アベノミクスとは何だったのか 16
- 2015年 8月 16日
- 交流の広場
- アベノミクス大野 和美
直前にみた賃銀や雇用の内実からして明らかなように、アベノミクスは破綻している。経済実態がさらにそれを裏付ける。鉱工業生産指数(内閣府)は、2010年=100とすると2015/5では97,1である。2010年は,リーマン・ショックからやっと回復の兆しが見え始めたころだ。それから5年を経て、2010年の基準値を超えたのは2013/12~2014/3の4ヶ月と2014/12の1ヶ月にすぎない。要するに、2014/4からの消費税引上げ以前の買い溜めに備えた増産と年末・年始需要目当ての一時的増産にすぎない。結局、アベノミクスが登場して2年半近く経た2015/5になっても日本の鉱工業生産は2010年を3%近く下回ったのである。安倍首相自らが世界中に喧伝し、暮らしに苦しむ国民に「この道しかない!」と選挙でも歌いあげていたアベノミクスは全く失敗していたのだ。総選挙のあった2014/12では、すでにその失敗・破綻は明らかであったのだから、国民を騙していたと言うほか無い。
このような生産活動の低迷は必然的に設備投資の停滞につながっている。全産業の設備投資は2012年に34,6兆円であったが、2014年には36,4兆円に止まる。2014/4からの消費税増を前にした駆込需要を当てにしたと思われる2013/10~2014/3の全産業設備投資は増加していたにもかかわらず,である。また、上記のように2012年~2024年間の全設備投資の増分は1,8兆円、増加率はおよそ5%。一方、この間の国内企業物価は5,1%(単純平均)。だから、この間の企業間取引での物価上昇を折り込むと実質の設備投資額は全く増えていないことが判る。だが、これを製造業設備投資に絞ると同時期間に12,7兆円から12,6兆円へと絶対額の減少が明らかになる。上記の企業物価の上昇を考慮すれば大幅な実質減である。これは、非製造業設備投資はこの間僅かながら増加したことを意味する。それには多様な事情が推測できる。短期的には、円安に伴う観光客増に依る小売り増やそれに備えた商業・観光業間連であり得る。また、中期的には2020年のオリンピック・パラリンピックの準備を含んでいるかも知れない。
しかし、これらはアベノミクスには想定されていない条件だ。オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まったのはアベノミクス登場以後であり、円安効果が期待されたのは輸出増であろう。ちなみに、円安で輸出が増えると考えるのは最早とんでもない錯覚である。
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