マンション生活で知り得た社会問題を考える (9) ―[終章] 社会問題のまとめと将来への対策
- 2015年 3月 7日
- 評論・紹介・意見
- マンション住宅問題住民自治羽田真一
我が人生70年は第2次世界大戦の日本の敗戦から始まり、高度成長経済の中で技術屋として一生懸命働き、終わりごろにバブル崩壊で経済低迷の余波を受けながら余生を過ごしていると位置づけできそうだ。働いた割に生活の豊かさ、特に基礎たる住宅環境は恵まれてきたとの実感に乏しい。その中に今のマンション問題が組み込まれることになった。
政府が強行しようとしている憲法改正問題が全国規模の社会問題であるなら、当マンション管理の問題など取るに足りない小さな社会問題だろうか。日常生活の舞台であるマンションの特徴は、不可分の集合共有資産を通して組合員住民が[管理費*]を納め管理組合を形成し、(たて前上)住民代表による理事会を通じて管理運営する事であろう。現実は小集団社会ながら、人・金の集まるところに政治(管理統治)があり社会問題が発生する。2011年から図らずも半年足らずの理事長となり、経験したマンションの社会問題を既報にまとめて報告したのは、社会共通の問題に敷衍しえると考えたからである。(根本には国の貧困な住宅政策が絡んでくると考えるが今はそれを問わないでおこう。)
1. 既報の社会問題をまとめ位置づける
結局、管理組合での民主主義の形骸化がマンション管理の社会問題の根本にあると考えたい。ここでの民主主義とは[管理費*]を納める組合員住民が管理組合の主役となり、自主的に管理運営する体制の実現と考える。既報の通り、管理組合の実態は管理会社を中心として密閉的管理中枢を形成し長期に渡って実務を独占し、彼らが主役となり彼らに都合のよい管理運営をしてきたのである。そこに会計不正疑惑が現れて来たのは必然の結果である。気付いて「きちんとルール通りやれ」と意見を発すると、彼らの既得権益に抗う人間として口封じ排除の対象になった。現代版ムラ八分である。当方の行動に賛同する住民が少しはいるだろうと予想したが初めだけで、その後は全く行動として表れてこない全体の沈黙に変わった(当方が変人なのかと悩む)。言葉を発する識者住民が転出し、情報操作が行き着けば、マグロに追われ右往左往する鰯の群れが出来上がるのか。
もう一つの重要な社会問題は、このような正当な意見発露が討論もされず多数の力で頭ごなしに悪とされることである。少なくともマンション内部だけでなく周辺自治体においてもほとんど賛成反対の言論応答がないことである。私は手紙文書配布で内外に発信し続けているが、自由を基盤とする人間社会では賛否両論があってしかるべきと思っている。マンション内の反応はまるで憎しみ一色であると感じる。脅し非難ビラ・非通知電話・無言電話・配布ごとにほぼ1回だけの文書返し等々が止むことなく、声の反応は管理人・理事会役員と顔が会った時の迷惑非難と配布中止要請だけである。「個々で反応するな」と指令があるのかと想像するが、当方が勝手に配っていて直接の反応がなくても、前管理人の逃亡、旧専門委の崩壊、現金小口会計の凍結、老人会の活動休止など全く理由の説明はないが、手紙文書配布の影響と捉えている。反応が無いのが「無言の反応」なのだと捉えている。
既報:マンション生活で知り得た社会問題を考える(全8報)からの要点をまとめる、
・管理中枢の形成:管理会社+理事会役員(旧専門委)+コンサルタント(第2管理会社)+管理人(管理会社派遣)に役員OBや老人会さらに自治会+婦人会連合を加えれば管理側の強
さが分かる。「何でもできる」から一般住民の沈黙に繋がる。金・知恵・経験もある管理
会社が委託業者という立場でなくマンションの支配者になることは許されない。
・管理規約の改訂・追加改悪、各種細則の制定、理事会自らが管理規約違反・規約無視
前管理人の長期実務独占(管理人王国)、旧専門委>理事会の優先横暴、監事の取り込み無 機能化、不完全役員選挙度、住民を代表しない理事、仕組まれた総会(重要事項を採り
上げず、不十分な総会資料・会計報告、八百長質問など)
これらは管理中枢の支配権力の増強に使われ、その弊害はとてつもなく大きい。
・実質密室会計:前管理人の実務独占(エセ自主管理時代は管理会社・コンサルタント・旧専門委と組んで予算を差配、特に大規模修繕積立金工事、現金小口会計の不明朗)
会計閲覧の実質不可(保管文書リストのまやかし、罰則付き誓約書提出強要)
正確でオープンな会計処理こそ健全な管理組合の信頼への基盤である。管理会社の力で防御しても、見せて当り前の規約を最後まではぐらかす理事会の行為は外では支持を得られるだろうか。そもそも組合員でない管理人が会計に携われるのか。
・情報操作:意図的に貧弱な広報活動、理事会議事録の改竄・不記載、配布せず→有料コピー・意図的時間遅れの回覧、管理組合ニュースで羽田攻撃に悪用、理事会傍聴に誓約書要求、理事会記録ICレコーダーの貸出し禁止、要望書制度の凍結・悪用
管理組合の主役はどこにある?と言いたくなる。口先だけのオープンな管理で徹底的に情報兵糧攻め。これでは住民はものが言えない。
2. 過去に眼を閉ざす者は、現在にも盲目になる[独元大統領]
