本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(85)
- 2015年 4月 24日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
ニュートンの忘れ物
先日、「経済物理とその周辺」という会合で、私の意見を発表する機会があったが、この時の題名は、「ニュートンの忘れ物」であり、副題として、「未来予測と時間のサイクル」というものだった。そして、私が主張したことは、「自然科学」と「社会科学」との違いであり、実際には、「社会科学は、自然科学に比べて、数百年程度の遅れが存在する」ということだった。
具体的には、「コペルニクス」が「地動説」を再発見し、その後、「ケプラーからニュートンへ」という言葉のとおりに、「自然科学は、ニュートンの法則が発見されて以降、劇的な発展をした」という状況でもあった。しかし、一方で、「社会科学」を代表する「経済学」については、「アダムスミスの国富論」から始まったものの、その後、「マルクスの資本論」、そして、「ケインズの一般理論」へと続きながら、過去数十年間は、ほとんど停滞状態に陥っているのである。
そして、この理由としては、「マルクス」や「ケインズ」が、最も興味を持っていた「貨幣論」が、ほとんど忘れ去られていることと、もう一つの重要な点として、「時間のサイクル」が、全く理解されていない点が挙げられるものと考えている。つまり、「コペルニクスの地動説」や「ケプラーの法則」により発見されたことは、「天体のサイクル論」であり、実際には、「時間と空間の法則」だったのである。
しかし、「自然科学」により解明されたことは、「空間」、あるいは、「物質」などの「目に見えるもの」の研究であり、この時に、「目に見えないもの」である「時間」や「人々の心」などは、ほとんど無視されてしまった。その結果として、現在では、「科学技術」が発展したものの、人々の「心の闇」が深くなっているものと思われるが、この理由としては、「将来に対する不安感」が存在するようにも感じられるのである。
つまり、「これから、どのような事が起きるのか?」に対して、現代人は、大きな恐怖心を抱いているようだが、この時に役立つのが、「時間のサイクル論」だと考えている。具体的には、「過去2000年間に、人類は、どのような事を考え、どのような時代を形成したのか?」を検証することだが、この時に役立つのが、「暦の理論」でもあるようだ。別の言葉では、「コペルニクス」や「ケプラー」などが興味を持っていた「天文学」のことであり、現在では、「占星術」と言われ、ほとんど、無視されているが、今後は、この点が見直されることにより、人々の「心の闇」に光明が当たるものと考えている。(2015.3.27)
-------------------------------------------
天動説の経済学
コペルニクス(1473年-1543年)が「地動説」を再発見してから、「ニュートン(1643年-1727年)」の「万有引力の発見」までには、「200年以上の年月」が必要だった。そして、この期間は、「神に対する信仰心」が、人々を支配しており、「地動説を唱えることは、神に対する冒涜である」と考えられていた。しかし、その後は、人々の探究心が、世の中を動かすことにより、19世紀に「科学と宗教との対決」が繰り広げられ、現在では、「科学万能の時代」となった。
また、この時に、「経済学が、どのように発展したのか?」を振り返ると、実際には、「アダムスミス(1723年-1790年)」の「国富論」が1776年に発表され、その後、「マルクス(1818年-1883年)」の「資本論」、そして、「ケインズ(1883年-1946年)」の「雇用・利子および貨幣の一般理論」へと繋がっていった。つまり、「マルクス」と「ケインズ」が、最も興味を持っていたのが、「お金」と「商品」との関係性であり、実際には、「お金とは、一体、どのようなものか?」ということだった。
別の言葉では、「資本主義」が発展した時代に、「お金の力」が強くなり、「なぜ、このようなことが起きるのか?」を、真剣に考えたようにも思われるのである。しかし、結果としては、現在でも、「人類史上、誰も、お金の謎を解いた者はいない」と言われるように、「貨幣論」は、我々にとって、「未知の領域」とも言えるのである。つまり、「命の次に大切である」と言われ、現代人が重要視する「お金」については、誰も、実態を把握していない状況ということである。
その結果として、現在では、人類史上、最大規模の「マネーの大膨張」が起きているが、このことは、世界中の人々が、「天動説の経済学」を信奉しているような状況とも考えられるようである。つまり、「実体経済」だけに注目しすぎた結果として、「マネー経済」が、ほとんど忘れ去られている状況のことだが、この時に、「人類の発展段階」を考えると、興味深い事実が浮かび上がってくる。
具体的には、「コペルニクス」から「ニュートン」までの「200年強の期間」と、「アダムスミスの国富論」から「現在」までの「200年強の期間」に、何らかの関係性があるのではないかということである。つまり、人類が発展するためには、100年単位の期間が必要だった可能性のことだが、かりに、この考えが正しいとすると、間もなく、「地動説の経済学」が誕生し、人類は、飛躍的に発展することになるようだ。(2015.3.27)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5306:150424〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。