ナチスが政権を掌握していったプロセスと似てきた
- 2015年 1月 9日
- 評論・紹介・意見
- 安倍政権小澤俊夫
メール通信「昔あったづもな」第28号
総選挙の結果、共産党が8議席から21議席に飛躍したことは注目に値する。反原発、集団的自衛権の発動反対、特定秘密保護法の廃案、憲法改悪反対を明確に主張する政党が、小政党とはいえ、これだけの支持を集めたということは、今の政治状況の中でほんの少しだが期待が持てる。そして一方で、田母神候補が最低得票で落選したことにも、国民はちゃんと見ていたことが現れていて、いい兆候だと思う。
しかし、投票率52%という最低記録とはいえ、現在の選挙制度では、最多議席を獲得した自民党が公明党と結んで衆議院の3分の2の議席を獲得してしまった。この議席数を持っていれば、たとえ参議院で自公提出の議案が否決されても、衆議院で再可決して成立させることができる。極めて危険な状態になってしまった。
2016年に行われる参議院選挙では、絶対に自民党、公明党に3分の2の議席を与えてはならないのだ。国民は今からそのための準備、戦いを始めなければならない。
だが、現在の状況は極めて危険で、それは、ヒットラーが政権を掌握したときのプロセスと似てきてしまった。
1932年、総選挙で第一党になったナチス党は、ヒットラーが33年1月30日にドイツ帝国大統領ヒンデンブルクから帝国首相に任命されたが、その勢力はまだ十分でなく、連立内閣を作ることになった。これは、ワイマール憲法に則って行われた政権委譲であった。
その後に、議会制民主主義を次々に実質的に破壊して独裁体制を築き上げたのである。その時、ナチスは、大衆の支持を獲得することに重点を置いた。「ヒットラー青年団」(ヒットラーユーゲント)は、1926年のナチス全国党大会で設立されていたが、1933年以降は他の青年団体は禁止され、「ヒットラー青年団」が党組織から国家の組織に格上げされた。そして、1936年の「ヒットラー青年団法」、1939年の「青年奉仕義務法』によって、青年の強制加入団体になっていった。
ナチスは、大衆を独裁体制に取り込むため、宣伝を重視した。当時流行し始めたラジオでヒットラーが情熱的な演説をして、大衆を陶酔させた。ゲッベルスという宣伝術にたけた男を宣伝大臣に任命し、あらゆるメディアを駆使して大衆をひきつけた。ベルリンオリンピックの記録映画「民族の祭典」「美の祭典」はその代表的なものである。
これらの事情は、『忘却に抵抗するドイツ』(岡裕人著、大月書店)に詳しい。是非それを読んでもらいたいのだが、以上のように抜き書きしただけでも、現在の日本の状況と似ていることがわかるだろう。
1) ナチス政権はワイマール憲法のもとで合法的に政権の座に就いた。(総選挙での勝利と大統領からの任命)
2) 合法的に政権を握ってから、実質的に議会制民主主義を壊していった。(集団的自衛権行使の閣議による決定、反原発世論の無視、辺野古移設世論の無視など)
3) 初めは連立政権を作った。(公明党との連立)
4) いろいろな団体をナチス体制のもとに変質させていった。(在特会の温存、日本会議の温存が怪しい)
5) 宣伝(プロパガンダ)重視。(日本を取り戻す、などのキャッチフレーズの考案)
6) 最新メディアをフルに活用した。(テレビの活用、選挙直前に自民党がマスメディア6社に“公正な報道”を要求した)
7) 宣伝の専門家を活用した。(安倍首相の背後に宣伝の専門家がいるはず。百田某など、声の大きい、目立つ、大衆受けする者を配置している)
8) オリンピックをフルに利用した。(2020の東京オリンピック)
こうやって整理してみると、ナチスの独裁体制確立のプロセスと現在の安倍政権の政権運営が極めて似ていることがわかると思う。国民は今頑張らないと、後悔することになってしまうと思う。次の世代の子供たちのために、そして日本の未来のために、頑張ろうと言いたい。
(2014.12.30)
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