東芝の粉飾決算は、何故、刑事事件にならないのか
- 2015年 7月 26日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
現在の日本において、一大企業犯罪が闇に葬られようとしている。 言わずと知れた東芝の粉飾決算である。 事件については、此処で繰り返す必要も無いであろう。 要するに、日本の大企業が粉飾決算に依って、市場と取引の公正を汚した疑いの濃厚な嫌疑があるにも拘わらず、「不適切会計処理」と珍奇な用語まで誂えて世間を謀るのに躍起になっているのである。
マスゴミは、やれ、東芝の企業風土が問題であるかのように装い、或は、企業統治の問題であるかのように視点をずらし、腰の引けた証券取引等監視委員会他と歩調を合わせて東芝の擁護に懸命である。
しかも過日、発表された東芝の第三者委員会による調査結果を観ても、肝心な点は、何一つ明らかにはされていない。 これでは、第三者委員会では無くて東芝の擁護委員会である。 加えて、企業役員の主だった者は、既に辞表を出して逃亡を図っている。
しかし、市場は既に世界に開かれている。 東芝の如き大企業が粉飾決算に依って市場を謀る企みを実行に移せば、この世界の秩序が乱される。 従って、世界の真面なマスコミは、正面切って批判を行う。
例えば、ブルームバーグである。
「ブルームバーグの集計によれば、東芝は2009年5月に3330億円の公募増資を実施し、国内外の機関投資家や個人に新株式の発行や株式の売り出しなどエクイティファイナンスを行ったほか、09年5月から13年12月の間に計6400億円の普通社債や劣後債などの有価証券を発行した。」
東芝:1兆円を資本市場で調達、経営トップ関与の水増し会計で (ブルームバーグ
東芝は、粉飾決算に依って、一兆円を市場から調達したのである。 これは、詐欺である。
では、幾分煩雑にはなるが、当該法令を観て行こう。
金融商品取引法(昭和二十三年四月十三日法律第二十五号)では、第百五十八条で、風説の流布、偽計、暴行又は脅迫の禁止が定められ、第百五十九条で、相場操縦行為等の禁止が定められ、且つ、第百五十七条では、それらに該当しない不正行為の禁止を定めている。
これらの定めに違反すれば、実行行為者は、10年以下の懲役、若しくは1,000万円以下の罰金又は併科となる。 企業犯罪であれば、法人に対しては、7億円以下の罰金である(罰条は、第百九十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1(中略)
五 第百五十七条、第百五十八条又は第百五十九条の規定に違反した者(当該違反が商品関連市場デリバティブ取引のみに係るものである場合を除く。)。
更に、当該罰条である第百九十七条の2には、こうある「財産上の利益を得る目的で、前項第五号の罪を犯して有価証券等の相場を変動させ、又はくぎ付けし、固定し、若しくは安定させ、当該変動させ、又はくぎ付けし、固定し、若しくは安定させた相場により当該有価証券等に係る有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等を行つた者(当該罪が商品関連市場デリバティブ取引のみに係るものである場合を除く。)は、十年以下の懲役及び三千万円以下の罰金に処する。
即ち、東芝の粉飾決算は、第百九十七条の2の罰条に合致している嫌疑が濃厚である。
上に挙げたブルームバーグの記事は、明確にその疑いを東芝に向けている。 さて、嘗ては、日本最強と言われた東京地検特捜部は、どのように本件に立ち向かわれるのであろうか。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5522:150726〕
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