新しい年の初めに 2011年1月1日
- 2011年 1月 1日
- 評論・紹介・意見
- 醍醐 聡
皆様、よい新年をお迎えのことと存じます。新しい年が皆様にとりましてよい1年となりますよう、お祈りいたします。
私事ではありますが、昨年は退職して最初の年でした。5月には夫婦でポーランド(ワルシャワ・クラクフ)、ウィーンを回りました。クラクフ滞在中に出掛けたアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所跡で見聞したことは、これからの私に重い課題を突きつけました。電車とドナウ川の遊覧船を乗り継いで着いたメルク修道院の華麗な情景とその周辺に広がった葡萄畑をガイドさんの説明を聞きながら、のんびりと散策したのは懐かしい思い出です。
日頃は週1回(後期)の非常勤講師と週2回の小学生の登校見守り活動(緑のおじさん?)を続ける傍ら、近くの公共図書館、美術展、映画に出掛けるなど、自由な時間を持てるようになった有難さを実感しました。
このブログの方は更新が滞りがちだったにもかかわらず、根気よく(?)訪問をしていただきました方々に厚くお礼を申し上げます。大変、地味なブログですが開設5年目にして延べアクセス件数がどうにか25万を超えたところです。
ところで、昨年11~12月にかけて完成の時期が重なった原稿などがこの1~2月にかけて活字になる予定です。新銀行東京の経営分析に関する(インタビュー形式の)論稿が1つ、東京都の財政の現状分析と改革に向けた提言をまとめた論稿(分担執筆)が2つ、消費税に関する書評と論文が1つづつ、日本航空の整理解雇に関するインタビュー記事が1つです。どれも小論で本格的な論説というには程遠いものですが、目下の焦眉の問題に、多少とも自分が蓄えてきた知見を活かして見解を発信する機会が得られたことを有難く思っています。
中でも、消費税をテーマにした某書の書評を引き受けたのがきっかけで消費税について検討する中で、逆進性もさることながら、それにとどまらず、消費税の転嫁に大いなる虚構があることを悟ったのは重要な知見でした。世上、消費者から「預った」消費税を事業者が納税せず、「ネコばば」する「益税」が問題視されてきましたが、法令で事業者が消費税を消費者に転嫁することを権利あるいは義務として定めた条文はなく、価格形成の一つの要素として消費税が存在するに過ぎないというのが多数判例となっています。現に、昨年12月に中小企業庁から入手した、同庁が2002年に行った実態調査(回答事業者9,061者、回収率77.3%)でも、消費税相当分のほとんどを転嫁できていないと答えた事業者が売上階級2億円超の事業者では3.8%にとどまっているのに対して、売上階級1,000万円以下の事業者では46.1%に達しています。
この点で、消費税は買い手に全額転嫁されるものと想定して課税売上高に法定消費税率を乗じた金額から、仕入段階で負担した消費税を控除した金額を納付すべき消費税額として課税する現在の消費税制度は昨今のデフレ不況の折には、競争力の弱い中小の事業者に「損税」を生む構造的欠陥を孕んでいることを痛感させられました。
今年は混迷する政治の行方、さまざまな政策の実現に欠かせない財源問題と連なる消費税増税、法人税減税の動き、「掘り尽くされた」と言われる特別会計などの剰余金の所在と活用のあり方、都知事選を間近に控えた東京都の財政分析、NHKをはじめとするメディアの動向など、私の専攻分野との関わりを意識しながらも、それにとらわれず、関心が赴くままに日々の体験、それを通して考えたことを書き留めていきたいと思っています。どうか、よろしくお願いいたします。
飼主の腕枕で寝入ったウメ
ワルシャワの無名戦士の墓地前の広場を通りかかった時、偶然出会ったピウスツキ元帥(ポーランド独立に尽くした英雄とされている)追悼式典の人垣に近づく。
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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