【集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第23号】 (2015年8月4日)
- 2015年 8月 4日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
8月3日に行われた礒崎総理補佐官への参考人質疑と、一般質疑のダイジェ
ストをお送りします。ぜひご一読ください。
参議院ではハイペースで審議が続いています。内容的には、相変わらず政
府側が追い込まれているのですが、審議時間がどんどん積み重なっていく
ことが心配にもなります。本日4日は首相出席で集中審議が行われます。
【資料】参議院安保法制特別委員会(計45人)メンバーの要請先一覧
http://www.sjmk.org/?page_id=349
※FAX、電話での要請にお役立てください!
———————————–
【8月4日(火)参議院安保法制特別委員会 集中質疑】
※首相出席、NHK中継あり、6時間54分
9:00~9:46 山本一太(自民)
9:46~10:31 佐藤正久(自民)
10:31~11:26 小川勝也(民主)
11:26~11:54 櫻井充(民主)
休憩
13:00~13:32 櫻井充(民主)
13:32~14:12 矢倉克夫(公明)
14:12~14:45 小野次郎(維新)
14:45~15:18 仁比聡平(共産)
15:18~15:35 井上義行(元気)
15:35~15:52 江口克彦(次代)
15:52~16:09 中西健治(無ク)
16:09~16:26 福島みずほ(社民)
16:26~16:43 主濱了(生活)
16:43~17:00 荒井広幸(改革)
ネット中継 http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
———————————–
【参考人質疑 ダイジェスト】
ネット中継アーカイブ
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
※カレンダーの日付(3日)をクリックしてご覧ください。
◆礒崎陽輔 総理補佐官
「軽率な発言で国民、与野党にご迷惑おかけした事をお詫びする。法的安
定性は重要と認識している。法案の合憲性と法的安定性は確保されている。
憲法との関係とともに、安保環境の変化を十分踏まえるべきという点を
「法的安定性は関係ない」との表現で大きな誤解を与えた。発言を取り消
すとともに関係者に心よりお詫びする。成立時期に関する発言も深くおわ
びする。補佐官として発言したことは不適切だった」
◆鴻池祥肇委員長
「総理補佐官とはどういうお仕事をなさるのか?」
礒崎「総理大臣を助け助言を与えることが主な仕事。国家安全保障の所管
について総理に助言する」
◆鴻池祥肇
「「この重要な法案は9月中旬にあげたい」との発言があった。同じ参議
院議員として聞きたい。参議院というのは、先人が苦労して二院制にもっ
てきて、先の大戦で、貴族院が止められなかった軍部の戦争に至った道を
十分反省しながら作ってきた。衆議院と参議院は違う。衆議院の拙速を戒
め、足らずを補完するのが参議院。できるだけ合意形成に近づけていく。
これらが参議院の役割。参議院の審議の最中に「9月中旬にあげたい」と
の発言はいかがか。我々参議院は衆議院の下部組織ではない。官邸の下請
けではない。このあたりを質したい」
礒崎「参議院は衆議院のコピーではなく、一院の行き過ぎを抑制する機能
を持っていると理解し、機能を強める参議院改革の議論にも参加してきた。
時期的なことを申し上げたのは不適切だった」
◆福山哲郎(民主)
「総理や政府は「法的安定性を維持しながら限定容認した」と強弁してき
た。補佐官であるあなたがちゃぶ台をひっくり返した。自ら職を辞するべ
きだ。与党からも進退論が噴出する中でなぜ居座り続けるのか?」
礒崎「発言の最後の部分で、現実の当てはめについて、法的安定性ととも
に国際情勢に十分配慮すべきと言うところを「法的安定性は関係ない」と
言ってしまった。法的安定性全体を否定したのではない。なんとかご理解
を賜りたい」
◆福山哲郎
「なぜ辞任しなかったのか。質問に答えてほしい。あなたは法的安定性を
「そんなもの」呼ばわりしている」
礒崎「最後の当てはめの部分で誤った発言をした。ご指導を賜り、職務に
専念することで責任を果たしたい」
◆福山哲郎
「総理から注意を受けたのはいつか。総理に進退伺はしたのか。また総理
から進退の言及はあったか?」
礒崎「火曜夕刻に総理から連絡があった。総理から「誤解を生むような発
