誰がシリアの平和と再建を阻んでいるのか? 援助物資を掠め取り飢える住民を人質にする「反政府勢力」
- 2016年 1月 21日
- 時代をみる
- 童子丸開
バルセロナの童子丸開です。
前回に続きシリアの話ですが、何よりも、人の心を通して世界を動かす虚構とその実態にご注目ください。欧州でも日本でも、虚構によって現実が作られ続けています。嘘を嘘として見つめる眼が、いま最も求められているように思われます。
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http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction2/Another_lie_of_Western_media_over_Syria_town.html
誰がシリアの平和と再建を阻んでいるのか?
援助物資を掠め取り飢える住民を人質にする「反政府勢力」
1週間ほど前に『シリア「包囲された町マダヤの飢餓」を巡る西側《嘘つきメディア報道》の実体』を書いたのだが、その後のマダヤについての情報を採り上げてみたい。今回翻訳(仮訳)したのは次のロシアRT記事である。
https://www.rt.com/news/329269-madaya-actors-bild-rt/
Red Cross disputes Bild claims starving Madaya residents are ‘pro-govt actors’(飢餓に悩むマダヤ住民を「親政府の俳優たち」だと難癖をつけるビルドに赤十字が反駁) Published time: 18 Jan, 2016 07:08Edited time: 18 Jan, 2016 11:45
支援物資が届けられたマダヤに行って支援の状況を直接に取材した外国ジャーナリストは、RTのスタッフだけだったようだ。西側メディアは、ショッキングな偽情報で「飢餓」を騒ぐだけ騒いでおき、その悲劇の責任をアサド政権になすりつけた挙句に、その支援の結果を見届けようとすらしない。そのうえで一部の三文メディアが浅はかで冷笑的な陰謀論を使って難癖をつける。こういったデマがまたソーシャルメディアを駆け巡って大手メディアのプロパガンダに利用されかねないのだ。
本当ならこの記事の内容をより深く理解するためには次のRT記事を合わせて読む必要があるのだが、残念ながら全て訳すだけの余裕が無い。見出しだけを和訳しておくので、英語の分かる人はぜひ本文をお読みいただきたい。
★ ‘Govt aid was sold off by traders’: RT reports from besieged Madaya (EXCLUSIVE) 12 Jan, 2016
【「政府の援助物資は売人によって売り払われる」:包囲されるマダヤからのRTレポート】
★ From Sarajevo to Madaya: Starvation as propaganda 12 Jan, 2016
【サラエボからマダヤまで:プロパガンダとしての飢餓】
★ ‘Starvation as a weapon is a war crime’: UN head blasts warring sides in Syria 14 Jan, 2016
【「武器としての飢餓は戦争犯罪だ」:国連事務総長が戦う双方を非難】
★ ‘West using Madaya, humanitarian crisis in Syria to undermine peace talks’ ? Russian dep envoy to UN 16 Jan, 2016
【「「西側は和平交渉をぶち壊すためにマダヤ、シリアの人道的危機を利用する」―ロシア国連大使】
また次はスプートニク・ニュースに掲載されたFinian Cunninghamのレポートの和訳である。
★ シリアの「真実」飢餓状態の欧米マスコミ(マスコミに載らない海外記事:2016年1月14日)
これらの一連の情報で述べられていることを簡単にまとめよう。マダヤと「飢餓」の偽情報については前回の記事を参照のこと。今回は食糧などの支援物資が何とか住民の手に渡った様子だ。しかしそれ以前でもシリア政府が住民に支援物資を送っているのだが、西側メディアによって「反政府勢力」と呼ばれるテロリストたちがそれを横取りして売人たちがどこかで売りさばいている。テロリストたちは飢餓に直面する住民たちには法外の値段で売り付け飢餓を促進させている。要するにこの者たちは盗賊・ならず者集団に他ならない。
シリアの平和と国土再建、そしてヨーロッパの「難民問題」の解決を阻んでいるのは、ISやアル・ヌスラなどのテロ集団だけではない。飢える住民たちはこれらのテロリスト(盗賊)たちの人質であり、逃げたくても逃げることができない。西側のメディアと政治勢力はこのならず者集団を「シリア反政府勢力」と手放しでほめそやし、彼らによって町に閉じ込められた住民の飢餓を反アサド・プロパガンダとして利用している。こうして西側のメディアと政治勢力こそが、大量の破壊と殺人を推し進めるテロリスト・ならず者集団の延命を図りシリア和平交渉をぶち壊す主役になっているのだ。これが彼らの「テロ戦争」の実態である。
シリアでは最初から大嘘が飛び交っていた(参照:『ねつ造されたシリアの宗派間戦争』、『シリアの化学兵器物語り:人道的大惨事を後押しした米=NATOの計画とは?』)。そもそも「アラブの春」自体がでっち上げと虚構と無視の産物だった。そしてそれは大量破壊・大量殺人と同時に、超大規模な「強制移住」を惹き起した。アメリカ、イスラエル、アラブ湾岸諸国と共にその虚構の戦争を推し進めたのがヨーロッパだったのだが、ヨーロッパはいま、自分のまいた種の実を刈り取ろうとしている。ヨーロッパ自体が破壊され作り変えられようとしているのだ。
