猛暑の対策は如何に
- 2015年 8月 3日
- カルチャー
- 熊王信之
今夏は、猛暑、と報道されています。 でも、私には、そんなに暑いとは思えない、のです。 正確に云いますと、我が家に居れば、と付け加えねばなりませんが。
そもそも此処、大阪の夏は暑いのです。 昔、奈良に住んでいましたが、彼の地の夏は、過ごしやすかったのです。 クーラー等は不要でした。 夜になると窓を網戸のみにしていると寒いので、ガラス戸を閉めないと寝られませんでした。
尤も、奈良の市街地は、暑かったのですが、私が住んでいたのは奈良市の郊外で樹木が多い処でした。 溜池が多くて、小河も多い処でした。 冬には、その溜池に鴨が遊弋し、山の木々には、渡り鳥の鳴き声が満ちました。 其処で休日には、迷彩服を着て双眼鏡を持ち、鳥たちを観に行ったものです。 夏には、草いきれで蒸せるぐらいでしたが、暑くて堪らない、と云う程ではありませんでした。 野鳥の観察を終えて小河のせせらぎで顔を洗い、手を洗うと、冷水が身体に沁みるのを感じました。
我が家では、その昔を思い出して、少しばかりの工夫をしたのです。 奈良の郊外にあったのは、緑と水と土でした。 我が家の東には、用水路がありますので、水は一応合格として、家の周囲は、出来るだけ土のままにしてコンクリートで固めるのは最小限にしてあります。
庭と言えるものはありませんが、家の周囲の空地に樹木を出来るだけ植えました。 先年までは、家の周囲にはコノテガシワを植えてあったのですが、大木になり過ぎて家が覆われてしまい防犯上も悪いので思い切って伐採しました。 その後、西日対策で西には、大株の金木犀四本を植え、南側には、狭くて細長い用地に日曜大工で花壇を作り、育てて居た蘇鉄の子株を鉢植えのまま配置し(八本)、アイビーをグランドカバーにしました。 その他に、ハーブのアップルミントが地質に馴染むのを確かめてから植えました。
東側の水路沿いの空地はコンクリートなので、ひと抱え程ある大鉢に椿と柊の大株を入れて十鉢を並べました。 その他にも蘇鉄の大株(四本)他を大鉢に植えて配置してあります。 家の北側は、隣家との間の空地なのですが狭いので、東西の隅に植木鉢の小さいのに陰樹の柊南天を植えて配置しました。
植木鉢の配置は、樹木と云うよりも水甕を配置したようなもので、大鉢にしたのは、水撒きをした後の乾燥を出来るだけ防ぐためでした。 同じ発想で、家の周囲の土が出来るだけ乾燥しないようにしました。 ハーブのアップルミントが乾燥に弱いことが理由の一つです。
結果は、朝は、クーラーの設定温度を28度にしてありますが、余り作動せずに過ごせます。 ただ、二階は、スレート葺なので、可成り暑くなります。 戸外は、猛暑が嘘のようで、特に東側の水路沿いが涼しい程です。 この水路は、水利組合が管理していて役所でも水路に蓋はしないことに決定しているので、当面は、安心ですが、もし水路に蓋をする案が出てくると絶対に反対することにしています。
こうして今では、幼児の頃よりの趣味の園芸が役に立った、と自我自尊しております。 翻って、日本の都市計画では、緑と水と土が如何にも軽視されているのが猛暑の一因ではないのでしょうか。
典型的には、都市河川の埋め立てや道路用地への転用で、河川や水路が明らかに減少しているのが分かります。 更に、都市公園は、あっても樹木は伐採につぐ伐採で、緑は、図面上あるだけ、と皮肉も言いたくなる程です。 幹線道路沿いの樹木もあれだけ伐採するのならば、植えるのは何故なのか、と問いたくなります。 住居の周囲もコンクリート、何処も彼処もコンクリートです。 すこし前には、コンクリート舗装道路は都市部のみでしたが、今は、何処も同じです。 如何に土木建設業者向けの公共事業が多かったのかを思い知らされます。
さて、猛暑の都市部における具体的対策としては、都市部の一定規模以上の建築物には、その屋上緑化を義務付けしても良いでしょうし、各官庁の建築物には率先して屋上緑化の義務を定めても良いでしょう。
都市公園の有り方も再検討が必要でしょう。 今のように伐採のために樹木を植えるような愚策は排除するべきです。 幹線道路の緑化も必要で、また、特に都市内部の高速道路は、河川を塞いで設置されたものが多いので、河川を復活させるべく対策を講じることが求められます。
コンクリートそのものも、経費に問題点はありますが、透水性のある素材を使うと、土質に保水性を持たせることで都市内部の高温化には適応するでしょう。 夏になると何時も繰り返される役所の散水行事は、地球温暖化のPRとしては兎も角も、現在の舗装材の材質からは、いくら散水しても無駄、としか云い得ません。 環境関連の部署も、もう少し科学的に考えることが出来ないのでしょうか。
自動車対策も必要でしょう。 これは、ヒートアイランドの重要な原因でしょうし、都市内部への侵入を出来るだけ防止する対策が要るでしょう。 まちづくりとの一体化で歩行
区間の整備と併せれば、思わぬ効果が出るかも知れません。
ま、来世紀の人は、こんな策を投稿していたのを笑うかも。 都市にドームを被せて、年間を一定温度に保てるようになればね。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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