【報告】4月1日、防衛装備庁を呼んでの議員レク(NAJAT)
- 2016年 4月 14日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
先日4月1日(2年前に「武器輸出三原則」が撤廃された日)に武器輸出反
対ネットワークが行った防衛装備庁を呼んでの議員レクのご報告です。質
問は多岐に及んでおり、報告も長文となりましたが、ぜひお時間のある時
に落ち着いてご一読ください。
回答拒否も多かったものの、新発見や見逃せない問題回答もありました。
例えば、潜水艦の受注に向けた活動経費は豪州国防省持ちであること。ま
た、F35ステルス戦闘機について、現在は国内向けの機体組み立てと部品製
造に留まっているものの、「意義を見いだせれば」他国向けの部品製造に
踏み出す意思はあると表明したことなどです。
さらに、装備庁が事後回答で改めて、「現在、防衛装備移転三原則でいう
「紛争当事国」は基本的に存在しないと考えられる」と述べたことは、決
して見過ごすことはできません。中東を中心に、これほど多くの人々が殺
傷され、難民となることを強いられている世界に「紛争当事国」が存在し
ないのなら、確かに日本の武器輸出が「紛争を助長する」ことはないので
しょう。しかし、それはフィクションの世界でしかありません。
今後、さらに質問主意書や国会質問などの形も追求していきたいと考えて
います。また、防衛装備庁を相手とする政府交渉の設定も検討していきます。
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【報告】 防衛装備庁との議員レクチャー
2016年4月1日(金)、15時~16時、阿部知子衆議院議員事務所
市民側出席者:4人および阿部知子議員事務所担当秘書
防衛装備庁側出席者:計12人
島 晴子 総括班長(装備政策部国際装備課)
鍋田竜光 事業監理官補佐(プロジェクト管理部事業監理官(艦船担当)付)
大隈 護 事業監理官補佐(プロジェクト管理部事業監理官(航空機担当)付)
田原章吾 事業計画調整補佐官(プロジェクト管理部事業監理官(航空機担当)付)
土田幸也 事業管理官補佐(プロジェクト管理部事業監理官(艦船担当)付)
吉尾秀治 情報発信班長(装備政策部装備政策課)
川崎 泰 総括班長(装備政策部装備政策課)
佐藤清史 上席監察監理官(長官官房監察監査・評価官付)
小野陽市 上席監察監査補佐官(長官官房監察監査・評価官付)
根本優樹 防衛部員(防衛省防衛政策局訓練課)
井川真一 防衛部員(防衛省防衛政策局国際政策課)
杉原逸樹 防衛部員(防衛省防衛政策局訓練課)
【防衛装備庁に対する質問項目と回答】
<オーストラリアへの潜水艦輸出問題>
1. 潜水艦受注に向けたオーストラリア政府との間の今後の具体的な手続
きはどうなっているのか。
(鍋田)昨年11月末に検討結果を提出。現在豪州政府が検討中。本年中に
決定すると表明。
[注]8月以降にも決定されるとの報道あり。
2. 日本は官民連合として受注に向けて活動しているが、関与している防
衛装備庁職員の氏名、役職名および担当している具体的な役割を明らかに
されたい。
(鍋田)渡辺秀明長官、石川正樹長官官房審議官、池松英浩装備政策部国
際装備課長、三島茂徳(しげのり)プロジェクト管理部事業監理官艦船担当
3. オーストラリア現地で行った説明会など今までのすべての活動、およ
び今後行う予定の活動を明らかにされたい。
(鍋田)昨年8月~11月、アデレード、シドニー、メルボルン、ブリスベ
ン、パースにてインダストリー・ブリーフィングを行い、豪州企業向けの
説明を実施。11月に豪州潜水艦協会主催のカンファレンスに招待され説明。
今後については現時点で予定なし。
4. 潜水艦の受注に向けた活動に今までかかっている経費の総額と内訳、
および今後の見通しを明らかにされたい。
(鍋田)昨年6月、12月に交わした豪州との合意(石川正樹審議官、三村
亨経理装備局長(当時、現防衛審議官)が参加)で、検討作業にかかる経
費については豪州国防省がすべて負担するとした。現地説明会や渡航費な
ど日本政府の負担はなし。
5. そうりゅう型潜水艦「はくりゅう」が日豪共同軍事演習に参加するた
め、4月15日に海自潜水艦としてオーストラリアに初寄港すると報じられ
ている。この共同軍事演習の内容と経費の詳細を明らかにされたい。
(杉原:訓練課)潜水艦はくりゅう、護衛艦うみぎり、あさゆきがシドニ
ー周辺で共同訓練を実施。対潜訓練や通信訓練を行う。昨年11月の日豪
