カナダ牛にBSE発生、韓国は輸入中止、日本はほったらかしで、まともな報道もされず :北米産(カナダ,アメリカ,メキシコ)の牛肉は要注意です
- 2015年 2月 21日
- 交流の広場
- 田中一郎
カナダ産牛にBSE発見の続報です。日本はなぜ,カナダからの生体牛や牛肉,及び牛肉加工品の輸入(牛肉関連輸入)を停止しないのでしょうか。なぜ,カナダにおけるBSE発生原因の追跡をしないのでしょうか。常識的には,カナダにおいてBSE感染牛が一頭もいない状態が確認されるまで,カナダからの牛肉関連輸入は止められるべきでしょう。本日付の日本農業新聞記事では、内容がボケているように思えます。また、日本の消費者団体などは何をしているのでしょうか? ともかく、この日本では,何の安全対策・対応もしないばかりか、まともな報道さえされていないことは「異常」という他ありません。
下記にある韓国での対応や、今から10年ほど前の日本の対応と比べてみてください。食品安全委員会というインチキ御用委員会が発足して、食品の安全管理はどんどんひどくなり、関係者は農業団体や消費者団体を含め、「安全ボケ」が進行しているように思われてなりません。申し上げるまでもありませんが、牛BSEは人間にも感染しますし、人間がBSEに感染すれば必ず死亡します。治療方法のない「致死の病」です。万全の用心を払って対処しなければならないはずです。
それから,カナダに限らず,北米全域(カナダ,アメリカ,メキシコ)産の生体牛や牛肉・牛肉加工品については,BSEの危険性が完全には除去されておりません。この地域では,生体牛や牛肉・牛肉加工品は,自由貿易協定であるNAFTAの下,自由に国境を越えて取引されており,1つの国で危なければ,他の国でも危ないとみておいて間違いないと思われます。そして,今回BSE感染牛が発見されたカナダのみならず,アメリカでは,今から10年以上も前にBSE感染牛が発見されても 検査体制をきちんとするわけでもなし,飼料規制をしっかりと強化するわけでもなく,BSE牛根絶のため取組を完全な形で強めるといった対策は取られておりません。要するに,危ないままと言っていいでしょう。そもそもBSE牛が発見されながらも,カナダも米国も,自国の全ての牛を検査しないばかりか,牛などの家畜飼料に対する規制もいい加減なまま,あたかも特定危険部位(SRM)さえ取り除けば心配いらないかのごとき,科学的実証的根拠に乏しい論議がまかり通っていたのです。
しかし,特定危険部位(SRM)については,下記にもある通り,国によって微妙に違う=つまり,どこの臓器や部位が特定危険部位(SRM)なのかは,未だ国際的に確定した定説はありません。そんなものを取り除いただけでBSEのリスクがゼロになるなどということは,現段階ではとても言えないのです(実際問題,血液やリンパ液が危ないという説もあって,その場合には,リスクの度合いは違えども,BSE感染牛はそのすべての肉が危ないということになります)。
●特定危険部位(SRM)
http://www.weblio.jp/content/SRM
しかし,別添PDFファイルの2015年2月20日付日本農業新聞記事によれば「食品安全委員会はカナダで今後も発生する可能性があることを前提にリスク評価しており,農水省は「現行の措置で安全性に問題はない」としている」とあります。食品安全委員会については,既に何度か申し上げたように,とうの昔に賞味期限が切れて,今や食品産業御用人間たちがたむろする「危険追認委員会」「食品安全詐欺委員会」の様相濃厚であり,また,農林水産省こそは,この日本にBSEを広めてしまうことになった張本人ではありませんか。ちょうど2001年に日本で初めてのBSE牛が発見される少し前,この役所は,欧州などからの肉骨粉輸入の危険性を指摘されても,「現行の措置で安全性に問題はない」などと言っておりました。
今回も同じことを言い張っているわけです。
加えて大事なことは,別添PDFファイルの2月20日付日本農業新聞によると,「(農水省は)今回カナダで発見されたBSEは,自然発生的な「非定型」ではなく、「定型」のBSEであることを明らかにした」とあります。これは,このBSEが汚染された飼料を食べたことが原因である可能性が高いことを示しています。ということは,カナダには,同じ飼料を食べた牛がBSEの潜伏期にある可能性もありますし,こうした飼料は他にも出回っていることもあり得ます。
また,既に申し上げたように,カナダとアメリカやメキシコの間では,生体牛,牛肉及び牛肉加工品,及び飼料などは自由に貿易されていますから,カナダで起きていることは,アメリカやメキシコで起きても,何の不思議もないことになるのです。
