日本を戦争国家にはさせない
- 2016年 3月 30日
- 時代をみる
- 坂井定雄安保
安倍政権は昨29日、国民多数が反対したまま、安全保障関連法を施行した。大多数の憲法学者が憲法に違反するとした集団的自衛権を容認し、日本が自民党政権を含め戦後70年以上堅持してきた専守防衛政策を放棄し、海外での自衛隊の武力行使と米軍など他国軍の支援を可能にする戦争法制だ。国会では、民主党、共産党はじめ野党勢力が「集団的自衛権の行使容認は憲法違反」と一致し、安保法廃止法案を提出しているが、安倍政権と自民党は同法案の国会審議さえしていない。
安倍政権は、国連平和維持軍(PKO)での駆けつけ警護など、国民が反対しそうもない事例を宣伝するが、現実に起こる可能性が十分ある戦争参加は、日本政府が“日本の存立が脅かされる明白な危険がある”と主張する「存立危機事態」での自衛隊の出動だ。日本への直接的な攻撃、あるいはその可能性がある事態ではなくても、政府が「存立危機事態」とするだけで可能になる。日米安保条約に基づく集団的自衛権行使として、世界のどこでも米国の要請にしたがって、自衛隊を派遣することが可能になる。当然拒否できるはずだが、安倍政権のような政権なら、唯々諾々と受け入れるに違いない。
米国が主導した1979年の湾岸戦争、2001年のアフガン戦争、2003年のイラク戦争。米国は日本の軍事的貢献、戦争資金供出を要求した。日本は湾岸戦争では、資金供出と停戦後のペルシャ湾での機雷除去を行った。アフガン戦争では、資金供出と米国はじめ交戦国海軍への給油支援を行い続けた。イラク戦争ではブッシュ政権は、国連安保理の決議のないまま、同盟国、有志国の参加を募ってイラクへの戦争を行った。この戦争が、ISはじめイスラム過激派を生み、育て、現在の悲惨で、多くの人々を苦しめている中東をもたらした。この戦争でも米国は「ブーツ・オンザ・グラウンド」(軍隊を現地に出せ)と強い圧力を日本政府にかけた。自民党政権は国会で「イラク復興支援特別措置法」を成立させ、米軍への空輸支援とともに「非戦闘地域」としたムサンナ州に自衛隊5,500人を、2年半にわたって派遣した。
米国政府は、今回の安全保障関連法の成立・施行を歓迎した。湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争のような米国の戦争で、米国がもっと露骨に自衛隊の派遣、戦争参加を要求してくるのは必至だ。安倍政権のような自民党政権ならば「日本の存立にかかわる原油供給が脅かされる」などとして、自衛隊を派遣するに違いない。
ペルシャ湾に限らない。現実に日本と中東、欧州間の海運で最も重要なホルムズ海峡は、一方の中東側イエメンでは激しい内戦が続き、米軍と米情報機関がかかわっている。もう一方のアフリカ側はソマリアで内戦状態が続き、ホルムズ海峡へは海賊が出現、海賊対処活動の看板で海上自衛隊基地が築かれた。艦船と航空機の部隊が派遣され、交代制とはいえ各国派遣部隊の合同司令官まで務めている。
さらに危険なことは、米国の政権次第で、日本への軍事貢献の要求がもっと強く、露骨になる可能性が十分あることだ。もし次期政権が共和党のトランプ政権なったら、どうなるか。安倍政権が施行を強行した安保法制は、今後の米政権の危険な要求の受け皿を用意したのである。こんな危険な安保法制を廃止するため、戦い続けよう。
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