オバマと「ムスリム同胞団」
- 2011年 2月 3日
- 評論・紹介・意見
- エジプトムスリム同胞団安東次郎
なにやら「アメリカ右派」のアジテーションのような題目だが、もちろんそんな話ではない。
エジプト情勢は日々急展開しているが、昨日の夜、二人の方からエジプト関連の話を伺った。一人は宗教問題専門家(A氏)、もう一人はエジプト人の知人を持つ方(B氏)。御二人の「ムスリム同胞団」に対する評価が「低い」のは意外だった。
A氏によれば、「イスラムの本流からすれば、同胞団は宗教を政治利用している存在」とのこと。B氏は「同胞団よりナセル主義に注目すべきでは」とのこと。
これは、「ムスリム同胞団」こそ「革命」を推進する立場にあるという普通の(?)理解からは大分違うのだが、今日になってMichel ChossudovskyのGlobal Reseach 2011-01-29の記事“The Protest Movement in Egypt: “Dictators” do not Dictate, They Obey Orders” http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=22993を読んでいたら、ムスリム同胞団について次のような記述があった。
(引用開始)
<エジプトのムスリム同胞団はムバラク大統領に反対するセグメントの最大のものである。諸々のリポートによれば、ムスリム同胞団が抗議運動を仕切っている。憲法には宗教政党の禁止が定められているのに、同胞団のメンバーは「無所属」としてエジプト議会に選出され、最大の議会ブロックをなしている。
しかし、同胞団はこの地域におけるワシントンの経済的・戦略的利害への直接の脅威をなしてはいない。西側情報諸機関は、同胞団とのコラボレーションの長い歴史を持っている。同胞団への英国のサポート―同胞団は英国シークレットサービスを通して使われた―は、1940年代までさかのぼる。元情報機関職員のWilliam Baerによれば、1950年代から「CIAはムスリム同胞団に対して支援[をしたが]、それは「同胞団の称賛に値する能力――ナセルを打倒する能力」のゆえにであった。〈1954-1970:CIAとムスリム同胞団はエジプト大統領ナセルに対抗して同盟した〉を参照。CIAとのこの密盟はナセル後の時代にも継続された。>(「ムスリム同胞団」の部分の仮訳)
(引用終わり)
本日(日本時間2日)オバマはEgypt’s transition to a new government “must begin now,”と述べたそうだが、これでは、オバマが(副大統領)スレイマンへの権力移譲ではなく、より「民衆」に近い勢力への権力移譲を望んでいるということになる。
Chossudovskyにしたがえば、オバマの発言―「同胞団」の政権参加を許すことになるかもしれない―は、実は彼らの「戦略」に十分に裏付けられていることになる。
(Chossudovskyは上記論文の結論部分で「ワシントンの立場からのレジームの転換は、もはや全盛期のアメリカ帝国主義の時代のような強権的軍事支配の樹立を必要とはしない。左派は社会の諸集団に融資をし、抗議運動に浸透し、国政選挙を動かしているが、こうした左派を含む―選挙で選ばれた―諸政党によっても、ワシントンの立場からのレジームの転換は充たされうるのである」(仮訳)という。)
ところで原田武夫氏は、http://www.youtube.com/watch?v=tNIMNeGIeE8&feature=player_embeddedで、今回のエジプトの事態に関連して、すでに06年に提起されているThe New Middle Eastに言及しているが、その地図には、現在とは随分ちがった国名と国境線が記されている(イスラエルの領土はPre-1967 bordersで仕切られている)。(例えばhttp://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=3882を参照。)
この点も大変興味深い。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0321:110203〕
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