「2プラス2」で豪海空軍との共同訓練を強化すると確認。経費は教育訓練
費、燃料費から。個別に計上していないので具体的な数字はあげられない。
防衛省ホームページの公表資料(3月9日付、海上幕僚監部)にも載せてい
るが、4月15日に寄港して、4月26日に出航する予定。
6. 防衛装備移転三原則の運用指針では「安保協力関係がある国への救難
や輸送、警戒監視、掃海に関する装備の移転」と記されている。しかし、
潜水艦は地域の軍事バランスを変え、緊張をもたらしかねない、いわゆる
「戦略兵器」であり、警戒監視に留まらず先制攻撃さえ可能な兵器でもあ
る。潜水艦を輸出する法的根拠はどこにあるのか。
(島)今回は「共同開発・生産」の形で行う。防衛装備移転三原則の運用
指針に記載されている。
7. 政府は潜水艦輸出の目的として、日米豪の運用協力をあげている。も
し、日本が採用された場合、具体的な日米豪各国の運用協力の対象海域と
共同演習計画について、現状でどのように考えているのか。
(井川)現在、競争的評価プロセスの最中であり決定がなされていないの
で、運用協力の場所や協力方法は想定しているものはない。
8. 12隻分で総額4兆円を超えるビッグプロジェクトとされているが、大宮
英明三菱重工会長は「(長期にわたるため)会社の売り上げに寄与する部
分は大きくない」(3月3日、日経)と述べている。受注の暁に三菱重工と
川崎重工が得ることになるであろう収益の見積もりは。また、約4兆円の
明細概要とそれが支払われる先を明らかにされたい。
(鍋田)収益やコスト見積もりは提案内容に書いているが、豪州との合意
のもとで公表は差し控える。「4兆円」という見込みは豪州政府によるも
のだ。
9. 今回の潜水艦輸出(共同開発・生産)は、新たな「防衛装備移転三原
則」が仮に策定されていなくとも、野田民主党政権時代に行われた国際共
同開発の包括的例外化によって可能になるものか。
(島)今回の潜水艦案件は昔の基準によって判断したものではない。今回
の決定は 1.我が国と安全保障面での協力関係の一層の強化に資する。2.
我が国安全保障の観点から積極的意義。3.目的外使用や第三国移転に関し
て適正な管理が行われる。によって判断したもの。野田政権時の国際共同
開発の例外化と似かよっているが、基準の当てはめ直しはしていない。
10. 溶接技術をはじめとする最先端技術の流出防止についてどのような対
策をとるのか。
(装備庁)日豪間の防衛装備品協定、情報保護協定により適正な管理に基
づいて対応する。
11. 潜水艦から魚雷や対艦ミサイルを発射する先制攻撃訓練は今までいつ、
何回行われてきたか。また、発射の決定プロセスは具体的にどのようなも
のか。潜水艦の艦長が独自に発射命令を出せるのか、それとも首相、防衛
大臣の事前了解が必要なのか。
(杉原:訓練課)「先制攻撃」の意味が明らかでないが、訓練の時期や回
数は我が方の手の内をさらすことになるので回答は差し控える。発射の決
定プロセスは個々のケースに応じて異なるが、一般論として、首相や防衛
相が必要な行動等を命じる。この範囲の中で措置を講じる。自衛隊法によ
る防衛出動命令に基づいて行い、与えられた命令の範囲内で任務を遂行する。
12. 今回の輸出において、大気を取り込まなくとも長時間潜航できるAIP
エンジンではなく、リチウムイオン電池を採用する理由は何か。
(装備庁)技術情報を含むことであり、日豪合意に基づいて回答は差し控
える。
13. 3月1日付のロイター通信で、リチウムイオン電池に東芝製のものを採
用することを検討しているとの報道があった。これは事実か。
(井川)豪州政府がパートナー選定の手続き中であり、何ら決まっている
ものではない。
<その他>
14. 現在、日本政府は21ヵ国と武器輸出に関する意見交換をしていると報
じられている。その具体的な国名とそれぞれの進行状況、対象となってい
る武器、関与する軍需企業の一覧を示されたい。
(島)21ヵ国の根拠が不明だが、防衛装備移転三原則上、原則として目的
外使用、第三国移転に関する措置を義務付けるために協定を結ぶ必要があ
る。現在、協定を締結しているのは、米国(SM3を共同開発、三菱重工な
ど)、英国(空対空ミサイル、三菱電機)、豪州(潜水艦、三菱重工・川
崎重工)、インド(US2、新明和工業)、フランス(具体的案件なし)、
フィリピン(練習機、未決定)の6ヵ国。細部は相手国との関係があり差
し控える。イスラエルとは締結していない。他の国については展示会に参
加して話をしたりしている。
