「内閣打倒」が全面に - 安保法案反対の国会包囲行動 -
- 2015年 9月 16日
- 時代をみる
- 安保岩垂 弘
「安倍内閣は直ちに退陣」「安倍内閣の暴走止めよ」……轟音のようなシュプレヒコールが国会議事堂を包んだ。9月14日夜に行われた安保関連法案の廃案を求める国会包囲行動。包囲行動は「戦争法案廃案」と「安倍政権退陣」という二つのスローガンを掲げていたが、安倍政権が参院で審議中の同法案を今週中に可決、成立させる構えを見せ始めたことから、この日の国会包囲行動は、これまでにも増して「安倍内閣打倒」が全面に打ち出された感じだった。
今回の国会包囲行動を主催したのは、これまで国会に向けた行動を主導してきた「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」。行動開始は午後6時30分とされていたが、開始前から地下鉄などでやってきた参加者が続々とつめかけ、国会議事堂正門前の歩道をぎっしり埋めた。
正門前の車道は立ち入り禁止。車道には警察車両が並び、車道と歩道の境には鉄柵が設けられ、その内側に警察官が並ぶというものものしさ。「きょうは車道にデモ参加者を入れない」という警察当局の姿勢がうかがえた。
空が暗くなった午後6時を過ぎると、参加者はさらに刻々と増え、歩道では身動きできなくなった。前を向いて立ち尽くすほかなくなった。そのうち、あちこちから「病人も出ている。車道を開放しろ」という叫び声が上がり、車道に入ろうとする人々と、それを制止しようとする警察官と押し合いになった。やがて、制止線が、川の土手が怒濤で崩れるように消え、参加者の一団が車道に流れ込んだ。車道が人間の渦によって開放された一瞬だった。
車道と歩道を埋めた人々は、闇夜の下、照明で白く輝く国会議事堂に向かって色とりどりのペンライトを振りかざし、「戦争法案絶対反対」「強行採決絶対反対」「戦争反対」「憲法守れ」と叫び続けた。とともに、「安倍内閣は直ちに退陣」「安倍内閣の暴走止めよ」「安倍はやめろ」という安倍政権の退陣を求めるシュプレヒコールも次第に 回数を増し、内閣打倒の機運が安保関連法案に反対する人々の間で高まりつつあると感じさせた。
とりわけ印象的だったことは、参加者の大半が、組織的に動員された人でなく、ごく普通の市民だったことだ。高齢者、中高年、青年、学生、子ども連れのママさん、スマホを手からは離さない若い女性……。そこらで日常みかける老若男女である。今回はウイークデーの国会包囲行動だったこともあって、職場帰りに立ち寄ったと思われるサラリーマンらしき人々も目についた。
自分の思い思いのたけをブラカードに書いて掲げる人も多かった。そこには、市民の、せっぱつまった気持ちが溢れていた。
この青年はこのプラカードを国会議事堂に向けて掲げたままいつまでも立ち尽くしていた
それらを見ながら、私は、この朝、パソコンで見た朝日新聞デジタル版が伝えた全国世論調査の結果を思い出していた。それによると、同紙は9月12、13両日に全国世論調査を行ったが、それによると、安保関連法案について「賛成」は29%、「反対」は54%。今国会で成立させる必要が「ある」は20%、「ない」は68%。内閣支持率は36%(8月22、23両日の前回調査は38%)、不支持率は42%(同41%)で、第2次安倍内閣発足以降、最も低かった。
今国会での安保関連法案の成立に、なんと国民の7割近くが反対しているのだ。民意はすでに明白だ。なのに、自民党幹部は、8月30日に行われた国会包囲行動の人数について「たったこれっぽちか」と語ったと伝えられている。しかし、国会議事堂前を埋めた人たちは「国民の7割近くが法案に反対している」という民意を背負って集まってきた人たちなのだ。そうした冷厳な事実を無視すると、手ひどいしっぺ返しを受けることになるのではないか。
国会議事堂正門前の歩道の一角に設けられたステージでは、民主、共産、社民、生活の野党四党代表が「安保関連法案を廃案に追い込むために全力を尽くす」と決意を表明、作家の大江健三郎氏らのスピーチがあった。この日の参加者は4万5000人と主催者から発表された。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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