集団的自衛権駆けつけ警護のゴマカシ!
- 2014年 9月 17日
- 評論・紹介・意見
- 小澤俊夫集団的自衛権
メール通信「昔あったづもな」第21号
安倍首相は集団的自衛権行使の必要性を説明したとき、いくつかの実例の中で、NGO活動を自衛隊が守る必要があると強調しました。しかし実際にNGO活動をしている人の、それは紛争現場のリアリティがない議論であるという発言を読みました。説得力のある発言なので、みなさんに紹介したいと思い、ニュースの発行元である「9条連」のご了解を得て、転載いたします。
インタビュー NGOからみた集団的自衛権
駆けつけ警護のゴマカシ!
日本国際ボランティアセンター(JVC)代表理事 谷山博史さん
7月1日に、政府は集団的自衛権容認を閣議決定しましたが、それは「日本人の命が守られれば良い」という錯覚を国民の間につくり、海外での武力行使の制約を取り払おうとしているのだと思います。安倍首相の記者会見で、PKOに派遣された自衛隊が駆けつけ警護でNGOを守るというイラストが示されたときには、当事者として驚きました。「国連平和維持軍として自衛隊がすでに海外に出ているので、国民にも比較的受け入れやすいだろう。PKO5原則で縛られている自衛隊の武力行使がもっとできるように」というのが首相の思惑だと思います。
しかし自衛隊が海外で武力行使することは、現代の戦争の特徴である「住民の戦争」に巻き込まれることで、海外で住民を殺し、日本の若者が殺されることです。しかもそれは日本の判断ではできない。多くの場合は米国の要求に応えて自衛隊の派遣をすることになると危惧します。
私たちは、駆けつけ警護でNGOを守るという理由づけに対し、すぐ提言書を出しました(6項参照)。それは私たちが自衛隊に反対だからではありません。紛争現場のリアリティがない議論は危険だと感じたからです。非軍事に徹してきた日本の平和協力の独自性が失われることへの警笛も鳴らしたかったのです。
イラクで人質として拘束された高遠菜穂子さんは言います。「自衛隊が救出に動いたら、絶対生きて帰れなかった。自分で交渉したから無事に帰ってくることができた」と。そのぐらいの現場では軍隊がいることは危険です。
NGOは自衛隊に守ってもらうことを想定していません。NGOは、自衛隊がいないところで活動していますし、自衛隊がいても自衛隊が活動できないところで活動しています。そのために自分たちで独自の安全対策を行っています。その原則は地元に受け入れられること、そのことによって地元のリアルな情報が得られる環境・条件づくりができるからです。同時に国際的なNGOや国連のネットワークを通して大局的な情報や地元情報のダブルチェックをし、日々危険がないことを確認し、少しでも危険だと思ったら動かない、危険が迫っている時には逃げるという対策をとっています。その上で大事なのは軍隊と一線を画することです。軍隊に守ってもらうのではなく、逆に軍隊と距離をもつことが大事です。
2005年、JVCはアフガニスタンで、診療所を米軍に占拠されました。米軍は、軍事作戦の一環として診療所をあら捜しして情報を集め、射撃訓練をしました。中立の医療機関を軍が使ったことで危険にさらされ、抗議しましたが、米軍の通達は出ても同様のことは繰り返されています。またある時は、人道支援を口実に、米軍が食糧や毛布を置いていきましたが、それは危険です。「お前たちは米軍と関係があるのか」と誤解する住民もいましたのでスタッフはすぐに住民を説得して回りました。非軍事の原則があって、受け入れられてきた日本の国際協力が自衛隊の武力行使で一気に変わります。国際協力の現場においても、日本においても「テロ」のリスクが高まることは免れないでしょう。
小澤付記。「9条連ニュース」を直接読みたい方は、http://9joren.netをご覧ください。
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