(報告)原子力市民委員会主催:年次報告『原子力発電復活政策の現状と今後の展望』、特別レポート『100年以上隔離保管後の「後始末」』 発表&意見交換会
- 2015年 6月 11日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
さる6月9日、衆議院第2議員会館において、原子力市民委員会主催の一般向け意見交換会(下記)が開催されました。以下、簡単にご報告申し上げます。
<当日の録画>
●▶ 20150608 UPLAN 原子力発電復活政策の現状と今後の展望・100年以上隔離保管後の「後始末」 – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=f_9HF0qPo48
<原子力市民委員会HP>
まもなくここに当日の資料がアップされると思います。
(1)【6-8】年次報告『原子力発電復活政策の現状と今後の展望』、
特別レポート『100年以上隔離保管後の「後始末」』
発表&意見交換会開催のお知らせ 原子力市民委員会
http://www.ccnejapan.com/?p=5315
(2)原子力市民委員会 HP(トップページ)
(1)廃炉の決定と認可更新について(佐藤暁氏『科学 2015.6』)
(2)「無責任な原発復活政策」、原子力市民委 年次報告で政府批判(東京 2015.6.9)
<私から質問・意見申し上げたこと>
会場からの質問・意見の時間に私から申し上げたのは下記の5点です。それぞれについての原子力市民委員会各委員の回答は、上記の録画をご覧ください。
1.(筒井哲郎さんへ)
(1)福島第1原発事故の実態解明がほとんどなされていない
福島第1原発事故の実態解明がほとんどなされていないように思われるが、いかがお考えか。たとえば、2号機については圧力抑制室(サプレッション・チェンバー:SC)付近が爆発して破壊された=穴が開いたと言われているが、SCのどのあたりにどの程度の穴が開いているのか、さっぱりわからない(調査もされない)、3号機については、その爆発が1号機とは全く違い(1号機は白い煙が横へ広がり、3号機は黒い煙が垂直に上に上がった)、3号機は1号機のような水素爆発ではなく、核爆発ではないかとも言われているが、これも調査さえされない(3号機の爆発場所は原子炉建屋ではなく使用済み核燃料プール)、また1~3号機に共通して、緊急炉心却装置(ECCS)がほとんどまともに機能していなかったようだが、はたして今再稼働されようとしている加圧水型原子炉の緊急炉心却装置(ECCS)は緊急時にきちんと機能するのか、など(福島第1原発は沸騰水型原子炉)、疑問点は山積している。これでは福島第1原発事故の教訓を今後の事故防止に生かすことができない。
(2)「特別レポート『100年以上隔離保管後の「後始末」』」について
福島第1原発の溶融核燃料のデブリは、筒井さんのやり方で隔離保管した場合に大丈夫なのか。昨今のNHKスペシャルの放送(福島第1原発の「廃炉」がテーマ)では、デブリの物質素材が2つの層にくっきりと分かれ、一方の層にはウランが凝縮して固まっていて、再臨界のことを考えると「悪い兆候だ」とされていた。小出裕章さんは、この危険なデブリについて、いったん鉄や鉛などの金属の粉でまぶしてから、筒井さんのようなやり方で「石棺」化することを提唱されているが、それについてどう思われるか。
2.(満田夏花さんへ)
(1)中長期的な恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝)の危険性について
福島第1原発事故で福島県をはじめ、東日本一帯が放射能で汚染され、そこで多くの方々が居住の継続を余儀なくされ(政府・自治体が避難政策を行わないから)、あるいは帰還を押し付けられている。中長期的な恒常的低線量被曝(外部被曝・内部被曝)がとても心配で、特に放射線への感受性の高い子どもたちが心配である。被ばくは、外部被曝のみならず、呼吸による内部被曝がある。今の状態は、まるで福島県の方々が(福島県に限らないが)人体実験をされているような状態だ。これについて、どうお考えか。
(2)福島第1原発事故による被害に対する損害賠償・補償について
