「アベノミクス」経済学者の平和歌曲集
- 2016年 1月 14日
- 評論・紹介・意見
- 岩田昌征
1月7日(木)夕刻、銀座山野楽器本店で伊藤誠(東大名誉教授)氏にばったり出会った。氏は端唄を趣味とすると聞いていたので、おもわず「端唄のCDでもさがしに?」と話しかけて、「23日 五味先生の研究会、先生の報告を楽しみにしています。」と別れた。その時、ふと横を見ると、浜田宏一作品集『平和の鳩』、「国際的経済学者の作曲家デビュー」なる宣伝広告が目に入った。浜田宏一(イェール大学名誉教授)氏とは二回ほどある研究会で話しをかわしたことがある。作曲もしていたとは全くびっくりした。
CD『平和の鳩』には、氏が小学校時代から創りつづけて来た小品が18曲収録されている。氏が小学校5年生(昭和20年)の時出会った詩「平和の鳩」に作曲した歌がCDの題名として選ばれている。氏自身の解説によると、「・・・半紙の上に印刷されていた教科書にのっていた詩だったように覚えている。今から見ると、戦後にはこのような『積極的平和主義』?が文部省自身らによって教えられていたことはなつかしい。」
ここに「平和の鳩」の歌を紹介する。
ぼくら 日本のこどもらは
鳩だ 平和の鳩だ
世界の友よ 手をつなぎ
なかよく飛んで あそぼうよ
あかるい世界の空飛んで
平和の歌をうたおうよ
音感のにぶい私にはメロディーを云々する資格はない。素直で伸び伸びとした気持になれる調べである。
安倍内閣官房参与、いわゆる「アベノミクス」の理論的背骨、ケインズ経済学者が何となくいくさ世のすきま風ただよう今日に、70年昔の初心を想い起させてくれる歌曲集を出した。大平の江戸端唄を好むマルクス経済学者と昭和後期の平和日本の調べをうたうケインズ経済学者、ともに八十歳翁が山野楽器本店において私の心の中で出会った。
ミッドウェー海戦の魔の20分間を戦後になってはじめて知って、くやしさで胸がどきどきした軍国幼年期。マルクス・エンゲルス・レーニン・スターリン・毛沢東に理想を夢見た社会主義少年期。チトー・カルデリの労働者自主管理社会主義建設の苦闘に共感しつつ学んだ青壮年期。そして20世紀最後の十年間、旧ユーゴスラビア多民族戦争になりふりかまわず干渉する、日本国憲法前文を書いた文明を生きる先進市民社会の実態に心底怒った壮年後期・老年期。このような私にも浜田少年の文化は原点を示してくれる。しかも、まぶしい。
平成28年1月14日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5857:160114〕
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