「安保関連法案の審議110時間 6番目の長さに」~強引採決の露払い役に成り下がったNHKニュース~
- 2015年 7月 14日
- 時代をみる
2015年7月13日
この時点でNHKニュースが審議時間の長さを伝えるいわれは?
今夜のNHKニュース7をご覧になった方はおわかりのとおり、下記のような見出しのニュースが放送された。衆議院に記録が残る昭和35年以降で、今回の安保関連法案に関するこれまで(13日の時点)の審議時間は6番目に長いというニュースである。
「安保関連法案 審議110時間6番目の長さに」 (NHK News Web 7月13日 18時35分)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150713/k10010149501000.html
政府・与党が安保関連法案について「十分な審議時間を確保した」「審議は尽くされた」と称して明日以降、特別委員会での強行採決をうかがっているさなかにNHKがこのようなニュースを流すのを見て唖然とするとともに、NHKのニュース番組はもはや「政府広報」というよりも、なりふり構わぬ「政権幇助報道」になりさがっていると実感した。
56%の回答者が「審議は尽くされていない」と答えている最中に
もともと、審議の中身と無関係に審議時間の多寡で採決の前提が整ったかどうかを論じること自体、不見識であるが、同じ今日のニュース7の中で報道されたNHK世論調査(今月10日から3日間実施)において、「安保関連法案について国会審議は尽くされたか」という問いに対し、 「尽くされた」 8% 「尽くされていない」 56% 「どちらともいえない」 28% という回答結果を伝えたのと照らし合わせても、審議時間の比較報道は前後矛盾したものであり、NHKニュースが民意おかまいなしの審議日程を強行しようとする政府・与党の国会対策の露払いの役回りを買って出ているといっても過言ではない。
NHKが来ると「今日は何かあるな」と ~辺野古で現場取材を続ける影山あさ子さんの言葉が思い起されて~
NHKニュースにこんな感想を持つのと同時に、たまたま昨日、私が司会・進行役を務めたパネル討論「辺野古から考える日本のジャーナリズム」のなかで、パネリストの1人として登壇していただいた映画「圧殺の海」の共同監督・影山あさ子さんが次のように発言されたのを思い起した。
「NHKが来ると今日は何かが起きる(と感じる)。今日何かすることを知っているから来ている。 NHKのニュースを見ていると、こういう工事が今日されました。着工されました、フロートができました、と工事が進展しているようにみえる。だから、NHKのカメラが来ると、今日なにかするはずだと感じるわけです。」
「放送法」にも反する露骨な偏向報道
折しも、自民党の谷垣幹事長は今日の記者会見で、安保関連法案を15日に衆院平和安全法制特別委員会で採決する方針を表明し、16 日の衆院通過に向けた動きを一気に表面化させた。(「共同通信」2013年7月13日、21:24) NHKのニュース報道が、こうした自民党の方針と気脈を通じていたと思いたくはない。しかし、先週来、安倍首相が国会答弁で「審議は相当に尽くされたのではないか。決めるときには決める」と審議打ち切りを示唆したと報道されるような発言をする一方、野党5党が結束して強行採決に反対しているさなかに、安保法案の審議時間は既に110時間で記録が残る過去の法案審議の中では6番目の長さ、と題する放送を敢えてしたのは放送法が定めた政治的公平にもとる露骨な偏向報道と言っていっこうに差し支えない。
初出:醍醐聰のブログから許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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