「カネ・暴力・嘘」の三位一体は世界を終末に追いやるまでその歩みを止めないのだろうか。(参照:『現在進行中 2005年に予想されていた現在の欧州難民危機 』)
2016年1月20日 バルセロナにて 童子丸開
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【注記:原文記事にはビデオやツイッターの画像が多く使われているが、この翻訳では画像は扱わないので、原文の方で確認していただきたい。またツイッターではそれぞれの内容を簡単に記しておくので詳しくは日時のアドレスをクリックしてもらいたい。】
[原文: https://www.rt.com/news/329269-madaya-actors-bild-rt/]
飢餓に悩むマダヤ住民を「親政府の俳優たち」だと難癖をつけるビルドに赤十字が反駁
2016年1月18日7時8分、 編集2016年1月18日11時45分
【RTニュースビデオ】
ドイツのタブロイド紙ビルド(Bild)は、シリアの町マダヤの飢餓に悩む住民たちを「俳優」であるとして非難した。しかしRTの特派員は、栄養不足に悩む人々が政府の援助物資を売り払う反乱者たちについて語らざるを得なかったことを、一部のメディアが嫌っただけだと確信する。
先週、RTのムラド・ガズディエフは、包囲されるシリアの町マダヤに食糧を運ぶ赤十字と国連のトラック隊に同行した。その町は首都ダマスカスから北西約44kmのレバノン国境近くにある。
【RTツイッター:政府の援助物資が売人によって売り払われている 10:58 AM – 12 Jan 2016】
【RTツイッター:サラエボからマダヤまで:プロパガンダとしての飢餓 8:03 AM – 13 Jan 2016】
飢えにさいなまれる子供たちの映像が世界を騒然とさせたが、その母親たちによって語られる話は本当にショッキングである。
マダヤの市民たちはRTに次のように語った。シリア政府は援助物資を送ってくれたのだが、彼らがそれを手にすることは全く無かった。それが反乱者たちの手で差し押さえられたからだ。彼らは人道的援助をとんでもない高い値段で人々に売りつけた。米1kgが250ドルもするのだ。
RTによって映像にされた人々は、女性たち、子供たち、そしてほとんどが老人と病人である何人かの男たちだが、何の合意もなされていないためにマダヤを離れることは許されていなかった。それらの人々の全ては自分たちのカバンを持ち上げて町に戻るように強いられた。そしてその町には食べ物が無いのである。
【RTツイッター:西側は和平交渉をぶち壊すためにマダヤを利用 10:40 AM – 16 Jan 2016】
しかし彼らの言葉は、ドイツのビルド(Bild)のような一部のメディア機関のご機嫌を損ねた。ビルドは、支援組織とRTをバシャール・アサド大統領の陰謀を担うものとして 非難した。
このドイツのタブロイド紙は、マダヤから逃れようとしている人々をアサド政権の「体制派の俳優」であると非難した。
ビルドの記者ジュリアン・レプケ(Julian Röpcke)は、赤十字と国連がアサド政権に「屈服」し、RTが「皮肉なプロパガンダ・ショー」を撮影したと難癖を付けた。
彼は更に進んで、赤十字と国連の世界食糧計画が「道化役」の「エキストラ」を演じたと非難した。レプケは、救援隊員たちがアサドの圧力とかいうものに屈し、「さもなきゃシリアに近寄らせないぞ」と脅されて、演出された写真を発表するように強制されたのかもしれない、と自分の推測を述べた。
【RTツイッター:飢餓を武器として用いる戦争犯罪。 10:07 AM – 15 Jan 2016】
このドイツを拠点とするジャーナリストは、マダヤの医師の資料と救援隊員から得た資料を使って自分の断定に立ち戻り、写真とRTのビデオに映るマダヤから逃れてきた約300人の男と女と子供が以前にこの町にいたはずがないと主張した。レプケは、その人々を1月11日の朝にヘズボラーによってこの町の検問所に連れてこられたものだと言い張った。
このジャーナリストは、国連と国際赤十字のコメントに対する自分の難癖の根拠として、そもそも「この時点では」マダヤから誰も避難していなかったことをこの両者とも確認している点を取り上げた。
RTはビルドの情報源であるマダヤ地域の病院のカーレド・モハメド(Khaled Mohammed)医師に電話をかけた。彼はその「体制派の俳優たち」がマダヤを去ることを許されていないが中立地帯までは来ることができたと断言した。
「彼らは検問所で追い返されました」とモハメドはRTに語った。
マダヤを訪れた赤十字の職員は、その包囲された町での人道的な危機に疑問を挟まない。
「我々は多くの苦痛を目にしました。我々は人々の悲惨さを目にしました。我々は避難できるのを待っている群衆を目にしました。我々は援助物資が配給されるのを待っている群衆を目にしました。」シリアの赤十字報道官であるパウエル・クリジシエク(Pawel Krzysiek)はこのようにRTに語った。
レプケは実際には一度もシリアに来たことがなく、基本的に反乱側のプロパガンダを集めるツイッターを資料として使う。彼はイスラム主義者たちがシリアの最良の選択だと信じている。
【ジュリアン・レプケのツイッター:イスラム主義反乱グループが最良 10:05 PM – 2 Sep 2015】
この肘掛椅子に座る評論家は、それらの住民たちを「独裁者アサドが操る支配的なバース党のファミリーメンバー」だとして非難するのだが、その人々の欠け落ちた歯や明らかな栄養不足を、じかに見たことがないのだ。
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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