HOWS講座(4月18日)フランス映画『戦争は終った』(監督 アラン・レネ)の上映と解説討論のご案内
- 2015年 4月 4日
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★反ファシズム戦争勝利70周年にあたって―映画を観て討論する(第3回)にご参加を
◆4月18日(土)13時~
フランス=スウェーデン作品『戦争は終った』1965年アラン・レネ監督・116分)上映と解説・討論
解説=立野正裕(明治大学教授)
会場:HOWS(本郷文化フォーラムワーカーズス クール)ホール
電話:03(5804)1656
参加費:1500円(学生1000円)
▼はたして戦争は終ったか▼
『戦争は終った』を取り上げたのは、武井昭夫の晩年の映画評論のなかのつぎの一節に触発されたからであった。
《もうずいぶん古い話になるが、60年代のフランス映画祭でアラン・レネ監督の『戦争は終った』のまだ字幕の入っていない映画を見た。それまで、わたしは「終戦」ということばの虚偽は見ていたが、戦争は1945年をもってヨーロッパでもアジアでも完全に終ったように思っていたのだが、実はそうではないことを思い知ったのだった。映画は、鎖国して第二次大戦をやりすごした、フランコ政権下のスペインと闘い続けるパリ亡命中の反ファシスト・スペイン人たちを描いていたのだ。この事実への目覚めは、朝鮮や中国、さらにアジア諸国の人々全体にとってほんとうに日本の仕掛けた「戦争は終った」のだったか問わねばならない―レネのパラドックスはそのことをわたしに教えてくれたのだった。在日コーリアンの原爆被�!
�者救済問題、アジア諸国女性の従軍慰安婦問題等はもとより、いま囂しい「拉致」問題にしても、その原因の深部にあの戦争がまだ終ってはいないという現実が蹲っているのを、われわれ日本人は見失ってはならない》(武井昭夫『創造としての革命』スペース伽耶刊所収)
以下、DVD解説から映画と背景について紹介する。
【映画の背景について】
中世のスペインは植民地化を進める巨大な帝国であったが、1588年の英国との海戦で敗れてから国運は衰退の一途をたどり、ほかのヨーロッパ諸国に取りのこされた。カトリック教会を核とする国王,貴族,僧侶,地主,軍など支配階級の腐敗と、改革をとなえる市民・労働階級との間の亀裂がふかまってゆく。1931年には王制を廃し共和制に移行し、両者の対立が表面化した。(スペイン第2共和政)
ここでいう「戦争」とは「スペイン市民戦争」のことである。1936年に社会主義者、共産主義者、無政府主義者が連合した「人民戦線政府」が政権を奪取した。右翼のフランコ将軍はヒトラーとムッソリーニの全面的な支援を受けて武装反乱を起こして「内戦」状態になる。全世界の良心はスペイン民衆の反ファッショ闘争に心からの連帯を表明したが、英仏両国は“内政不干渉”を口実に合法的に成立した政府の支援要請を断る。スペインの「内戦」は全世界の反ファシストたちを決起させ、「国際旅団」の名を持つ各国の義勇兵が続々とスペインに送り込まれた。国家としてはソ連邦だけが武器、兵員、食糧などを供給するが、連合国側の宥和政策や反ファシズム勢力の内部分裂などによって、1939年フランコ軍によってスペイン全!
土が制圧される。こうして反ファシズム闘争の敗北は第2次世界大戦の前哨戦となる。フランコ反乱軍による人民戦線派への弾圧は第2次大戦後も続くことになる。ヘミングウェイの原作『誰がために鐘が鳴る』は「スペイン市民戦争」を背景にしている。
「戦争が終った」の主人公は、戦争が終っても革命の夢を捨てられない。パリに亡命して、スペインとの間をひそかに往復して地下運動にはげむ。
この映画の後も戦争は終っていない。スペインとフランス国境にまたがるピレネー山脈地帯に居住する約80万人のバスク人は、1968年にスペインからの完全独立を目指す民族主義組織「バスク祖国と自由」(ETA)を結成して武装闘争を開始、活動を継続している。フランコ政権による圧政はかれが亡くなり(1975年)民主化が達成される1977年まで命脈を保つ。
【映画『戦争は終った』について】
「戦争は終った」はスペインの左翼作家ホルへ・センプルンのシナリオをもとに、スペインの右翼フランコ政権に反抗 して、自由を求める運動を25年間続けている筋金入りの革命家ディエゴの思想と状況を、緻密な演出のもとに3日間に凝縮する政治と愛の物語。
1965年4月18日、日曜日の朝、ディエゴは同志の旅券でスペインからフランスへ入国しようとする。警官が旅券の持ち主に電話をかけたところ、その娘ナディーヌが事情を察してうまく答えてくれる。彼の目的はマドリードで革命家の一斉検挙がはじまり、それをパリの仲間に伝えることだ。
翌日、妻のマリアンヌはディエゴを温かく迎える。だがディエゴにとって、愛よりも祖国スペインと同志のことがすべてである。妻は救いがたいとあきらめている。3日目、ディエゴは急にスペインのバルセロナへ行くことになる。ナディーヌは刑事が父のパスポートを調べにきたことから、ディエゴの身許が知れたと直感する。ディエゴは逮捕されそうだ。
日本公開1967年11月新宿文化、日劇文化(ATG=東和配給)。
○監督:アラン・レネ(1922~2014年)代表作に『夜と霧』(1955年)、『24時間の情事』(1959年)、『去年マリエンバードで』(1961年)、『ミュリエル』(1963年)、『ベトナムから遠く離れて』(1967年)、『薔薇のスタビスキー』(1974年)など多数。
○出演:イヴ・モンタン(1921~1991年、北イタリア生れ)=ディエゴ役
イングリッド・チューリン(1929~2004年、スウェーデン生れ)=マリアンヌ役
ジュヌヴィーエヴ・ビュジョルド(1942年~、フランス系カナダ人女優)=ナディーヌ役
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