言論弾圧と言論目つぶし ―週刊誌に注目
- 2015年 7月 14日
- 評論・紹介・意見
- 小澤俊夫言論
メール通信「昔あったづも」第46号
政権党である自民党は、選挙前にマスコミに対して公正な報道をするよう要請したかと思うと、安倍首相に媚びる若手議員やシンパが、沖縄の新聞はつぶせとか、マスコミを締め付けるにはスポンサーにならないことが一番いい、とか言って、言論弾圧の寸前にまで行っている。さすがに安倍首相も官房長官もあわてだして、謝罪めいたことを言ってみたり、「わたしの責任だ」と、心にもないことを言って逃れようとしている。もちろん本音は変わっていない。ひたすら戦争法案の採決をめがけてのポーズである。
一方、ぼくは週刊誌がどう動くかを注目している。六十年安保の時も、新聞七社が降参する前から、週刊誌は怪しげな動きをしていたからである。つまり、世論形成に陰で力を発揮したのである。
世の中を見渡してみると、一方では強烈に反原発、辺野古新基地反対、憲法擁護を叫ぶ人がいるが、一方では、大東亜戦争肯定、従軍慰安婦はいなかった、アメリカ軍への協力賛成、自主憲法制定を叫ぶ人たちもいる。だが、圧倒的多数の国民は、現在の状況をどう判断したらいいかわからず、日常の生活がうまくいきさえすればいいという気分であるようだ。その結果が、毎回の各種選挙で表れてしまうのである。信じられないほど高い棄権率。自民党候補者の信じられないほど高い当選率。
この中間層に強い影響を与えているのが、週刊誌とテレビだと思う。テレビの問題はよく取り上げられるが、ぼくは週刊誌に注目する。紙による伝達様式として、週刊誌は極めて強い力を発揮していると思う。中でも強い影響力を発揮しているのが「週刊新潮」と「週刊文春」であるようだ。発行部数も他を圧倒しているらしい。
その二誌。国会で戦争法案が審議されていて、政府・自民党が強引に採決にもち込もうとしている今、今週の「週刊文春」の見出しのトップは韓国への罵声であり、「週刊新潮」の見出しのトップは、皇室のもめごと(作り話かもしれない)である。この二つの話題は、話題性という点では伝家の宝刀なのである。日本人の中にはいわれなき嫌韓感情をもっている人が案外多い。それを大々的に書けば、戦争法案の問題など吹っ飛ばせると編集部は狙ったのであろう。
皇室の話題はもっと人気がある。しかも、うそかほんとかわからないもめごとのようなことを書けば、ほとんど必ず人目を引く。戦争法制への厳しい目をつぶすにはもってこいの話題と編集部は考えたのであろう。
こんな策略に乗らないいようにしよう。読者をばかにした記事であり、策略なのである。この話題は流れる可能性があるから、その場合は策略に乗らないように注意してあげなければならないと思う。(2015.7.10)
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