撃した動機を懐疑的であった世界に明らかにしようと、国家機密に関わる情報源を公開したことに、言及しています。爆弾爆発は2人の米軍人とトルコ人の女性一人の命を奪い、79人の米軍人を含めた200人が負傷しました。
トリポリとヨーロッパ在のスパイ間のメッセージ傍受で、爆弾事件の背後にはリビアがあったことが明らかになりました。これが、傍受されたメッセージの抜粋一部です。: 「朝1時30分、行為のひとつが、何の痕跡も残すことなく、首尾よく為し遂げられた。」
爆弾事件の10日後、米国は60機以上の戦闘機を送り出し、リビアの首都トリポリとベンガジ都市を攻撃して、報復しました。この軍事行動は、ムアンマル・カッザーフィー大佐を殺すための企てとして、広くは見られましたが、カッザーフィーは生き残り、彼の15ヶ月になる養女は、少なくとも15人の一般市民と共に、爆撃で殺されました。
30年前、子供を殺すということには、もっと大きな恥辱が伴ったものです。米国の爆撃の後、世界からの嫌悪が増していったとき、レーガン政権は、傍受され解読されたメッセージを提示しました。メッセージは、東ベルリンの「リビアン・ピープルズ・ビュロー」によって送信されたもので、ディスコ攻撃の成功を認め、そこには、皮肉にも、「何の痕跡も残さなかった」との誤りの豪語が付け加えられてあったのです。
レーガン政権は、米国がリビアのコミュニケーションを傍受し解読できる能力を持っているという国家機密に関わる重大な情報源を抛つとの判断を下したのでした。しかし、いったん世界が、この証拠を受け入れると、世界から発せられたリビア爆撃に対する不平の唸りは治まり、多くはトリポリに対する報復は正当化されるものであると見なすようになりました。
もし閣下が犯罪の証拠を握っているのなら…
もし、米国が、マレーシア航空17便の撃墜の責任に関して、これまでに提出された証拠よりも、もっと納得のいく証拠を握っているのでしたら、我々は、その情報を公表するための手段を見出すことが一番であると考えます。ーたとえ、それが米国の「情報源および情報入手法」を危険にさらすようなリスクがあってもです。さらに、我々は、閣下がTwitterやFacebookのようなソーシャルメディアを通じて重要な情報を公表することで、アメリカの信用度を下げるようなことをしないようにと、貴方の部下達に指示することを提案いたします。
「パブリック・ディプロマシー」の領域において、メッセンジャーの信憑性に関しての評判は重要なことです。今、閣下にとって明らかなように、このことに関して、ケリー長官は有利な存在であるというよりも不利な存在であるというのが、我々の見解です。同様に、アメリカ合衆国国家情報長官、ジェームズ・クラッパーに関してです。: クラッパーは、『2013年3月12日に、宣誓の下で行った彼の議会証言が、アメリカ国家安全保障局(NSA)の情報収集に関しては、「明らかに誤った」ものだった』と、自分自身で、後になって認めましたが、彼には、国家情報長官としての資格がないと判定されるべきです。彼は、マレーシア旅客機17便事件からは距離をおいた遠く離れたポストに留めておくべきです。
もし閣下が、犯罪の証拠を握っているのでしたら、必要なのは、「政府機関間における情報の評価」です。ーこれは、過去に使われた方法で、情報を系統的に関連付けて配列し検討することです。我々は、以前の同僚の何人かから間接的に、ケリー長官が売り歩きばら撒いていることは、実際の情報とは適合していないと聞いています。去年の8月、ケリーがユニークな売り込み手段を考案し、それを「政府による(情報機関によるのではなく)評価」と名付け、立証できる証拠もないのに、ダマスカス付近で起こった化学兵器攻撃の責任は、バッシャール・アル=アサドにあるとシリア政府を批難した時に、正直な情報アナリスト達は、それに同調することを拒み、不当性を無視しようと試みました。
我々は、閣下が今、信用できる情報アナリストを捜し出して、彼らの話を最後まで聴く必要があると考えます。そうすれば、閣下は、ロシアとの関係が「冷戦 」から武力衝突へとエスカレートするリスクを阻止するための対策を施すことに、納得させられるかもしれません。全く率直に言って、我々は、ケリー長官と、その他の閣下のアドバイザーが、この危機が途方もなく大きいことを的確に認識しているとは思えません。