この理事会は住民を蔑にして管理会社(コンサルタントを含む)の支配を許すマンション管理をやってきた。エセ自主管理体制で管理会社代理人の管理人を王様に仕立て密閉管理中枢を形成し、情報操作を駆使してマインドコントロールして住民を沈黙させてきた。過去の会計不正疑惑を指摘されても無視して通り過ぎようとした。そうすることで問題が存在しないから応える必要もないとの態度である。しかし、正しく上述の言葉のごとく、今や文書配布差止請求による刑事告訴の行為で対応せざるを得なくなっている。無視できるなら最後まで無視を通せばよい。羽田の指摘に呼応して訴訟を持ち出してきたことこそ無視できなくなったことの証し、と読み取れる。前述のように卑怯で陰湿な攻撃を続けてきたが、文書配布による外部社会からの批判に耐えられなくなったのであろう。例え、管理会社の強大な金力で裁判を成功に導いたとしても、これまでの事の経過状況で羽田の正義の訴えを消すことはできないだろう。その時には羽田はもっと強く社会に訴えて味方を増やす決意である(この社会は正義が通らない事態はいくらでもあるが)。
時の自治会長は前管理人と結託して、臨時理事会の始まりに議場に押し掛け傍聴させろと20分も時間を浪費させた。それを実名で手紙で伝えると「名誉棄損だ、プライバシー侵害をどう償うのか」ととっちめ懇談会の席で攻めてきた。自分の行為を棚に上げて直ぐ個人情報保護を隠れ蓑に正当を装う。私はこの手の攻撃には実名で知らせることにしている。
最近急に理事会資料から羽田の名指し部分を下線に変えた。見せかけのプライバシー尊重の態度である。まやかしの正義はお見通しである。正しいことを正しいと主張できるところからしか正しい社会は生まれない。
3. どうすればマンションの社会問題を解決できるか
2011年5月の管理組合総会で理事長就任を承認され、新理事長としての挨拶を以下の内容で行った。これは1年間の副理事長を通じて理事会活動を経験した上での率直な実行宣言であった。余りにも不味い会議運営について行けない歯がゆさを感じていたので、理事会の運営目標を 「正常な管理組合の運営を実現する=真の自主管理の実現」とした。
①貴重な管理費をお預かりして、 ・管理費約\2万を減→\1万5千/月・戸に
②できるだけ住民の意見を広く汲み上げ、 ・住民の生の声募集・自主アンケート実施
③十分な審議を尽くして決議し実行する、 ・理事・監事・専門委の役割を具体化
④そして速やかにその結果を広報する ・公正な議事録・ニュースの確実な伝達
右側は発足後に提示した具体的実施目標の例である。まだまだ課題の理解は不十分の段階であった。残念ながら「決別宣言」によって8月半ばで進路を断たれてしまったが、課題のその後の経過をまとめると、
・管理費節減の要求は大きい 段階的に10%→20%そして最後に\5,000/月・戸を目標に
専門委は「管理費をケチるとみすぼらしくなる」という。
ムダが目につくから減らせと言っている。未だ実現せず。
・理事は住民を代表していない 住民の声を汲み上げるのは当り前(直接・回覧・集会等)
後に自主アンケートを実施(理事会活動への疑問多し)
現行選挙制度の改善要(くじ引き十番制は問題)
・審議・決議は十分か 一般理事・専門委は無役を分担制に(責任の所在を明らかに)
重要事項(例、予算申請)は書類申請審査に、記録書類で残す
・広報を活発に 議事録を信頼有るものに、「管理組合ニュース」の発行など
スポンサー住民に理事会内容の迅速な広報は当たり前
管理事務所の解放オープン化(誰でも近づけるセンターに)
・休業店舗棟の活用 法人化により組合が買い取り、高齢者・子育て・学童用施設利用
(図らずも内科診療所開設に転化され、法人化も反対された)
・他 駐車場の万年不足解消法(未だ解決せず)、エレベーターの設置(構造上無理と多額の費用、一部ボスの提案)、管理人の雇用問題(長期・高齢・好待遇から検討実現)等
いつも管理会社の意向を受けた前管理人が後ろに控えて羽田の提案を阻止してきた。エセ自主管理であった証拠である。その結果が目標実現を阻んできた。残念であるが強固な管理中枢対羽田個人の対決となって今に至っている。
1) まずは自分たちの貴重な[管理費*]は自分たちの手で動かすことである。そのためには管理組合の主役は自分たち住民であり、管理会社も管理人も単に委託された業務の助言者の立場を自覚することである。
2) 標準管理規約を参考に住民自らの手で「自主管理規約」を作ろう。初めは不完全で良い、実行して改めてゆけば良い。まず正常な管理組合精神を身に着けた住民の育成から始めよう。少なくとも3年が必要だろう。努力なくして自分の身は守れない。
3) 管理情報(私たちの生活そのもの)の資源を備えよう。内部人材の掘起し、健全な集合住宅との交流意見交換、役に立つ資料知識の集積利用、インターネットの活用、種々の講
習・必要な資格の習得奨励 これらを生かす仕組みを構築する。
4) 公的機関に頼らぬ、管理会社を入れぬ、純粋に私的結びつきのマンション管理交流機関は出来ないか。スポンサーは自費(他費は怖い)、活動の基本は自分で自由意思、ニュース・体験・考えを共有するソフトな繋がりで助け合おう。
最後に、マンション管理組合という集団の必要な理念について、『ガンジーの「7つの社会的罪」』で締めくくりたい。
1. 理念なき政治、2. 労働なき富、3. 良心なき快楽、4. 人格なき学識、5. 道徳なき商業、6. 人間性なき科学、7. 献身なき信仰 に
私は8. 倫理なき集団 (具体的にはこの管理中枢)を加えたい。
*既報の所々に誤字変換、日時記載の間違いを発見した。赤面してお詫び申し上げる。
[第9報 終り]
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5216 :150307〕
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