15. 堀地徹装備政策部長が武器輸出関連で今まで海外出張された記録をす
べて明らかにされたい。
(島)昨年11月2~5日にタイ出張。「ディフェンス&セキュリティ」展示
会に参加した。
16. F35ステルス戦闘機関連予算の「その他関連経費」には、ユーザー国
が世界規模で部品などを融通し合うシステム(ALGS)やF35の情報を米国
が一元管理する情報システム(ALIS)関連経費も含まれている。国際共同
開発に参加していない中で、これらはどのような法的根拠のもとに支出し
ているのか。
(大隈)ALGSはF35のユーザー国が融通しあうシステム。ALISは後方支援
情報システム。ALGSに参加して必要な時に部品供給や整備を行う。F35の
稼働率向上のために参加は必要。参加には国際共同開発への参加が要件で
はない。法的根拠は防衛省設置法第4条1項13号「所掌事務に係る装備品等
の調達、補給及び管理並びに役務の調達に関すること」。
17. F35は現在、国内向け機体のみの最終組み立て(三菱重工)、部品製
造(三菱電機)が行われている。国際共同開発に参入する見通しはどうな
っているのか。また、その障害となっている点は何か。
(大隈)米国、英国、オランダなど9ヵ国が2001年(平成13年)秋から本
格的に共同開発を開始。現在、開発の最終段階と初期の少量生産に入って
いる。開発最終段階であり、日本が今後国際共同開発に入ることはない。
航空自衛隊は42機を導入予定。他国向けの部品製造(生産)については、
現時点では予定していないが、意義を見いだせれば否定するものではない。
18. 日英ミサイル共同研究が第一段階を終了し、第二段階に入るとされて
いる。シリア空爆などを行っている英国は武器輸出を禁じるべき「紛争当
事国」ではないのか。また、イエメンへの無差別攻撃を続けるサウジアラ
ビアへの英国の武器輸出が国際的な非難にさらされている。日本政府とし
て公式に英国に武器輸出中止を求める考えはないのか。
(島)新三原則に「紛争当事国」の定義は明記している。「武力攻撃が発
生し、国際の平和および安全を維持しまたは回復するため、国連安全保障
理事会が取っている措置の対象国」。英国はこれに当てはまらない。(現
時点での対象国については、改めて文書で回答へ:後ろに補足)
19. 政府は退役した海上自衛隊の練習機「TC90」をフィリピン海軍に貸与
する方針を固めたと報じられている(2月29日、読売など)。フィリピン
側の負担は年間数百万円程度とされ、事実上の武器輸出である。この目的
は何か。この武器輸出がなぜ「日本の安全保障に資する」と言えるのか。
そして、この案件はフィリピンからの要請に基づくものか、あるいは日本
から持ちかけたものか。
(田原)そうした方針を固めた事実はない。フィリピンとの間で可能性を
検討中。具体的な装備品協力は言えない。
20. 武器輸出案件が中断、失敗などした場合、そのリスクは誰がどのよう
に負担することになるのか。防衛省が武器輸出事業に貿易保険の適用を検
討しているとも報じられている。この検討作業は現在、どのような段階に
あるのか。
(川崎)通常の貿易と同様に、企業がリスクを負担する。貿易保険の検討
作業については有識者会議から指摘があった。現在、具体的な予定はない。
21. 政府は日本企業に課している海外の武器製造企業の買収規制を見直す
ことを決めたと報じられた(2015年8月2日、東京)。記事では、関連法の
運用指針を現在の「厳に抑制」から「状況に応じ適切に判断」などと変更
すると書かれている。この見直し作業は現在、どうなっているのか。
(島)見直しを決めたという事実はない。これに関して周辺でも聞いたこ
とはない。
22. 政府は6月13日から17日までフランス・パリで開催される武器見本市
「ユーロサトリ」に昨年に続き出展しようとしており、現在、防衛装備庁
が出展企業を募集している。現在までに出展を決めている企業名を明らか
にされたい。また、今回の出展にかかる経費と昨年の出展にかかった経費
を明らかにされたい。
(吉尾)現在、出展企業を募集しており、現時点でお答えはできない。4
月上旬に各企業に審査結果を連絡する。企業名は公表する必要がないので
公表しない(ただし、問い合わせには回答する用意はある)。防衛装備庁
を通さず、企業の独自判断での出展も可能。経費については2016年度予算
に3400万円を計上。昨年のユーロサトリではなく「DSEI」(英国での展示
会)には480万円。ただしDSEIや一昨年のユーロサトリでは募集はせず、