言であり注意を」と。進退についての言及はなかった」
福山「総理もあなたもこの問題の大きさを何も感じていない」
◆福山哲郎
「あなたは「国際情勢の変化に伴い必要最小限度の範囲が変わるというこ
とは、今まで何度も政府としても個人としても言ってきた。このことが法
的安定性の内容だ」とおっしゃっているが、このことも撤回されますね?」
礒崎「国際情勢の変化に伴って一定の配慮すべきとの部分は撤回するつも
りはない」
◆福山哲郎
「あなたは、2015年6月号の雑誌『ジャーナリズム』で「万一の場合、戦
わなければならない時もなる」と。上陸まで言及されている。必要最小限
度の内容が変わると。必要最小限度がこんなにも広がることが法的安定性
を損なう。これがあなたの言葉につながっている」
礒崎「戦うというのは武力行使するとの意味で言った」
◆福山哲郎
「雑誌であなたは「今のところ新たな解釈が憲法違反だと言ってきている
人は見当たらない」と言っている。その根拠は何か。とぼけているのか。
政権と異なる意見は無視するのか?」
礒崎「感覚を言ったまで。きちんとした根拠もなく発言したのは軽率だった」
◆福山哲郎
「あなたは2月、「憲法改正を一度味わってもらう。怖いというものでな
いなら、次は難しいことをやっていく」と発言した。国民は実験台か。憲
法改正は味あわせるものではない」
礒崎「憲法改正手続きを経験してもらいたいという意味。ていねいな手続
きでやることを知ってほしかった。自民党の役職として発言した」
◆福山哲郎
「あなたは2013年11月、テレビでキャスターが「秘密保護法を廃案に」と
言ったことを「放送法違反だ」とツイッターでつぶやいた。報道や表現の
自由への介入という認識はなかったのか?」
礒崎「総理補佐官として具体的な発言をするのは問題があるので、今後は
慎重に対応したい」
福山「あなたは「問題がある」と。それだけでも辞任に値する。こうした
あなたの姿勢は安倍政権の姿勢にも共通する。あくまで辞任を求めていく」
———————————–
【一般質疑 ダイジェスト】
◆佐藤正久(自民)
「専守防衛の定義について。「武力攻撃」が他国へのものを含むのは、フ
ルスペックの集団的自衛権を認めるのでは、との議論があった」
中谷大臣「急迫不正の事態に対処するという基本的論理は新3要件でも維
持されている。我が国防衛のやむを得ない自衛の措置として容認される受
動的なものだ」
◆佐藤正久
「「日本国籍を有する国民が対象」との大臣発言があった。在外邦人を守
るのは責務だが、その事のみで「存立危機事態」とするのは論理に飛躍が
ある」
中谷「国民とは一般にそうであるように日本国籍を有する者。在外邦人へ
の攻撃のみで「存立危機事態」と認定して、世界の警察官になる事はない」
◆小西洋之(民主)
「憲法の条文を変えない限りできないとしてきた解釈が、昨年7月1日で根
底的に変わった。しかし、閣議決定には「法的安定性が求められる」と書
いてある。礒崎発言は根底から覆すものではないか」
中谷「補佐官は発言を取り消し謝罪、撤回し法的安定性が重要と言われた」
◆小西洋之
「閣議決定には「外国の武力攻撃」とある。誰に対すると書いていない。
日本に対するものに限らず、同盟国への攻撃も含むとしており問題になっ
た。こうした言葉遊びのようなことで集団的自衛権が解禁される。昭和47
年見解に個別的自衛権と集団的自衛権が含まれていると」
「7月1日の閣議決定以前に「限定的な集団的自衛権が法理として認められ
る」としたものはあるか?」
横畠長官「表明したものはない」
小西「今のはものすごく重要な答弁だ。政府は昭和47年見解に限定的な集
団的自衛権は法理として存在するとしている」
◆小西洋之
「横畠長官、あなた自身が憲法の法的安定性を壊している。国民は「私た
ちの憲法が政府に奪われている」と声をあげている。あなたは以前、検察
官だった。物証の問題だ。昭和47年見解を作る契機となった9月14日の審
議のどこに限定的な集団的自衛権を示した部分があるのか」
「内閣法制局は解釈変更に当たって法的な審査をしていない。あえていえ
ば「クーデター」だ。事実上の審査をしなかったのは内閣法制局設置法に
違反するのではないか?」
横畠「何もしていないわけではなく、ご指摘は当たらない」
◆小西洋之
「昭和47年見解を作る契機となった9月14日の議事録を使って、法制局が
限定的な集団的自衛権について審査した部分はあるか?」
横畠「部内資料にそれを書いた紙はない」
小西「新3要件を作った論理の紙が1枚もない!」
◆小西洋之
「当時の吉國法制局長官は「他国が侵略を受けている事は、まだ日本国民
