福島県「『県民健康調査』 検討委員会・甲状腺検査評価部会 中間とりまとめと過剰診断について」(補足)
- 2015年 7月 12日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
福島県「『県民健康調査』 検討委員会・甲状腺検査評価部会 中間とりまとめと過剰診断について」の私の投稿に関わるブルマン!だよね氏のご下問があり、お答えしたいと思います。
第一には、憲法解釈論議を例にとったのは、不毛な論争に例えた訳ではありません。 私自身が一憲法学徒ですから。 しかしながら、福島の住民から観れば、果てしなき論争が継続することを横目にして、がん罹患の恐怖に耐え続けることを強いられるのは理不尽ではないのでしょうか。 とすれば行政庁として、住民の不安に答えるに充分な施策実施が求められるのは当然と思われるのです。
勿論のことに、中西準子氏が指摘されておられるようにメリットとデメリットの勘案は必要でしょうが、仮に、何もしなければ、医療機関に向かう住民は現在より遥かに増していたことでしょう。
第二に、予防原則については、私の文脈からは、その導入には否定的とお分かりになると思われます。 二酸化炭素地球温暖化仮説を盾にとり、「予防原則」を錦の御旗に膨大な国費を費消している無能な国家では、この原則を皮肉に使用するのも良いでしょうが、真の意味での予防原則は、厳格に捉えるべきと信じます。
仮に科学的・医学的に、過剰診療が実在した、と仮定して、現に診療を望む住民の不安を打ち消し、医療機関での受診を思い止まるように福島の住民を説得し尽すことは可能でしょうか。 でなければ、現に原発事故に由来の住民の不安に応える施策にこそ国費を使うべきでしょう。
最後に、がん治療に拘わらず、今の医学(のみではありませんが)は不完全で、疾病の発症から治療法に至るまで完全に究明されたものではありません。 最近、私自身の罹患した疾病についてその事実を思い知らされることになりました。 ましてや原発事故と云う稀有な事故に起因する疾病に至っては、医療従事者の見識も異なって当然でしょう。 それを自己の意見と異なるからと排斥しては、永遠の議論を継続する愚を犯すのではないのでしょうか。 よって住民の不安を解消することが先決と思われます。 疑問があれば調査を継続すれば済むことです。 診療手続や治療法は、日進月歩ですので、現にある手法を更新することも重要でしょう。
そうは言っても、行政庁である福島県は、具体的な線引きに困っているでしょうがね。 それで、「中間とりまとめ」を出すようにして、世間の様子見をしたのでしょうか。 お役所が良くやる手です。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5483:150712〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。