アベノミクスとは何だったのか? 7
- 2015年 1月 12日
- 交流の広場
- アベノミクス大野 和美
上記のような自動車産業の特徴から自動車メーカーが取り得る手段は輸出である。例えば日本の自動車メーカーからみれば自動車の輸出相手国は同質の産業構造を擁し、従って自動車産業が発展しており、それを支えている分厚い中間層を抱えている欧米の主要国である‥・自動車を中心として耐久消費財産業を巡る国際競争の激化につながる‥・つまり、自動車産業を中核とする現代資本主義は相互の市場の奪い合いの局面に至ったことを意味する‥・その典型的な例が日米自動車貿易摩擦であろう。1970年代の「オイルショック」を契機に日本の自動車メーカーは高い省エネルギー効果を持つエンジンを備えた小型車の対米輸出を急増させた。その結果、アメリカの巨大自動車メーカーでのレイオフが急増し、あげくに3大自動車メーカーの一つであるクライスラーは倒産の危機が生じた。結局この軋轢は「被害国」アメリカの主導で日本の自動車の対米輸出数量規制に始まり、日本の主要自動車メーカーがアメリカ現地生産(=対米直接投資)に踏み切る事で一応の決着を見る。これは、日本の企業レベルではアメリカでの生産増を通しての利益拡大の余地を得たが、日本経済としては輸出増で可能であり得た関連諸部門の生産拡大と雇用増を含めた波及効果の機会を失った。アメリカは、企業レベルでは相対的に低コストの日本産自動車との競合をある程度回避したことになる。アメリカ経済としては進出した日本企業によるある程度の関連諸部門の生産と雇用の増を得たことになる。これは同時に日本企業に国内市場の一定規模を提供することになる。この日本企業に提供した国内市場のシェアは以後は拡大しうるし縮小もありうる。概して言えば、ゼロサムゲームということになろうか?この競争の帰趨が両国の経済・社会・政治に如実に反映される以上当然であろう。
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