の生命、自由、幸福追求の権利が侵されている状態でない。外国に武力攻
撃を受けた時初めて自衛の措置ができる」と。なぜ集団的自衛権の行使が
できるのか?」
横畠「当時の事実認識だ。今日の安保環境では適切に対応できない」
◆小西洋之
「当時の高辻法制局長官は「内閣の政策的見地に盲従し、時の政府の利害
に立った無節操な態度であってはならない」と述べた。あなたはこの「無
節操な態度」ではないか?」
横畠「ご指摘は当たらない」
小西「あなたは違憲の戦争で自衛隊員や国民が命を失うのを体を張って防
ぐ責任がある」
◆小西洋之
「昭和29年の参議院本会議での「海外出動をなさざることに関する決議」
について、鶴見祐輔議員の趣旨説明がある。「自衛とは不当に侵略された
時の正当防衛行為。自衛とは海外に出動しないこと。憲法9条を有する限
り破ってはならない。拡張解釈は危険だ」と」
◆井上哲士(共産)
「礒崎補佐官の発言撤回は言葉だけで反省がない。一方で「国際情勢の変
化に伴って必要最小限度が変わる」との発言は「撤回しない」と。ここに
本音が現れている。これは政府見解と一致するのか?」
中谷「結論部分の当てはめを行った。必要最小限度の範囲内にあることは
不変だ」
◆井上哲士
「大森法制局長官(当時)は武器提供を「最終的には需要がない。憲法上
の適否について、慎重に検討すべき感触はもっている」と。武器と弾薬の
区別とは?」
中谷「弾薬は武器とともに用いられる火薬類を用いた消耗品。武器は直接
武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置」
井上「手榴弾はどちらか?」
中谷「火薬類を使った消耗品で弾薬として提供可能」
◆井上哲士
「武器の提供について憲法上の判断はされたのか?」
中谷「武力の行使との一体化については、補給、輸送は現に戦闘が行われ
ていないところでは武器の提供は可能だと」
井上「武器弾薬の輸送は法律上、運んでならないものはないか?」
中谷「排除する規定はないが、いつどこで何を輸送するかについて、安全
輸送できるか評価し、実施の可否を判断する」
◆井上哲士
「非人道兵器だとして禁止が求められてきたクラスター爆弾や劣化ウラン
弾も輸送できることになる。米国の政策と保有と使用の状況は?」
岸田「劣化ウラン弾の保有状況は非公表。使用状況の詳細も承知していな
いが、米国は94年から95年のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、99年のコソ
ボ紛争で使用した。米国は環境及び健康に影響があると前提とすべきでな
いとの立場。クラスター爆弾も保有は非公表だが、米国は英国と共に01年
から02年にかけてアフガンで、03年にイラクで使用した」
◆井上哲士
「クラスター爆弾、劣化ウラン弾とも在日米軍施設に保管されている。米
国に依頼されれば日本は輸送するのか?」
中谷「劣化ウラン弾は健康等への影響について確定した結論はない。その
輸送の安全性は承知しておらず輸送できるかどうか確定的に申し上げられ
ない。クラスター弾は禁止条約締結国として事態に応じて慎重に判断する」
◆井上哲士
「空自の輸送を違憲と判じた名古屋高裁判決は「米国の搭載品はラッピン
グされ中身が判断できず武器弾薬を輸送する可能性を否定できない」と。
2つの非人道兵器の輸送は明確に「断る」と答弁すべきだ」
中谷「事態に応じて慎重に判断する」
井上「これだけ言っても「断る」と言えない。むしろ「使うのをやめろ」
と言うべきだ」
◆井上哲士
「クラスター爆弾禁止条約の署名式で当時の中曽根外相は「紛争終結後も
人々の憎しみを甦らせる兵器の使用を許してはならないと痛切に感じた」
と発言した。非人道兵器の輸送を断り「使うべきでない」と言うべきだ。
それができないで「国際平和への貢献」と言えるのか」
中谷「事態に応じて慎重に判断する」
◆井上哲士
「核兵器を搭載した空母を防護することも起こり得るのではないか?」
岸田「米国は核の所在を肯定も否定もしないNCND政策をとっている。
自衛隊に警護を要請することはそもそも想定されていない」
井上「法律上は除外されない。米国はF16をF35に置き換え、通常・核兵
器の運搬能力や前方展開能力を誇示している。広島出身の大臣として許さ
れるのか?」
岸田「米国は太平洋地域から前方配備の核を撤退させた。我が国に警護を
要請することは考えられない」
◆水野賢一(無ク)
「自衛隊法には国内では不当な武器使用の罰則がある。適用例は?」
中谷「昭和35年から平成25年度までの55年間で38件」
水野「海外での不当な武器使用は極めて危険なことだ。今まで海外活動で
