見逃せない、朝日の反中感情を煽る小さな記事
- 2010年 11月 24日
- 評論・紹介・意見
- 反中坂井定雄尖閣問題朝日新聞
11月21日朝日新聞朝刊、小さな記事である。だが、小さいからといって決して見逃せない。こんな意図的な表現の記事を載せて、朝日新聞が(一部かもしれないが)いま、なぜ反中感情を煽るのか。短い記事なので末尾の3行を除いて、そのまま紹介しようー“中国監視船「正当」主張 沖縄・尖閣諸島沖の日本の領海近くに、20日午前現れた中国の漁業監視船2隻は、同日午後も尖閣沖で航行を続けた。海上保安庁は領海に侵入しないよう無線で警告を続けている。尖閣沖に現れた2隻は、魚政310と、魚政201。海保によると、2隻は午後6時現在、尖閣諸島・久場島の東約26キロ付近の接続水域を領海線に沿うように反時計回りに周回している。警告に対し「正当な任務にあたっている」と主張しているという。”
海上保安庁の発表だから、毎、読 産経、NHKとも同じような内容だが、ネットでチェックした限りでは、「正当」主張 とわざわざ書いたのは朝日だけで、読売は「『正当な任務』と応答」だった。ただしスポニチは「なめられている...中国漁船また尖閣諸島を航行」という見出しだが、ここでは論外としておこう。
「応答」は事実の記述だが、「主張」は記者あるいは新聞社の判断あるいは意図を含んでおり、まったく違う。見出しと本文の「中国監視船「正当」主張」は、報道する側が、対象が正当ではない、「正当」と主張することが不当だと感じたときに、よく使う表現だ。この場合、わざわざ太字の見出しにしたことにも、非難する意図を感じる。
日本も批准している国際海洋法条約でもそれに基づく日本の「領海及び接続水域に関する法律」(領海法)でも、領海は基線(多くの場合は海岸)から12カイリを領海とし、その外側12カイリ(基線から24カイリ)を接続水域としている。接続水域は公海で、他国の船舶は自由に航行できる。ただし接続水域では「(海洋法条約の定めるところにより)我が国の領域における通関、財政、入出国管理及び衛生に関する法令に違反する行為の防止及び処罰のために必要な措置を執る水域として、接続水域を設ける。」(領海法第4条)と定めている。
中国監視船が接続水域を航行することは、海洋法条約上「正当」であり、それをわざわざ「中国船「正当」主張」と書くのは意図的だ。海上保安庁担当の朝日新聞記者は、国際海洋法条約を読んでないのだろうか。
今回、海上保安庁の巡視船は、領海に侵入しないよう呼びかけたし、中国側は「正当な任務に当たっている」と答えたという。中国側は海洋法条約に従って、領海の外側で接続水域を航行しており、保安庁の巡視船がわざわざ、領海に侵入しないよう警告を続けたのは挑発的な感じがするが、現場の船長らの感情がそうさせたのかもしれない。
もともと、海洋法条約で接続水域を設定し、公海でもその国の法律を執行できる例外規定を定めたのは、密輸はじめ犯罪を犯した、あるいは犯す可能性がるある船舶を追跡する、あるいは領海に入る前に抑えるためだった。今回の中国監視船が「正当な任務に当たっている」とわざわざ答えたのも、条約順守を強調したと思える。
今回の中国監視船の行動は、国内と日本への“デモンストレーション”と見ることもできるし、中国漁船が日本の領海を侵犯したり、魚を取ったりしないように監視していた、あるいはその両方と見ることもできる。海上保安庁の巡視船は中国監視船に「ご苦労さん。貴国の漁船が日本の領海を侵さないよう、監視をおねがいします」と呼びかけた方が、良かったのではないか。
ここで問題にした朝日新聞の記事は「遠のく尖閣の海」を主見出しにした、ルポルタージュ特集の最下段に付けて、写真とともに掲載されている。上記記事を批判をしたが、この特集全体としては、取材がしっかりしていて、興味深く読んだ。特集の最後は石垣島のルポルタージュだが、尖閣問題での反中感情がまだ冷めない中で、よくこれだけの報道をしたな、と感心した。朝日を読んでいない方のために、そのまま紹介しようー
“石垣島は中国領になりかけたこともあった。1880年、明治政府は中国での通商権獲得と引き換えに、石垣を含む八重山、宮古諸島を中国領にすると提案した。日清戦争の日本勝利でこの案は消えたが、地元の郷土史家、大田静男さんはこの案を思うと「『尖閣は固有の領土』と東京で政治家が言うたびに、首をかしげたくなる」という”。(11月22日記)
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〔opinion0223:101124〕
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