本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(96)
- 2015年 8月 12日
- 評論・紹介・意見
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安保法案の強行採決
7月15日に、「安保法案」が強行採決されたが、この事実は、今後の日本に、大きな影響を与えるものと考えている。具体的には、「日本人の覚醒」に関して、大きなキッカケとなる可能性であり、この点については、今後の「2カ月間」が、きわめて大切な期間でもあるようだ。つまり、「本当に、この法案が可決されるのか?」ということであり、また、「内閣支持率が、今後、どのように推移するのか?」ということである。
別の言葉では、「日本人が、本当の危機意識を抱くのか?」ということだが、今までは、戦後の「史上最大の経済成長」に酔いしれて、ほとんど、危機感が存在しなかったようだ。つまり、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉により、一種の「褒め殺し」の状態となり、その結果として、「失われた20年間」に、「史上最大の堕落」を経験したものと考えている。
そのために、私自身としては、「何らかの事件」により、「史上最大の覚醒」を期待していたが、今までは、ほとんど、その兆候が見られなかったのである。つまり、「1950年代のアメリカ」のように、「バブルとその崩壊」を経験した後に、「世界の覇権国家」となった状況が、「2000年頃」から始まる可能性を期待していたのだった。しかし、実際には、「預金神話」に囚われて、「お金さえあれば、人生は安泰だ」と慢心する人々が、ほとんどの状況だったのである。
その結果として、現在では、「ジャパン・パッシング(避けられる日本)」から「ジャパン・ナッシング(何もない日本)」とまで、海外から揶揄されるような状況となっているのである。このように、現時点では、「座して死を待つ日本人」とも言える状況であり、また、「虎の子」とも言える「日本の預金」が、ハイパーインフレにより、実質的に「紙切れ」の状況となった時に、ほとんど全てを失ってしまう状況も想定されるのである。
しかし、今回の「安保法案」は、前述のとおりに、この点に対して、大きな刺激を与えた可能性があるものと考えている。具体的には、「政府は、アメリカに目を向けるだけで、国民のことを考慮していないのではないか?」と考える人が増えているようにも思われるのである。つまり、「明治維新」や「第二次世界大戦」の時のように、「大事件が起きた後に、日本人の意識が、大きく変化した」という事実のことだが、このような観点からは、これからの「2カ月間」に、「若者を含めた日本人が、どのように考え、どのように行動するのか?」が、大きな注目点でもあるようだ。(2015.7.16)
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パッシブ運用とアクティブ運用
現在、日本の株式市場では、「パッシブ運用」と「アクティブ運用」との議論が起きているが、このことは、「株式の投資方法において、どのような手法が、より効率的なのか?」を考えることでもあるようだ。具体的には、以前から、海外で、「ファンドマネージャーは、本当に必要なのか?」という疑問点が存在したが、実際には、「インデックス」だけに投資して「バイ・アンド・ホールド(買ったままでの長期保有)」の方が、「投資において、より有効ではないか?」という考え方が存在したのである。
つまり、「日経平均」の場合には、「225銘柄」に均等投資をするか、あるいは、「日経平均に連動した投信」を買って、「長期間、保有した方が、より大きな利益を上げられるのではないか?」という考え方のことである。そして、このような「パッシブ運用」については、「1980年代のアメリカ」において、たいへん注目された投資方法だったが、この原因としては、「株価が右肩上がりの状態」だった点が指摘できるようである。
しかし、「1990年以降の日本」においては、反対に、「ヘッジファンド」や「ロング・ショート」などのように、「どのような相場でも、ファンドマネージャーの手腕によって、利益を上げる投資方法」が好まれたのである。つまり、「株価の上昇局面」では、「パッシブ運用」が人気化し、一方で、「株価の下落局面」では、「アクティブ運用」という「ファンドマネージャーの手腕が必要な投資方法」が、好んで用いられる傾向があるものと考えている。
特に、現在の日本では、「公的年金」などが、大量に、株式市場に資金を移動させており、この時には、「パッシブ運用」が好まれる傾向が存在するようである。つまり、「株価が下がったから、運用しているファンドが値下がりしても、仕方がない」というような「言い訳」が付きやすい事が、理由の一つでもあるようだが、現在の相場は、このような「サラリーマン的ファンドマネージャー」には、ぴったり合っているようである。
そして、「30年程前のアメリカ」においても、現在と似たような相場が発生したが、この点については、不思議な「30年サイクル」の存在に行き着くようである。具体的には、現在の「日本」が、30年程前の「アメリカ」と同様の状況であり、また、現在の「中国」が、30年ほど前の「日本」と、似たような状況のことである。そして、当時を思い起こすと、我々日本人も、現在の中国人と同様に、海外で、爆買いをしていたが、はたして、当時の我々の態度は、海外の人々に、どのように映っていたのだろうか?(2015.7.17)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion5570:150812〕
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