地方振興策としては最悪の愚策:プレミアム商品券
- 2015年 8月 22日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
安倍政権の選挙向け地方振興策(?)の一環である、毎度おなじみの商品券バラマキ策が、私の住む大阪の田舎でも大々的に実施され、一度目は予算限度額を満たさずにあえなく炎上したために、再度、売り出されることになり、自治会を通じてその売り出しパンフレットが届きました。
一冊10.000円で、12.000円分の買い物が出来る、と云う訳ですが、買い物が出来る店は、市内限定で、しかも商品券を使用出来る「登録店」限定なのです。 更に、使用期限があり、本年の12月31日までに使わなければ無効になります。
消費者側からすれば、「10.000円で、12.000円分の買い物が出来る」との論理は、如何にも単純で、買い物をする側の心理を理解していない(自分は買い物しない)政治家の論理丸出し、と思えます。 私ならば、そうは考えずに、そもそも商品券を買う予算の10.000円を節約することを考えます。 また、使用する場を限定された商品券で、商品が他の地域に存在する店よりも高価であれば意味はありません。
更に、10.000円分の買い物をネットで低価格で販売する店を探して発注すれば、2.000円以上を節約することも可能です。 今日では、10.000円も買い物すれば送料等は無料で発送してくれる店は何処にでもありますので、商品に依れば、遠隔地から買う方が安い場合も多いのです。 ネットで検索すれば、低価格の比較を専門にしたサイトも複数でありますし、ネットの仮想商店街サイトは、サイト内の価格比較も簡単に可能ですので、当該商品の価格比較が容易に可能です。 ものに依れば、外国からの個人輸入も選択肢に入れれば価格選択肢が更に広がります。
このように、現在の価格選択肢を豊富に持った消費者ならば、わざわざ、商品券を買う手間をかけずとも節約は出来るので、高々、10.000円の商品券を求めることはしないでしょうし、また、実際、私の住む田舎町では、一回目の売り出しは失敗したのです。
肝心要のプレミアム商品券の効果ですが、売り出した自治体側が効果を宣伝するのは当然として、実際にその効果があるのかどうかは可成り疑わしいのです。 第一、施策の経費が割高に過ぎます。 当該自治体の人件費等の事務費もそうですが、地域の登録店側も事務の手間がかかります。 効果があるとしても、それは一時的です。 地域の商店街も商品券に恒常的に依存は出来ないのです。
それに、商品券施策は、地方自治体が実施する施策であるにも拘わらず、公平に住民一般に施策の「恩恵」が行きわたること無く、手持ち資金に余裕のある者を結果的に優遇する不公平な「金持ち優遇策」に堕することになります。 此れは当り前の話です。 私の住む自治体の施策に関して言えば、10.000円の手持ち資金の余裕が有る者が得をすることになるからです。
ただし、一時的な効果、と割り切って、それならば、と地元への観光客誘致に使用したところで目論見どおりになった自治体もあるので、全てが無駄、とも言えません。 例えば鳥取県です。 同県では、4月1日、全国のコンビニで午前9時に販売を開始したところ、用意した1万4000枚がたった4分で売り切れた、とのことです。
「プレミアム商品券・宿泊券」、明暗分かれる…「2割しか売れない」自治体も
ただし、酷な云い方ですが、矢張りこの事例でも、また、その時期限りで一次的な観光客誘致に繋がっただけで、今後の効果は未知数と言える訳です。 観光で言えば、如何にしてリピーターの確保に繋げることが出来るか否か、が問われているのです。 商品券が売り切れたのみで、施策効果があった、とするのは単純に過ぎるでしょう。 売れたのみで言えば、商品券販売が好調すぎて販売時に混乱が生じたところもありますが、制度自体の成否は今後に懸かっている訳です。
私自身は、こうした無駄に過ぎる、地方振興とは無縁の駄策を何度も実施する無能には辟易としてしまいます。 安倍政権の公明党融和策で同党の主張を取り上げて実施するのでしょうが、如何にもバラマキに観えて、最早、バラマキにもならない駄策としか言えない代物です。 こうした公費と時間の無駄を重ねて地方が疲弊して行くのです。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5599:150822〕
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