本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(114)
- 2016年 3月 2日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
日銀のマイナス金利
「1月29日」に、「日銀のマイナス金利」が発表されたが、この点には、正確な理解が必要であり、かつ、今後の展開にも、大きな注意を払う必要性があるものと考えている。具体的には、「当座預金」に関する「三種類の区分」であり、実際には、「-0.1%の政策金利残高」、「0%のマクロ加算残高」、そして、「0.1%の基礎残高」のことである。つまり、今までは、「0%の準備預金」と「0.1%の付利残高」とに分けられていたのだが、今後は、この点に、いろいろな違いが出てくる決定がなされたのである。
その結果として、今後は、「資金の流れ」や「日銀のバランスシート内容」について、大きな変化が起こるものと予想されるが、最も重要な点は、「約259兆円」にまで達した「当座預金の残高」が、「これから、どのように変化するのか?」ということである。つまり、「マイナス金利」というのは、ご存じのとおりに、「お金を預けると、損をする状況」を意味しており、「民間の金融機関」にとっては、「株主に対して、説明が付かない預金」とも思われるからである。
つまり、今後は、「約10兆円の残高」に対して「-0.1%のマイナス金利」が適用されることが想定されているが、この時の注目点は、「民間の金融機関が、本当に、損をしてまで預金を預けるのか?」ということである。また、より大きな注目点は、「0%のマクロ加算残高」に関して、「どれほどの資金が集まるのか?」ということだが、今までは、「0.1%の金利」が付くために、「当座預金の大膨張」が可能だったのである。
換言すると、過去数年間の「日銀」が行ってきたことは、「国債を買付けるために、民間銀行から、当座預金という形で借金をしていた」という状況だったが、今後は、「当座預金残高の膨張」が難しくなることも予想されるのである。その結果として、「国債の買い増し」が難しくなる可能性が存在するとともに、「当座預金の残高」が減少する可能性も出て来たのである。
そのために、これから想定される事態は、「紙幣の増刷」であり、また、「国債価格の暴落」だと考えているが、実際には、このことが、今までに申し上げてきた、本当の「インフレ(通貨価値の下落)」を意味するのである。別の言葉では、「通貨の堕落」が、多くの人々に、はっきりと見え始める状況のことだが、この点については、「ケインズ」が述べていたとおりに、「100万人に一人も気付かないうちに進行した」という展開となっており、しかも、現在では、「すでに、手遅れになった状態」とも言えるようである。(2016.2.1)
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急減する「FRBの自己資本」
「1月21日」に発表された「米国FRBのバランスシート」において、「自己資本の総額が急速に減少している事実」が、海外で、投資家の注目を集めているようだ。具体的には、「約395億ドル(約4.6兆円)」にまで、一挙に、「約176億ドル(約2兆円)」も残高が減っているが、その結果として、現在の「自己資本比率」は、「約395億ドル(約4.6兆円)÷約4.45兆ドル(約525兆円)≒0.89%」というように、きわめて危機的な状況に陥っているのである。
そして、この理由として考えられることは、「資産」の部分において、「何らかの損失」が発生した可能性でもあるようだが、今後、更なる減少が継続すると、「FRBが、債務超過に陥る事態」も想定されるようである。つまり、実質的な「破綻」のことだが、ご存じのとおりに、「民間の金融機関」については、「BIS規制」が存在し、「国際業務を行うためには、一定の、自己資本比率を満たす必要性がある」と決められているのである。
しかし、「中央銀行」の場合には、この規制が当てはまらないだけではなく、現在、あまりにも無謀な「バランスシートの大膨張」が、世界的に発生しているのである。具体的には、「日本」において、「日銀のバランスシートの総額が、約400兆円にまで大膨張した」というように、「GDPの約8割」の規模にまで、異常な大膨張を、急速に実施しているのである。
そして、この時に思い出されるのが、「1998年のLTCM事件」でもあるが、実際には、「ノーベル経済学賞」を受賞した「二人のエコノミスト」が、自分たちの理論を実証するために、投資会社を設立し、実際に、運用を始めたのだった。しかし、結果としては、ご存じのとおりに、「あっという間に、破たんした」という状況だったが、この原因として挙げられたのが、過剰な「レバレッジ(テコの効果)」だったのである。
具体的には、「自己資本に対して、何十倍、何百倍の規模にまで、投資金額を増やした」という状況のことだが、この時に発生したことは、「資産が、わずかに目減りしただけで、自己資本が、吹っ飛んでしまった」という展開だった。そして、現在では、世界各国の中央銀行が、同様の実験を繰り返しているようだが、確かに、「国家」や「中央銀行」には、「紙幣の増刷によって生き永らえる」という「最後の手段」が存在するために、決して、破産することはないものと思われるが、今後、どれほどの「副作用」が発生するのかは、人類史上、未知の状況とも言えるようである。(2016.2.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion5938:160302〕
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