アメリカとドイツとイギリスのジャーナリストからの安倍首相批判
- 2015年 5月 6日
- 評論・紹介・意見
- 安倍小澤俊夫
メール通信 「昔あったづもな」 第39号
日本のマスメディアは、安倍首相と現在の政府・自民党が外国からどう評価されているかについて、ほとんど報道していない。しかし実は、安倍首相たちが過去の歴史を無視し、自分に都合のいいように修正する政策は、強い批判を浴びているのである。
そのことを丹念に紹介しているのが「内田樹の研究室」というホームページである。いろいろな問題について、丹念に外国の新聞を紹介しているので、ぜひ検索してみることをお勧めする。その一端を紹介する。
ニューヨークタイムス紙は、最近の日本の政治状況について、かなり正確な観察を記している。その一部、安倍首相についてである。
「彼は公的には戦争について遺憾の意を表し、性奴隷制を含む侵略の過去についての謝罪を履行すると述べている。しかし、コメントに曖昧な形容詞を付け加えることで、彼は謝罪を真剣に引き受ける気がなく、むしろそれを洗い流そうとしているのではないかという疑惑をかきたてている。
彼の政府は歴史を改竄しようとする企てによってこれまでも繰り返し問題を起こしてきた。今月、韓国と中国は、日本の文科省が中学の教科書出版社に対して、領土係争中の島々と戦争犯罪を含む歴史的事実の記述を、より曖昧な政府の公式見解に合致させるよう書き換えを命じたことを批判した。去年は、安倍政府は日本が性奴隷化した女性たちについての1996年の人権レポートの書き換えを国連に求めて失敗している。
日本の右派は彼らの国が戦後アメリカとその同盟国によって不当に中傷されてきたと信じている。日本はすでにその軍国主義的行動と蛮行について十分な償いを済ませていると信じているという印象を安倍氏は与えてきた。そんなことよりもアジアにおけるアメリカの対中国政策を支援し、グローバルな責任を果すことのできる21世紀のリーダーとして彼の国を基礎づけることを優先させようとしている。
しかし、日本がその過去についての批判を退けようとする限り、今以上の大きな役割を引き受けることができるようには思われない。明仁天皇と彼の家族たちは首相よりずっとよい範例を示している。最近の談話の中で、あきらかに安倍氏を批判する意図で、皇太子は未来の世代に『正しく歴史を伝える』ことの必要性について言及した。」(「New York Times の記事から。安倍訪米を前に」より引用 http://blog.tatsuru.com/2015/04/21_1622.php)
天皇・皇后ご夫妻とその一家が、平和への強い思いを精いっぱい表明していることを、ぼくもこの「昔あったづもな通信」第36号で指摘した。
ドイツのフランクフルターアルゲマイネ紙の東京特派員を五年務めたカルステン・ゲルミス氏も日本の状況を正確に把握して、ドイツに報告している。ゲルミス氏はこの長い報告の中で、日本外務省の驚くべき行動のことをドイツ人読者にこう伝えている。
「海外特派員たちが官僚から聴きたいと思っていた論点はいくつもあった。エネルギー政策、アベノミクスのリスク、改憲、若者への機会提供、地方の過疎化などなど。しかし、これらの問いについて海外メディアの取材を快く受けてくれた政府代表者はほとんど一人もいなかった。
そして誰であれ首相の提唱する新しい構想を批判するものは「反日」(Japan basher)と呼ばれた。
五年前には想像もできなかったことは、外務省からの攻撃だった。それは私自身への直接的な攻撃だけでなく、ドイツの編集部にまで及んだ。
安倍政権の歴史修正主義について私が書いた批判的な記事が掲載された直後に、本紙の海外政策のシニア・エディターのもとをフランクフルトの総領事が訪れ、「東京」からの抗議を手渡した。彼は中国がこの記事を反日プロパガンダに利用していると苦情を申し立てたのである。
冷ややかな90分にわたる会見ののちに、エディターは総領事にその記事のどの部分が間違っているのか教えて欲しいと求めた。返事はなかった。「金が絡んでいるというふうに疑わざるを得ない」と外交官は言った。これは私とエディターと本紙全体に対する侮辱である。
彼は私の書いた記事の切り抜きを取り出し、私が親中国プロパガンダ記事を書くのは、中国へのビザ申請を承認してもらうためではないかという解釈を述べた。
私が? 北京のために金で雇われたスパイ? 私は中国なんて行ったこともないし、ビザ申請をしたこともない。もしこれが日本の新しい目標を世界に理解してもらうための新政府のアプローチであるとしたら、彼らの前途はかなり多難なものだと言わざるを得ない。」(「ドイツのあるジャーナリストの日本論」より引用http://blog.tatsuru.com/2015/04/10_1343.php)
イギリスの記者も、安倍首相一派の歴史修正主義について、鋭く批判している。歴史を日本に都合のいいように改ざんしようという主義についてである。
「英国の知日派の人々は「アベノミクス」と国防問題の見通しについては意見がそれぞれ違うが、日本の歴史修正主義者を擁護する人はひとりもいない。
最近の曽野綾子によるアパルトヘイト擁護の論の愚劣さは英国の日本観察者に衝撃を与えた。日本ではこのような見解が真剣に受け止められ、活字になるということがわれわれにはほとんど信じがたいのである。安倍晋三首相がどうしてこのような意見の持ち主を教育政策のアドバイザーに任命することができたのか私たちには理解できない。」
(Japan Times の記事から「日本の厄介な歴史修正主義者たち」より引用 http://blog.tatsuru.com/2015/04/15_1013.php)
日本で、右翼的なマスコミにちやほやされている曽野綾子のアパルトヘイト発言のことである。島国日本は、地理的に島国であるばかりでなく、思想的にも世界から孤立しているのである。
「内田樹の研究室」にはもっといろいろな情報があるので、ぜひ立ち寄ることをお勧めする。(2015・4・23)
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