福島第1原発事故による被害に対する損害の賠償・補償がきちんとなされない状態が続いている。だから経済的に苦しくて、避難・疎開・移住もできないでいる。重大な人権侵害ではないか。これについて、もっとその不当性を世に問うていかなければいけないのではないか。
3.(伴英幸さんへ)
(1)原発のコスト論と原発リスクコスト
原発のコスト論の話がなされたが、そもそも原発は、その重大な危険性に対する費用=リスクコストを支払わずに運転されているインチキな発電ではないか。普通の民間事業なら、今回の福島第1原発事故ような大事故を引き起こしても、自己責任で被害者に対して損害賠償や補償ができるよう、民間の損害保険をかけて事業を進めていくものだが、原発では、そもそも民間保険がない(リスク=損害見込み額が巨額で、再保険を含む保険の引き受け手がいない)。それで政府がバックアップに入って保険を引き受けているが、その保険金額はたったの1200億円で、お話にならない。原発のコスト論をするときには、この原発リスクコストをしっかりカウントすべきではないか。
(2)高レベル放射性廃液(茨城県東海村及び青森県六ケ所村)
(吉岡斉(ひとし)座長から少しお話があったけれど)茨城県東海村及び青森県六ケ所村に置かれている高レベル放射性廃液が危険極まりない。にもかかわらず、マスコミ報道もほとんどされず、大多数の国民はこの重大な危険性について知らないままである。この高レベル放射性廃液の現状での保管状況はどうなっているのか、地震や津波にどこまで耐えられるのか(津波は最大何mまでOKか、保管施設の耐震性はどうか)、情報もほとんどない。もっとこの高レベル放射性廃液の(保管施設の)危険性について、国民に対してPRする必要があるのではないか(ロシアでは、この高レベル放射性廃液保管施設が爆発事故を起こして深刻な放射能汚染をもたらしている、アメリカ・ワシントン州のハンフォード再処理施設における環境放射能汚染もひどい状態)。
(ちなみに、原子力規制委員会・規制庁も、この高レベル放射性廃液の危険性については認識をしており、管理者である(独)日本原子力研究開発機構に対して、液体のまま放置するのではなく、早くガラス固化体にするよう指示しているようだが、(独)日本原子力研究開発機構の方は、25年かけて、徐々にガラス固化していく、などと、悠長なことを言っている。東海村や六ケ所村を巨大地震や巨大津波が襲う可能性もあり(六ケ所村は火山噴火リスクもある)、非常に危険である。フランスへガラス固化の作業委託をするなどの方法は考えられないのか)
●ウィキペディア ウラル核惨事
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%AB%E6%A0%B8%E6%83%A8%E4%BA%8B
●ウィキペディア ハンフォード・サイト
4.(原子力市民委員会へ)
これから再稼働されようとしている原発の中でも、老朽化した原発は一般の原発以上に非常に危険である。原発の老朽化問題については、元GEの技術者で原子力コンサルタントの佐藤暁さんが、今月号(2015年6月号)の岩波書店月刊誌『科学』に、非常に優れた内容の論文を載せておられる。佐藤さんによれば、老朽化原発は、単に原発が古くなって危険である(経年劣化、中性子照射脆化など)だけでなく、かなり昔の(今から見て技術的に未熟だった時代)設計でつくられているので、だめだなと思っても、にっちもさっちもいかない=修正・改造できない、という点に、より大きな危険性があると指摘されている。全くその通りだ(加えて、日本の古い原発では、管理がずさんで、建設当時の原発の図面や説明書なども散逸して行方不明になっていて、かつ当時の担当者らが定年退職していなくなってしまい、どこがどうなっているのかさえ、今となってはわからない、などという、とんでもない話まで聞こえてくる)。佐藤さんの論文なども参考にされながら、できる限り早く、老朽化原発の再稼働問題について、提言をお出しになっていただきたい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5402:150611〕
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