今ならまだやめられる共通番号(マイナンバー)制度 : スタート前から破綻状況とそのごまかしでは話にならない
- 2015年 7月 21日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
昨今の共通番号(マイナンバー)制度に関する新聞報道によれば、この制度がスタート前から破綻状態にあり,それを誤魔化しながら進められている様子が見て取れます。個人情報の漏えいについては,先般の年金システムからの漏えいに続き,今度はアメリカで2150万人というとてつもない大量の個人情報が,ハッカーの攻撃によって漏れ出したことが発覚しています。
パソコンのパスワードでさえ,数カ月に一度は変更して隠して使われている時代に,一度決めたら一生変わらない番号を,万人に見えるような形で使って,その番号に様々な個人情報をつなげて使うなど,狂気の沙汰としか思えません。共通番号(マイナンバー)制度で便利になる,などと,アホらしい宣伝に乗せられて踊っている場合ではないでしょう。この共通番号(マイナンバー)制度では,日本人全員の個人情報が世界に向かって「丸裸」となるのは時間の問題です。そうなったとき,いわゆる「なりすまし」による犯罪が多発し,個人の財産が勝手に売買されたり盗みとられたり,あるいはクレジットカードが勝手に作られて使われるなど,社会的にうっとうしい,しかし,実に解決が困難な厄介な状況ができてしまうことは避けられないでしょう。
共通番号(マイナンバー)制度の個人情報は必ず漏れます。その漏れたマイナンバーには,たくさんの個人情報がぶら下げられていますから,盗人や詐欺師たちにとっては「宝の山」となるでしょう。しかも,漏れた個人情報を「第3者」を装って名簿業者(ペーパーカンパニーなどのダミー会社を含む)などから入手して,それを商売に使っても,その個人情報発生源に関して「知りません」「存じません」としらを切れば,何の罰則もペナルティもないのが日本の個人情報保護制度であることはベネッセ事件の時に明らかになっています。日本の個人情報保護とは,個人情報を(不正・不法も含めて)使う企業や業者を保護する法律です。だまされてはいけません。
この制度ができて喜んでいるのは,まずもってITゼネコンといわれているシステム開発会社やコンピュータ会社,そして公安警察や検察・治安関係の役所,最後に,世の中の詐欺師・犯罪者達です。一部政治家どももそうです。有権者・国民の迷惑のことなど念頭にはありません。適当にごまかしておけばいいと考えています。官僚達は,公安情報・治安情報の捕捉に加えて,共通番号(マイナンバー)制度による社会保障・福祉予算の個人管理を狙っていて,有権者・国民に役に立つような予算は極力圧縮していくという大きな「財政支出戦略」の下で動いています(もちろん官僚の中には,こうした市場原理主義政策の極地のようなことをよくないと考えているものもいますが,大きな流れが一部のロクでもない官僚幹部や政治主導でできてしまっているため,抵抗できません)。
共通番号(マイナンバー)制度は今からでもやめることは可能です。安倍晋三政権の戦争法案や特定秘密保護法とともに,この共通番号(マイナンバー)制度も葬り去る必要があります。こんなものは,日本には必要がないどころか,ロクでもないことばかりを引き起こす,「がん細胞」のようなものとなってしまいます。
<参考1>中小零細企業もマイナンバーの使用が強制される=中小零細企業にマイナンバーの厳格管理等はできない=必ず個人情報は漏れる
http://www.bango-iranai.net/library/pdf/ishimuraRecText20150508.pdf
(上記の石村耕治先生のレジメが非常にわかりやすくていいのでご紹介します。熟読なさって見て下さい:田中一郎)
<参考2>マイナンバー関連のリーフレット類(忙しい方はこれらをざっとご覧になれば概要がわかります)
http://www.bango-iranai.net/library/libraryList.php
<参考3>共通番号いらないネット HP
(1)マイナンバー見切り発車? 自治体のシステム点検 黄色信号(東京 2015.7.11)
(2)米2150万人情報流出(東京 2015.7.10 夕刊)
(3)年金情報流出解明進まず(日経 2015.7.9)
1.マイナンバー見切り発車? 自治体のシステム点検 黄色信号(東京 2015.7.11)
(一部抜粋)
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国民に個人番号を割り振る「マイナンバー制度」の導入に当たっては、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)や社会保障、税の情報を管理するシステムの改修が必要だ。自治体などには、情報漏えいを防ぐために改修前の自己点検が義務付けられているが、実施が改修後になるなどの問題点が指摘されている。
