安倍首相の幼稚な答弁と議論
- 2015年 6月 24日
- 評論・紹介・意見
- 安保小澤俊夫
メール通信「昔あったづもな」第44号
現在国会に提出されている「安保法制」諸案について、衆議院特別委員会と党首討論で、安倍首相は岡田氏や志位氏に、べらべらとしゃべりまくっている。だが質問に対して何ひとつ明確に答えない。委員長に「簡潔に」と注意されても、べらべらしゃべることをやめない。しかもよく聞いていると、実はその言葉は空虚で、世間話のレベルに聞こえる。
「国民の安全と幸福な生活を守ることが政府の責任であります」と大声で言う。だがそんなこと、当たり前じゃないか。その中身はというと、相変わらず「ホルムズ海峡が封鎖されたら大変だから、戦争中でも掃海作業をするのだ」という。
確かに、数年前にはイランとアメリカが鋭く対立し、海峡封鎖が問題になったころはあった。だが、現在ではそのイランとアメリカは雪解けムードで、海峡封鎖など全く話題になっていない。安倍首相はよく、「国際情勢の急激な変化に対応して、安保体制を整える」と言っているが、本当は、現在の国際情勢は見ないことにしているのではないか。安倍首相を支える官僚、政治家は、現在の国際情勢を正確に分析し、安倍首相に伝えることを怠っているのではないか。批判する側も、ホルムズ海峡の政治的意味の変化を政府が認識していないことを取り上げるべきだと思う。
そして、一方では、アメリカで、いわゆる「シェールガス」の生産量が上がり、今や、アメリカは世界最大の産油国になってきている。現在ではまだシェールガスの輸出は認められていないそうだが、いずれは、経済的理由から輸出するだろう。そうなったら、ホルムズ海峡だけが日本の生命線というわけではなくなる。この国際情勢の変化も、安倍首相の答弁には反映されていない。安倍首相を取りまく官僚たちは、実は大変怠慢なのではないか。
そして、日本国民は一刻も早く原子力発電を廃止して、再生可能エネルギーを開発することを求めている。ホルムズ海峡が日本の生命線だという古い固定観念を捨てて、太陽光、風力、海流などの再生可能エネルギーの開発に国家予算をつぎ込むべきである。膨大な軍事費から見えれば、そのための出費はたいしたことではないはずだ。
平和憲法を掲げた平和外交を展開すべきである
安倍首相の答弁を聞いていると、日本の安全を守るのは戦力に頼るだけだという固定観念に縛られていることを感じる。法案の名前にはいずれも「平和」という言葉が冠せられているが、いずれも「平和を守るための戦争法案」である。
この「平和を守るために戦争が必要だ」という考え方は、日本が1937年に中国との戦争を始めた時にも、1941年に太平洋戦争を始めた時にも叫ばれた考え方であった。
いや、日本ばかりではない。1964年、アメリカがベトナム戦争に本格介入した時にも「東南アジアにおける国際平和と安全の維持」が重要だと言った。「平和」という言葉は常に戦争を正当化するために使われてきた。今また安倍首相は、歴史に学ぶことなく、「積極的平和主義」という言葉で、戦争準備を整えようとしているのである。
だが、戦争への準備としての「平和」でなく、本当の平和で国の安全を守る道があるではないか。我が国は、300万人の日本人の命と、3000万人のアジア人の命を犠牲にして、「平和憲法」を獲得したのである。そして、この70年間戦争をしたことがなかった。そして、アジア、中近東、アフリカなどの発展途上国に、経済的、文化的、医学的に貢献して、それにふさわしい信頼を獲得してきた。そして、アメリカともロシアとも中国とも、経済的、文化的、科学的にかなり深い付き合いをしてきている。そういうなかで、外交力を発揮して自国の平和を守る道があるはずだ。なぜその道を追求しないのか。
政府・自民党は、尖閣諸島問題をクローズアップして、今にも中国と争いが起きるような雰囲気を日本国内に広めているが、今こそ外交力を発揮するべき時ではないか。今や世界は、20世紀初頭のように、領土問題で簡単に戦火を交えられる状況ではない。戦争力がお互いに進歩しすぎていて、簡単に戦火を交える状況でないことは、外交に携わっている者はみんな知っているはずである。
そして、政府・与党は北朝鮮の危険性を強調するが、あの国が日本に攻撃を仕掛けてくることは、あの国にとって自殺行為である。それはできない。北朝鮮の問題も、外交努力で平和的に解決するべきである。
それにもかかわらず、安倍首相とその周辺の官僚、政治家たちは、安倍首相に古い観念を叩き込んでいるのだろう。安倍首相自身には、そういう広い歴史観、世界観をもつ能力がないから、安倍首相の答弁は幼稚な答弁になるのである。中身がないから、べらべらとたくさんしゃべらないと、もたない。
こんな幼稚な人間を首相にもった日本は全く危ない。とにかく今の「戦争法案」を廃案にもちこまなければならない。(2015.6.19)
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