大統領閣下、我々は、貴方に宛てた我々の最近の覚書(5月4日付)の中で、「もし、アメリカ合衆国が、東西ウクライナ間の惨たらしい内戦を止め、東ウクライナにおけるロシアの軍事介入を防ぎたいと願うのだとしたら、ウクライナでの暴力の猛威が、全く制御できないほどに急速に進行する以前に、貴方が、そのことを阻止することができるかもしれないのです」と、警告いたしました。7月18日、閣下は、即時の停戦を要求するために、ドイツ、フランス、そしてロシアの首脳に加わりました。もっとも事情によく通じている監視者達は、閣下には、ウクライナのリーダーたちを合意させるだけの力が掌中にあると考えています。キエフが、東ウクライナの分離派に対する攻撃態勢を続行し、それが長引けば長引くほど、米国のそのようなステートメントは、より偽善的に見えます。
5月4日の我々の勧告を繰り返して述べます: 大統領閣下が、ウクライナをNATO(北大西洋条約機構)に加入させるとの所望を公的に否認し、この危機を緩和する方法について話し合うために、遅滞なく速やかに、ロシアのプーチン大統領と直接会見する準備があることを明らかにし、諸派の正当な関心事を認識することです。直ぐ早期に首脳会談を持つとの提案は、ロシアのコントロールされたメディアや独立メディアから驚くほどの反響を得ました。そういったことは、アメリカのメインストリーム・メディアではありませんでした。また、閣下から、ご回答を頂くこともありませんでした。
謹んで、ご回答を請い申し上げます。
作成者: VIPSスティアリング・グループ (VIPS Steering Group)
– ウィリアム・ビニー、元テクニカル・ディレクター、世界地政学&軍事アナリスト、NSA(アメリカ国家安全保障局); 共同創設者、シジント(SIGINT) オートメーション・リサーチセンター (退職)
– ラリー・ジョンソン、CIA (中央情報局) & 国務省 ー退職
– エドワード・ルーミス、NSA (アメリカ国家安全保障局)、暗号解読関係コンピューター科学者 ー退職
– ディヴィッド・マックマイケル、国家情報会議 ー退職
– レイ・マックガヴァン、元米陸軍歩兵隊/インテリジェンス・オフィサー & CIA ( 中央情報局 )アナリストー退職
– エリザベス・ムライ、中近東関係・国家インテリジェンス・オフィサー ー退職
– トッド・E・ピアース、少佐、米陸軍法務官 ー退職
– コリーン・ラウリー、顧問&特別捜査官部門、FBI ( 連邦捜査局 ) ー退職
– ピーター・ヴァン・ビュレン、米国務省、海外勤務職員 ー退職
– アン・ライト、米陸軍大佐、海外勤務職員 ー辞職
以上
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訳注:
*ヴェテラン・インテリジェンス・プロフェッショナルズ・フォー・サニティー(Veteran Intelligence Professionals for Sanity -VIPS ー仮訳: 健全を目指すベテラン諜報専門家たち):米国インテリジェンス・コミュニティーに属する元インテリジェンス・オフィサーから成る小さなグループ。グループは、2003年1月、「米国/英国のイラク侵入」に基づき、誤った情報の使用に抗議するために、「太平洋岸から大西洋岸までのエンタープライズ」として形成された。
** 「我々の見解は、米国・ロシア関係の断絶という由々しいリスクを避けることの方が、他の如何なる考慮すべき問題よりも遥に重大であるということです。」: この文章は、理解しやすくするために、意訳されてあります。
***イエロー・ジャーナリズム 101(Yellow Journalism 101)とは、本格的によく調査されたニュースではなく、より多くの新聞を売ることを目的に人目を引き関心をつかむヘッドラインを用いるタイプのジャーナリズム。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座〉
〔eye27455:140825〕
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