企業が独自出展した。防衛省は「視察」。募集するのは今回のユーロサト
リが初めて。※ユーロサトリは隔年開催。
23. 10月12日から15日まで東京ビッグサイトで開催される「2016年国際航
空宇宙展」で、防衛省・防衛装備庁は今まで以上の関連展示や企画を構想
しているとされる。準備している展示や企画の規模、内容、経費の見通し
を明らかにされたい。
(吉尾)国際航空宇宙展への出展の具体的内容は検討調整中。装備政策や
技術力を発信するためブース出展を予定している。2016年度予算に4300万
円を計上。
24. 昨年のユーロサトリへの出展以降、今までに国内外で実施したすべて
の武器見本市、武器展示会への出展の内容と経費を明らかにされたい。ま
た、今後の出展計画と予定経費についても明らかにされたい。
(吉尾)昨年のDSEI以降、実績はない。今後は6月のユーロサトリ、10月
の国際航空宇宙展に予算計上。
25. 防衛装備庁が不正防止のために設置した身内の防衛省職員20人による
「監察監査・評価官」は、職員の通報窓口を設置、聞き取りやアンケート
を行う予定とされている。これらは既に実施したのか。まだであればいつ
実施するのか。また、告発を受けた時の対応や職員の権限は決まったのか。
(佐藤)電子目安箱などを設置している。現在まで告発事例はない。コン
プライアンス順守や意識向上のため、職員教育を行う。石川正樹長官官房
審議官が調査を担当。
26. 防衛装備庁は新たな「防衛装備・技術基盤戦略」を今年夏にも公表す
ると報じられている。この策定に携わっている担当職員名、その役職名と
公表する時期の見通しを明らかにされたい。
(川崎)2014年6月に「防衛生産・技術基盤戦略」を公表。特に見直しの
予定はない。「技術(テクノロジー)戦略」の策定・公表は考えているが、
時期や内容は固まっていない。
<参加者との質疑応答>
(市民側)輸出する武器の中身に縛りはあるのか? 例えば、非人道兵器、
それに準ずる兵器(傷痍弾)などは輸出しない、とか。
(島)具体的な定めはない。新三原則のもとで厳格にやっていく。
(市民)核兵器転用可能な部品などは?
(島)特に基準はないが運用指針に基づいて個別に判断していく。
(市民)競争的評価プロセスの意味は? 評価には運用協力の中身がセッ
トになるのでは?
(装備庁)一層の日豪防衛協力の拡大深化、アジア太平洋の海洋安全の
強化に資するためのもの。
(市民)「企業がリスク負担」との回答だったが、企業側が裁量で、独
自の判断で撤退することはあり得るか?
(川崎)企業としての判断はあるだろうが、今の段階で想定していない。
(市民)契約内容に途中撤退にはペナルティを課すとの中身はあるか?
(川崎)現在、評価している段階。決まった後に検討される。
(市民)輸出武器に「縛りがない」との発言を聞くと、核兵器保有につ
いての横畠法制局長官の答弁を思い出す。あらかじめこの武器は排除す
るとの問題意識はないのか?
(島)現状では特にはない。
(市民)日英ミサイル共同研究が第一段階を終了し第二段階に入ったと
されている。開発段階に入る時期など今後の見通しは?
(装備庁)見通しは特にない。共同開発の見通しはまだない。
(市民)渡辺装備庁長官が国会答弁に立ったケースはあるのか? 堀地
徹装備政策部長が答弁することはあり得るのか?
(装備庁)渡辺長官が答弁した実績はない。議員が指定すれば長官、装
備政策部長が答弁することは可能。
※質問18に関わり、現時点で輸出を禁じる「紛争当事国」に該当する国
名の文書回答を求めたところ、後日、防衛装備庁より、以下の文書回答
あり。
・現在、防衛装備移転三原則でいう「紛争当事国」(武力攻撃が発生し、
国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国連安保理がとってい
る措置の対象国)は基本的に存在しないと考えられる。
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【参加歓迎】4.15 防衛装備庁申し入れ
https://najat2016.wordpress.com/2016/04/13/415action_antisubs/
4.15 ツイッターアクションの呼びかけ
https://najat2016.wordpress.com/2016/04/07/twitter_action_subs/
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