小泉純一郎元総理が吠える:「原発は安全、安い、そしてクリーン」=これ全部、ウソ、って、よくわかってるじゃん。でも、原発やめるには「(自民党とともにありながら)自民党を変えるのが一番早い」と言うのなら、早くそうしてよ
- 2016年 1月 2日
- 交流の広場
- 田中一郎
みなさまご承知の通り、『文藝春秋』(2016年1月号)に「小泉純一郎独白録」なるインタビュー記事が載りました。簡単にご紹介しておきます。みなさまも、『文藝春秋』(2016年1月号)を入手され、ご覧になってみるといいと思います。
●小泉純一郎独白録 特集 – 文藝春秋WEB
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/1750
私は、この小泉純一郎という人間の考え方や行動について、ほぼ100%「ノー」です。ただ、「原発は安全、安い、そしてクリーン」=これ全部、ウソ、だけは、その通りと申し上げておきましょう。また、このインタビュー記事の中では、若干、なるほどなるほど、と思うことも発言していますので、それもご紹介しておきます。
小泉純一郎といえば、道路公団民営化(の失敗)、アフガン戦争加担、続いてイラク戦争加担、有事立法制定、沖縄・辺野古基地建設決定、対米隷属色の強まり、地方分権改革のとん挫と「三位一体改革」「平成の市町村大合併」による地方の疲弊、竹中小泉構造改革と市場原理主義の跋扈による公的ファクターの私物化ややりたい放題規制緩和、その結果としての企業モラルの低下や格差拡大や貧困の蔓延、更にはライブドア・村上ファンドなどの性悪虚業の跋扈、郵政改革・民営化(の失敗)、バブル崩壊後の金融業界・ゼネコン業界の整理(の失敗)、北朝鮮への2度の訪問、靖国参拝と対中国・韓国関係の悪化、などなど、思いつくものだけでも、ロクでもないことの「てんこ盛り」です。思い出すだけでも吐き気がします。
しかし、人間にも1つくらいは「取柄」があるものだと、昔からよく言うではありませんか。それが、この小泉純一郎の場合には「脱原発」=というよりも、原発を粉飾しているさまざまなことは「全部ウソ」だと見抜き、そしてそれを、今でも自民党にありながら、日本社会に向かって発信し出したことです。えらいよ、なかなか。日本のいわゆる保守などと言われている連中は、そのほとんどが、ほんとに頭の悪い、先のことが見えない、要するにバカばっかりだけれど、そしてこの小泉純一郎もその例外とは言えない面が強いけれども、こと原発については、よく見抜いた・よく言った、ということです。自民党という政治勢力の中にいて、総理大臣や国会議員を引退した後とはいえ、これだけはっきりと「原発ダメだ」というのは、たいしたものだ。
ほめてつかわすよ。
が、しかしだ。この小泉純一郎の、その「ダメ原発」から抜けていく方法論=つまり「脱原発」方法論は、一言でいうと「(自民党とともにありながら)自民党を変えるのが一番早い」のだそうである。従ってか、にもかかわらずなのか、あるいは東京都知事選挙でこりたのか、息子の小泉進次郎への影響を恐れてか、いずれかはわからないが、今後選挙には口出ししないし、自分が政界に復帰することもない、と明言しています。
私からみますと、こういう「脱原発」って、たぶんダメなんですね。何故なら、「脱原発」というのは「脱原発レジーム」でなければだめで、原発にかかわるレジームを全体として解体しないと、「第二の原発」「第三の原発」が次々と現れてくるからです。例えば、その一つが、小泉純一郎の地元・横須賀の港に浮かぶアメリカの原子力空母ロナルドレーガンです(60万キロワット級の加圧水型原子炉2基分)。一国の首都ののど元に、その安全性も内部の事情も全く秘密にされたまま、原子炉が2基も港に停泊している状態、安全確認のための検査や点検すらも日本側は手を出せない、かようなものが東京湾に浮かんでいるのです。原発よりも危ないでしょう。しかし、小泉純一郎がこれに対して厳しく批判した・対処した・アメリカに申し入れした・政府に何とかしろと言った、などという話は聞いたことがありません。つまり、原発を日本のエネルギー源として大々的に使っていくのはダメだ、とは言うけれど、それ以外の「核利用」については、これはさにあらず、ということを言外に含んでいるのです。
「脱原発」の方法論から言っても、「原発レジーム」を残したまま、言い換えれば「自民党とともにありながら」「自民党を引き続き頑張れと応援しながら」、その「原発レジーム」の中で甘い汁を吸い続けている人間集団に「原発はやめろ」というわけですから、それじゃ、そのかわりに「コレを」というのがどうしても必要になって、その「コレを」というものが、「第二の原発」、「第三の原発」、になっていくのです。アメリカの核空母や核潜水艦だったり、ひょっとすると核融合だったりするかもしれませんし、宇宙開発やバイオテクノロジーに転換していくかもしれません。