把握している不当な武器使用例は?」
中谷「そうした例はない」
◆水野賢一
「国内で38件も不当な武器使用がある中、今後海外で「ない」と責任もっ
て言えるか?」
中谷「服務指導などを含めて、厳正な規律の保持に努めていく」
水野「海外活動は広がり、人数も武器使用の場面も増えるのに、罰則がな
いのは大きな抜け穴。検討すべきだ」
◆水野賢一
「集団的自衛権の行使例にハンガリー動乱やプラハの春がある。「密接な
関係にある他国」への武力攻撃とは外部の国によるものだけか、内戦・内
紛も含まれるか?」
岸田「我が国は内政干渉は行わない。国家以外の主体による組織的計画的
な武力行使も含むが、純粋に国内関係での実力行使は含まない」
◆吉田忠智(社民)
「他国軍の武器等防護について。武力攻撃に至らない侵害の場合も防衛大
臣は許可できるか?」
中谷「密接な協力関係にある国なら判断する」
吉田「米軍以外とは?」
中谷「あらかじめ特定しないが、情報収集や防衛等で密接な協力関係にあ
る国だ」
◆吉田忠智
「他国軍への武器等防護について、「防衛に資する活動」の定義や、使用
できる武器の範囲などが答弁を聞いても極めてあいまいで不明確だ。これ
では集団的自衛権の裏口入学だ」
◆山本太郎(生活)
「戦争犯罪に協力することがあり得るかとの質問に安倍総理は協力しない
と答弁した。違法な武力行使を行う国への支援、協力はないということで
いいか?」
岸田「当然の事だ」
山本「自衛隊員はジュネーブ諸条約等に違反する国を支援しないか?」
中谷「国連憲章違反に協力しない」
◆山本太郎
「経済的徴兵制について。経済同友会前代表幹事の前原金一氏は、日本学
生支援機構の評議会委員を務め、昨年5月の文科省検討会議で「奨学金返
済滞納者に防衛省のインターンシップを。防衛省は2年コースを作っても
いいと言っている」と発言している。前原金一氏に滞納者の情報を提供し
たか?」
文科省「滞納者属性調査の結果は公表したが個別延滞者の情報を前原氏に
提供した事はない」
中谷「企業の新人を2年間実習生派遣するプログラムを示した事はあるが、
奨学金滞納者についての検討をした事はない。予定もない」
◆山本太郎
「前原氏の参考人招致をすべきだ。昨年の閣議決定直後に自衛隊から高校
3年生に手紙が届き、ネットで「赤紙キター」と話題になった。情報は何
人分か。その情報を今後どうするのか?」
中谷「募集目的で使用した。何名分かは集計していない。情報は1年以内
に消去する」
山本「非常に不気味なのでやめてほしい。数を把握しないのはおかしい」
◆山本太郎
「下村大臣は奨学金一期生で奨学生の星だ。給付型奨学金は防衛省だけ。
利息が付くのはサラ金と同じだ。国が武富士になってどうする。無利子化
に力を貸してほしい」
下村「認識は同じで無利子化していく。平成29年から所得連動型を検討し
ている。年収300万以下は返還しなくていい」
———————————–
<特別版 第22号(7月29日の参院集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=371
<特別版 第21号(7月28日の参院集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=357
<特別版 第20号(7月27日の参院本会議質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=354
<特別版 第19号(7月17日の衆院強行採決抗議声明はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=359
<第18号以前のバックナンバーはこちらからご覧ください>
http://www.sjmk.org/?page_id=11
————————————
発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
http://www.sjmk.org/
ツイッター https://twitter.com/shumonken/
※ダイジェストはツイッターでも好評発信中です。ぜひフォローを。
◆発売中の『世界』8月号に当研究会の論考が掲載されています。
ぜひご一読ください。
http://www.sjmk.org/?p=300
◇『世界』7月号、6月号にも論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5549:150804〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。