(中略)池内沙織議員(共産)は「昨年度中に改修を終えているのに、本年度に相次いで保護評価書が公表されている。改修してから保護評価をしている」と追及したが、其田事務局長は、自治体が一四年十月までにプログラミングを始めていた場合は、保護評価を終える期限が延長される経過措置を説明。「問題なし」との立場を崩さなかった。
(中略)厚生労働相が実施機関となり、公的年金業務の保護評価が行われた。評価書は保護委が了承し、三月に公表された。保護委のウェブサイトで公表された内容をみると、情報の漏えいの技術的対策につて「十分に行っている」「不正プログラムを検知し、駆除または隔離を行うソフトウエアを導入している」とある。ところが公表後の五月、日本年金機構がサイバー攻撃を受け、百万件を超す基礎年金番号の流出が判明した。
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2.米2150万人情報流出(東京 2015.7.10 夕刊)他
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2015071002000244.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM10H1K_Q5A710C1EAF000/
http://www.asahi.com/articles/ASH7C1S1NH7CUHBI008.html
(一部抜粋)
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コンピューターシステムの大規模な不正侵入を受けた個人情報の流出問題で、米連邦政府職員の人事情報を管理する人事管理局は九日、米国人口の約7%に当たる二千百五十万人分の機密性の高い個人情報が流出していたと発表した。AP通信によると、米史上最大の被害規模とみられる。流出したのは、連邦政府の勤務経験者や就職希望者らの、納税や年金の管理など個人特定の基本となる社会保障番号や学・職歴、犯罪歴、資産状況とされる。本人だけでなく配偶者や同居人の情報百八十万人分も含まれている。
人事管理局は六月四日、少なくとも四百万人の情報流出の恐れがあるとして、銀行口座や資産の状況に注意するよう促していたが、今回の発表では被害人数が大幅に膨らんだ。ロイター通信によると、六月と今回の発表分は一部重複しており、合計では二千二百十万人分になるという。
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3.年金情報流出解明進まず(日経 2015.7.9)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC08H09_Y5A700C1EA1000/
(一部抜粋)
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(中略)「国民の不安解消につなげたい」。第三者委員会の事務局長を務める中央大学法科大学院の野村修也教授は同日、中間報告を出す目的をこう説明した。これは裏返せば、最終報告を出せる見通しが現時点で立っていないということでもある。
年金機構がサイバー攻撃による個人情報の流出を発表したのは6月1日。この間、101万人の個人情報流出や年金機構の情報管理に不備があったことは判明したものの、ウイルスメールを送った犯人はおろか、被害がこれで全部かどうかの見極めもできていない。
(中略)政府は2016年1月のマイナンバー開始を控え、情報流出を防ぐ対策を急いでいる。自治体のセキュリティーを監督する専門部署を特定個人情報保護委員会に年度内にも設置。中央官庁と自治体を結ぶネットワークにも不正通信を監視する組織を設け、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)と連携してサイバー攻撃に備える。
政府機関は外交や防衛機密を取り扱う端末はインターネットから遮断しているが、大量の個人情報を扱う端末も遮断することを検討している。ただ年金情報流出の全容が解明できなければ、政府がどれだけサイバー対策を強化しても、国民に対する説得力に欠ける。関係者の処分や流出問題の対策費用をどこから捻出するかという問題も手つかずのままだ。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5510:150721〕
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