また、全く合理性がない=つまり「全部ウソ」状態にある原発を、政治の力だけで強引に引きずってでも続けていく政治と、その政治を牛耳る自民党を、それこそ「ぶっ壊さないでいて」どうするのでしょうか? 原発を止められるはずもないと思います。ぶっ壊すためには、政治に口を出し、選挙で「原発やるぞ」と言っている国会議員どもを、自民も民主もその他も、ぜーんぶ震え上がるくらいに落選させていかなければ、事は実現しないでしょう。2005年の郵政選挙でやったみたいに、です。だったら「選挙には口出さない」では話になりませんね。再生可能エネルギーを推進しましょう、なんてきれいごとでは、原発・原子力は止まらないのです。それで止まるくらいなら、とうの昔に止まっているでしょう。原発推進には何の権限もない東京都知事、その選挙に出てくる必要もなかったにもかかわらず、しょしょり出てきて第3位にとどまり、そのあとは、肝心の滋賀県知事選挙や福島県知事選挙などでは「知らぬ存ぜぬ」を決め込んでいる。こんな態度の男に、およそ「まともな脱原発」はできないでしょう。
が、しかしです。「原発、これ全部ウソ」は、その通り。それを自民党のど真ん中にいる(?? ど真ん中ではなくて、総理大臣や国会議員を引退した今では、かなり端っこかもしれません)小泉純一郎が日本社会に向かって発信していく意味は大きいでしょう。ですから、大いにおやりいただきたい、ということです。応援はしませんし、一緒に何かをするということもないでしょう。そもそも小泉純一郎自身がそれを望んでいないので、腰を低くして、ニコニコ、手もみしながら近づいても、そんなものは小泉純一郎の考えや行動には影響を及ぼさないでしょう。事実、先般の都知事選挙の時にも、細川選対から「余計なお世話」扱いされていたではないですか。「脱原発・反原発の左翼諸君・左派市民諸君、私にかまうな」と小泉純一郎は思っているのです。好きにさせておけばいい。
ところで、このインタビューの中の小泉純一郎発言は、いくつか原発に関係して、あるいは関係せずして、興味深い箇所がいくつかあります。この記事に目を通される時には、そういう個所にも注意されるといいと思います。私からは次の個所をご紹介しておきます。
(一部抜粋)
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(中略)菅直人さんが総理時代、「原発に依存しない社会」を掲げて次期総選挙の争
点化にも言及しましたが、民主党内からの「菅おろし」が止まりませんでした。総理
が宣言しても原発ゼロが進むとは限らないと思います。
小泉:それは人から言われた程度で信念がないからだよ。「やればできる」という確
信を持つてなかったんだ。郵政民営化なんか全政党反対だった。原発ゼロみたいに国
民の支持ないよ。要は総理の判断力、洞察力の問題だ。今だって、安倍総理が原発ゼ
ロやるって決断すれば、野党だって自民党だって経産省だって反対できませんよ。国
民の六、七割もついてくる。こんなチャンスないんだ。
(中略)小沢さんは来夏の参院選に向け、野党共闘を仕掛けていますが、自民党の対
抗軸となりえますか。
小泉:自分の党があんな小さくなる前にやらなきゃ。脱原発にしても民主党政権時代
にやらないと駄目だ。これからできる新党も全部壊れるでしょう。駄目だよ、野党だ
けでいくらやったって。自民党議員が出て新党を作らないと伸びないよ。
(中略)安保法制の審議中、国会前で反対デモが連日行われましたが、結局法案は成
立しました。原発ゼロ運動を盛り上げても自民党が動かなければ変わりません。無力
感はありませんか。
小泉:いや、全然感じないよ。俺は全然感じないね。いつかは来ると思うんだ。時間
かければ、わかってくるよ。自民党が変われば全部変わっちゃうんだから、自民党を
変えるのが一番早いんだ。俺も自民党を出なかったから郵政民営化ができた。原発ゼ
ロもそう。俺が言ったからみんなピックりした。自民党は公約を「原発をできるだけ
減らす」から「できるだけ維持する」 に平気で変えちゃった。今は経産省の天下なん
だ。自然エネルギーも抑えている。露骨だよ。目先の利益を与えれば反対はなくな
る、原発をやっている限り自分たちは大丈夫だと思い込んで抵抗している。
(中略)でも、困るよ。再稼働しなければならないし、東電旧経営陣の(勝俣恒久元
東電会長ら三人が強制起訴された)刑事裁判も始まるし、四月には電カの自由競争が
始まって自然エネルギーが増えてくるでしょう。原発がいかに高くつくか、カネもか
かるのか、推進論者の言うことがウソだっていうのがどんどんわかってくる。
(中略)安倍総理の総裁任期は一八年九月まで。原発ゼロを掲げそうな次のリーダー
は今の自民党にいますか。
小泉:いない。
いつ自民党に現れると思いますか。
小泉:それはわからないな。
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小泉純一郎にすがって「脱原発」・・・・・そんなことは笑止千万です。
私たちは私たちでしっかりやっていきましょう。
彼らが一緒にやろうというなら一緒にやればいいし、一緒にしたくないのなら、無理に一緒にしなくていい。
でも「脱原発」の気持ち・考えは、共通しているところがあるね、とは言いましょう
そして、脱原発以外の小泉純一郎に対しては、少なくとも私たち「じゃりんこ」市民は、遠慮なく批判させていただく。
この『文藝春秋』のインタビュー記事の中にも、そんな批判に値すべき「ゴタク」のような発言がたっぷり入っていますから、そんなものは、傾聴にも値しませんよ、とね
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