本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(66)
- 2014年 10月 2日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
ECBの金融緩和
9月4日に、「ECB(欧州中央銀行)の追加金融緩和」が発表されたが、実際の内容としては、実に「空虚」なものであり、ほとんど「実質的な効果」を生み出さないものと考えている。具体的には、「政策金利を0.1%下げて、0.05%にした」というものであり、また、「民間金融機関が保有するABS(資産担保証券)を買い付ける」という内容だったのだが、実際には、「金融緩和の態度」は見せたものの、「打つ手が限られてきた」という事実を証明する発表だったようにも思われるのである。
つまり、「ECB」にとっては、「日銀」が実施している「当座預金を増やして、国債を買い付ける」という方法は、実質的に不可能な状態だと考えているが、この根拠としては、「民間銀行が、中央銀行に預ける超過準備預金」に対して、「名目上のマイナス金利」を付けているからである。別の言葉では、「民間銀行が、中央銀行に預金をすると、元本が目減りする状態」になっているために、「このような預金を実施する民間銀行は存在しないのではないか?」とも思われるのである。
そのために、今回は、「形だけの金融緩和」を実施したものと考えているが、反対の観点からは、「ECBが、どれほど厳しい状況にあるのか?」を暴露したようにも感じられるのである。つまり、「日米欧の先進各国」が協調して、今まで、「国債の買い支え」を実行してきたのだが、現時点では、「ECBの金融政策」が、ほぼ行き詰った状態になっているようにも思われるのである。
そして、今後は、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」が指摘したように、「市場の反乱」が起きた時に、「先進各国の中央銀行が、一挙に、方針転換を迫られる」というような事態も想定されるようである。具体的には、「国債の買い支え」に関して、「資金繰りの問題」が出始めることだが、実際に、「日銀の当座預金」に関しては、「6月30日」以来、ほとんど頭打ちの状況となっているのである。
そのために、今後の対応としては、「国債の買い増しを中止する」という「量的緩和の終了」か、あるいは、「日銀券の増刷」も考えられるようだが、この点に関しても、「ECB」には、さまざまな規制があり、一筋縄ではいかないような状況になっているのである。そして、この点を熟知している海外の投資家は、こぞって、「世界的な金融危機の到来」を予想しているのだが、残念ながら、ほとんどの人が、本当の「インフレ」を理解していないために、「的外れの予想」となっているケースも見られるようである。(2014.9.5)
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シュリンクフレーション
最近、海外では、「シュリンクフレーション」という新語が使われ始めたようだが、このことは、「シュリンク(収縮)」と「インフレーション(物価上昇)」とを合わせた言葉である。つまり、「名目的な値上げ」が難しいために、「実質的な値上げ」が行われている状況のことだが、実際には、「お菓子」や「日常生活品」などの「内容量の減少」のことである。より具体的には、例えば、「ポッキー」などにおいて、今まで、「100円の定価」で「100グラムの内容量」だったとすると、「内容量が90グラム」にまで減少すると、「実質的な値上げが行われてきた」ということが理解できるのである。
このように、過去数年間は、「シュリンクフレーション」が、いろいろな分野で起きていたようだが、現在では、この点にも、大きな変化が起き始めたようである。つまり、「メーシーズ」や「スマッカーズ」などの食料品メーカーが、「名目的な値上げ」を実施し始めたのだが、この点については、「1970年代の狂乱物価」の時にも、同様の展開が見られたようである。そして、「名目的な値上げ」の後に、「狂乱物価」へと移行したとも言われているのだが、今回については、より大きな注意が必要だと考えている。
つまり、「1970年代」に起きたことは、「1971年のニクソンショック」をキッカケにして、「通貨に対する信頼感」が減少したという状況だったのである。その結果として、いろいろな商品価格が急騰したのだが、結局は、「インフレファイター」と呼ばれた「ポール・ボルカー元FRB長官」の登場により、強烈な「金融引き締め政策」が実行され、「狂乱物価が落ち着いた」という状況でもあったのである。
別の言葉では、「健全な国家財政」を基盤にした「国家への強い信頼感」が存在したために、「長短金利の上昇」が可能だったのだが、今回は、全く、状況が違っているのである。つまり、「QE(量的緩和)」や「異次元の金融緩和」という言葉のとおりに、「先進各国」が「過去に例がないほどの、きわめて異例な超低金利政策」を実施しているのである。そして、このような状況下で、いわゆる「出口戦略」が実施され、実際に、「金利上昇」が起きた時には、「1970年代」とは、全く違った事態も予想されるのである。
具体的には、「国家財政の破綻」により、既存の「金融システム」や「通貨制度」が崩壊する可能性のことだが、この点を理解するためには、現在の通貨制度である「信用本位制」が理解される必要性があるようだ。つまり、我々の「預金」や「国債」などが、実際には、「影も形もない、単なる数字」によって創られているということである。
そして、「金利上昇が始まった時に、どのような事態が考えられるのか?」についても、いろいろと厳しい意見が出始めているが、実際には、今回の「自然災害」が、「天の警告」となり、間もなく、本当の「人災」が始まる可能性のことである。つまり、現在の「非伝統的金融政策」については、「歴史上、ほとんど例がないほどの、異常な状況」であり、今後の「反動」が、たいへん気にかかる段階になってきたということである。(2014.9.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion5008:141002〕
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