天皇・皇后ご夫妻の精いっぱいの意思表示
- 2015年 4月 13日
- 評論・紹介・意見
- 小澤俊夫戦争
メール通信「昔あったづもな」第36号
天皇・皇后ご夫妻がパラオ群島に慰霊の旅をなされた。あの大戦中に少年時代を過ごされた天皇陛下が長年にわたって実行してこられた、慰霊の旅の一環である。
新聞報道によれば、天皇陛下は出発に先立ち、皇太子、秋篠宮、安倍首相らを前に、「太平洋に浮かぶ美しい島々で、このような悲しい歴史があったことを、私どもは決して忘れてはならないと思います」と述べられたということだ。
この言葉は明らかに「そして、この多くの犠牲者のおかげで私たちが獲得した日本国憲法をきちっと守っていくことが大切なのです」と続くはずの言葉である。しかし、天皇・皇后ご夫妻としては、日本国の象徴なのだから、そこまでは言えないと思って、遠慮なさったのであろう。ぼくはそこまで言ってもらいたかったと思うが、それは理解する。
しかし、そこまで言わなくても、天皇・皇后ご夫妻が平和憲法を守ろうと思っておられることは、誰でも推測できることである。そして天皇陛下のこの言葉は、今、アメリカ、ドイツ、中国、韓国が日本の安倍政権に対して言っている「過去の歴史を歪曲するな」「歴史を直視せよ」という批判と同じことを言っているのである。マスメディアには、この関連を強く指摘してもらいたいと思う。そうでないと、天皇・皇后ご夫妻が精いっぱい言われたその心が、国中に広がっていかないからである。
ぼくらは、みんなで、天皇・皇后ご夫妻の志をサポートしようではないか。
天皇陛下は、戦後七十年となる今年の新年の感想で、「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」と記しておられた。この言葉から考えても、天皇陛下が、「過去の歴史を歪曲するな」「歴史を直視せよ」と考えておられることは明らかである。ただ、お立場としてこんな激しい表現はなさらないだけのことだ。そこを、われわれは正しく理解しなければいけない。われわれ民衆の使い慣れた言葉で言い直せば、「平和憲法を守れ」「戦争反対」なのである。
ところが安倍首相は、聞いて聞かぬふりをしている。
天皇・皇后ご夫妻から直接、上の言葉を聞いたはずなのに、安倍首相は、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を18年ぶりに改定して、自衛隊による集団的自衛権を使った機雷除去を盛り込む方針を固めた。これは安全保障法制の大改革の一環で、ホルムズ海峡の機雷除去ができる根拠を作ろうとしているのである。安倍首相の考える安全保障法制が整備されると、他国どうしの戦争中の機雷除去もできるようになる。そして地球の裏側にまで自衛隊を派遣できるようになる。
安倍首相は「国民の生命の安全のために」と言うが、実は日本を「戦争のできる国」にしてアメリカ軍の実戦に協力することなのである。日本の総理大臣が、日本国の象徴である天皇陛下の意思を無視して、日本国を反対の方向へ強引に引きずり込もうとしている。だが「この戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なこと」なのである。(2015.4.10)
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5291:150413〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。