カナダやアメリカの家畜飼料の規制や管理の現状を実態に即して明らかにされない限りは,とても北米産の牛肉関連輸入品は食べる気にはなりません。(少し前にアメリカで発見されたBSE牛は,ほんとうかどうかあやしいところもあるのですが「非定型」とされ,従ってまた,飼料とは関係がないとされて,食の安全上,大した問題ではないなどとされてしまいました。しかし,今回は「非定型」ではなく,飼料と関係が深い「定型」です)
みなさま,当面,カナダやアメリカやメキシコにおいて,BSE牛は今後絶対に発生することはないということが,科学的実証的な根拠を持って明らかにされるまでは,北米産の牛や牛肉・牛肉加工品に対しては,万全の注意を払いましょう。私はこれまでも,これからも,北米産の牛肉関連輸入品など,買うことも食べることもない,という決意です。
(注1:北米産の牛肉と言えば「牛タン」や「牛テール」を思い浮かべますし,焼き肉屋のカルビなども連想します。しかし,牛タン(舌)は,その下部が特定危険部位(SRM)であるへんとう腺とつながっていて,牛肉処理の作業員の肉切りハサミの入れ具合によっては,へんとう腺とタン肉の区別は容易には付かないように思われてなりません。また,テールやカルビは,骨髄のすぐそば,ないしは骨髄そのものであり,万が一BSE感染牛だった場合には,非常に危険な部位と言えるでしょう。私はこうしたことから,とても北米産の牛肉などを食べる気にはなれないのです)
(注2:北米産の牛肉については,BSE以外にも,遺伝子組換え(GM)の牛成長ホルモン剤投与の問題や,遺伝子組換え(GM)飼料の問題,あるいは抗生物質の多投与の問題や,O157など食肉処理場などの不衛生による有害細菌感染などの問題もあります。とても食べる気にはなりません)
(1)カナダでBSE発生、飼料中心に原因究明(日本農業 2015.2.15)
(2)カナダBSE 感染牛は「定型」 飼料汚染の可能性調査(日本農業 2015.2.20)
<関連サイト>
(1)カナダでBSEに感染の牛見つかる NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150214/k10015454851000.html
(2)カナダ:アルバータ州でBSE感染牛を確認-2011年以来 – Bloomberg
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NJQT2O6KLVR601.html
<韓国での対応>
(1)カナダでBSE発生、韓国政府は国内搬入を中断 政治 ハンギョレ
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/19683.html
(一部抜粋)
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韓国の主要な牛肉輸入国であるカナダで牛海綿状脳症(BSE)が発生し、カナダ産牛肉の韓国への搬入が中断された。農林畜産食品部は13日「カナダでBSEに感染した牛が発見されたため13日付でカナダ産牛肉に対する検疫を中断する」と明らかにした。駐韓カナダ大使館は11日(現地時間)、カナダのアルバータ州の肉用牛がBSEに罹り、該当する動物の死体が食品や飼料業者に提供されてはいないと韓国政府に知らせてきた。
カナダ産牛肉は2011年までBSEのため輸入が中断されたが、その後はBSEが発生しておらず2012年3月から輸入が再開された。農食品部関係者は「カナダが提供した情報は限定的だが、ひとまずBSEにかかった牛が発生し、韓国内市場に入らないよう検疫を中断した」と話した。 同関係者は「BSEは伝染病ではないので、追加的な感染可能性を考慮して輸入中断可否を決める」とし「関連情報を追加把握して公衆保健に対するリスクの有無を判断し必要な措置を取る」と明らかにした。 昨年基準でカナダの韓国向け牛肉輸出規模が、オーストラリア、アメリカ、ニュージーランドに次ぎ4番目に多く、1709万ドル分を輸出した。
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(2)カナダでBSE発生、韓国への搬入中断 Joongang Ilbo 中央日報
http://japanese.joins.com/article/696/196696.html
<今から10年ほど前はこうでした>
●BSEのカナダ牛肉製品 米国経由も停止要請/農水省 日本農業新聞
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