謹賀新年! 2011年を、国民にとって「政権交代してよかった」と実感できる年に!
- 2011年 1月 1日
- 時代をみる
- 中国の経済成長加藤哲郎民主党政権
2011.1.1 クリスマスから、年の瀬ぎりぎりまで、北京・上海と中国を駆け足で見てきました。ほぼ毎年見ているのですが、その変化の速さは、尋常ではありません。オリンピックを終えた北京は、不況知らずです。1964年東京オリンピック、1988年ソウル・オリンピックの翌年は、公共工事や高層ホテル建設が一息ついて、落ち込むのが常だったのに。自動車の数と渋滞には悩まされました。自動車を買ってもナンバープレートが手に入らず、連日朝から並んで運転を待っているとか。高層ビルが林立し、胡同(フートン)の面影は隅に追いやられています。大卒でも就職できない「蟻族」の若者たちは、高層ビル地下の窓のない部屋に2段ベットで集住し、「ネズミ族」と呼ばれているとか。もっとも高層住宅は郊外にどんどん延びて、地下鉄工事も突貫で進んでいますから、また来年は別の顔を見せてくれるでしょう。
それでも、どことなく垢抜けない北京に比べ、万国博覧会を終えたばかりの上海の洗練には、驚きました。もう東京以上の超近代都市、アジアのグローバル拠点というべきでしょう。南京路はずれの和平飯店が改装を終えて高級ホテルとして再生し、ガーデン・ブリッジも、通れるようになっていました。街全体がファッショナブルで綺麗になり、河向こうの浦東の開発はなお進行中で、アジアの金融拠点、分厚い中流階級の形成を、目に見えるかたちで示しています。幅広い道路のまわりもしっかり清掃され、日本車や韓国車もありますが、ドイツ車と国産車の新車が目立ちます。かつて見た無灯自転車の大群は、もはやみられません。かつては欧米人客の多かった名門国際飯店のロビーには、背広にネクタイの中国人客に会いに、現地で仕事をしているらしい欧米人が訪ねてきて、英語と中国語が乱れ飛びます。チャンネルリストにはあるNHK衛星TVが映らないのは、この間の深刻な日中摩擦を反映したものかと思ったら、CNN等は映りますから、どうやら激減した日本人観光客を相手にしないだけのようです。朗報は、3年前にはホテルで映らなかった本「ネチズンカレッジ」が、無料の国際ホテル・ランで、ちゃんと映ったこと。別に10月1日更新で「尖閣列島は本当に「領土問題」でない?」と書いて再評価されたわけではなく、今春中国の友人から本サイトの「復活」を聞いてましたから、万博前の検閲基準改定のさいに、トップページから入れるようになったのでしょう。ただし、私が3年前にたぶんこれで検閲を受け遮断されたのだろうと判断した1950年毛沢東暗殺未遂事件についてのページは、日本語文は見ることができますが、中国語文等の載った写真は開きません。you tubeが全然見られないのも、新嗜好でしょう。3年前に私のサイトと共に検閲され遮断されていた「世に倦む日々」さんサイト、有田芳夫さん「酔醒漫録」は、ホテルで試した限りでは、依然アクセスできない状態でした。
2010年統計では、中国資本主義のGDPは、確実に日本を追い越し、世界第二位になります。北京・上海を見ただけでも、またそこで多くの友人たちから得た地方の話でも、まだまだ成長は続きそうです。都市と農村の不均衡、低賃金労働者の山猫スト、農民の土地闘争、急速な大学生増加とそれに見合った大卒職場がないミスマッチによる高学歴ワーキングプア問題、なお目に付く環境問題など矛盾は山積していますが、ちょうど高度成長期の日本が、公害や過労死・福祉貧困を後回しにして、「3種の神器(テレビ、洗濯機、冷蔵庫)」から「3C(カラーTV、クーラー、マイカー)への消費市場拡大で自民党長期政権を下支えしたように、政治の民主化は、簡単ではないでしょう。酒場で話せば、共産党独裁やノーベル平和賞も話題になります。ウィキリークスを待つまでもなく、インターネットを通じて、情報は溢れています。しかし、ずっと貧しく暮らしてきた人々が、ようやく社会的上昇のチャンスを得て、自分自身の力で良い生活と家庭を持てるようになってきたことが、政治体制を支えています。むしろ「社会主義」としての建国から大躍進運動、文化大革命の時代、共産党員の革命戦士や貧農・職工以外の人々は、親が企業家や小地主・小商店主であっただけで「出自階級」ゆえに底辺におかれ、知識人なら、その知識と学歴ゆえに「ブルジョア的」と迫害され、時には生命を落としてきましたから、改革開放以後の中国は、民衆のエネルギーを文革とは逆の方向に解放し、なお解放しつつある面があります。もともと地球人口の20%を占める中国が、いま7%ほどのGDPシェアを得て、世界第2の経済大国になったのは、19世紀以前も長く地球の富の20%程度を産み出していましたから、当たり前のことです。地球人口わずか2%の日本が、15%の富を作ったバブル経済期こそ、文明史的には例外でした。そして、もちろん20世紀に過大な役割を引き受けたアメリカの衰退も、中国に続き躍進するインドも、いまグローバルな宇宙船地球号のなかで、然るべき地位を占めつつあるということでしょう。
それにしても、2010年の日本政治の混迷は、地球的規模でのナチュラルな国力衰退に輪をかけて、存在感をなくしています。今回の中国旅行も、もともと11月に予定されていた日中文化交流の会議で、民主党政権の外交無策に翻弄されて、ようやく1か月後に実現したものです。2009年の「政権交代」が希望を抱かせたが故に、国民の失望、支持率低下は深刻です。4月の統一地方選挙まで待たずとも、政局含みの新年です。民主党のなすべき事は、ただひとつ、年末更新でも述べたように、「国民生活が第一」の初心に戻り、内政・外交の基本を再構築することです。若者に仕事を、働くものに安定した生活を、老人に安心を、この基軸点が曖昧になり動揺したままで、沖縄の普天間基地移転では県民の声より米国の要求を優先し、自民党政権でさえできなかった安全保障政策の転換を、「新防衛大綱」の策定で進めています。民主党政権は、国民への裏切りの1年でした。中国で外交問題について聞くと、日本の政治が不安定なので、重要な交渉・決定ができる相手ではない、問題は山積だが棚上げし、中国側としては様子見せざるをえない、というのです。もちろん、その間にもアメリカやヨーロッパ諸国は中国と交渉し、BRICsもG20も、新たな国際秩序の再編に向かっています。朝鮮半島の緊張は最高度に高まっています。日本政治の現在の問題は、こうした国際環境への無策や外交政策での戦略欠如ではありません。それらももちろん大切ですが、政府が民心から離れ、政府の内部から自壊が始まっていることです。何よりも内政の基本を再構築し、「政権交代」の果実を国民が実感できるものにすることです。2011年が、民主党の「政権交代」の「復初」の年となるよう願います。
「加藤哲郎のネチズンカレッジ」から許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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