ニホンジンの足元
- 2016年 5月 9日
- 評論・紹介・意見
- 山端伸英
最近の日本の政治状況はまったくの外国人(エコノミストの記事以降、日本への視線がダイレクトになりつつある)が見ても痛ましい体たらくで、それはある意味、ちきゅう座の中にもいくつかの兆候を見ることもできる。
たとえば「護憲派」という言葉の扱い方がある。小生の知人の編集者も「護憲派」への非難をこの場で行なうようになっている。
小生は一方でメキシコ日系社会の稲田化現象のそばにいて町内会社会の雛形を観察しているのであるが、ニホンジンの現状をいくつかここにメモしておく。
1.左翼反護憲の論拠は憲法第1条であるが、それには「国民の総意、WILL」を明確にするための手段形成を怠ってきたことへの反省も必要だろう。自分は関係ないけど天皇制は反対だというのは政治思想上の怠慢を棚上げしているに過ぎない。こんなことを言うので小生の出版話も解消されたのかもしれない。
2.秘密保護法とかいうのは正直に言って左翼には昔から「非成文法」として存在していた。左翼ほどの、根拠を明示しないで他者とのコミュニケーションを操作する達人集団は存在しない。もちろんその閉鎖傾向は原始キリスト教団風の数の規模にも起因しているのかもしれない。「悪霊」以降も続いている自身の病についてもう少し敏感になる必要があると思う。
3.単純明確な平和主義を守る戦後の憲法ルールが左翼にも右翼にも結局理解されていない。小生は国共合作以降の世界に生きているので表面上の主戦主義者尾崎秀実を裏切る立場でもある。市民的レジスタンスは必要である。同時に、国家利用のすべての暴力、国家権力側のすべての武装を否定することは現在の重要課題であり続けている。その単純明快な国家武装否定がニホンジン左翼にも市民派にも失われつつある。警官の武装についての議論も必要であろう。
4.最近のFACEBOOKのグループでは盛んに議論が行われていて結構なことなのだが、管理人の連中の奇妙の性格が傍観していて本当に興味深い。最近「思想の科学」は社団法人を解除してただの集団になったのだが、それについてのコメントをそのグループのFACEBOOKに書いたら削除されてしまった。そういうことは彼らの「多元主義」の限界を語るものだが、鶴見俊輔亡き後の傾向をうかがわせる。削除は問題ではない。問題は説明がなく、その説明能力の有無にさえ疑問が残ることなのだ。
5.ある人材をある研究集団に紹介したら、最初に酒の飲み場で酒を飲みながら話し合ったそうだ。おいおいという感じである。「仲間に加える」つもりで紹介したわけではないし、日本以外でそんな対応をしたら真面目な人間だったら怒り出しかねない。仲間主義的対応はそれ自身間違った組織運営だろう。
6.小生は海外生活に疲れるという暇もないほど生き残りに時間を割かれているので定年もなく生きている。定年を迎えた連中は厚生年金という収入で知性を買っていただきたい。最近付き合ってきたサラリーマン連中の「ルール」に対する対応については別の場所で書いてきたが、「決まりごと」を守れないどころか、「決まりごと」として認識できないニホンジンが増えてきている。ABEはひとつの例に過ぎないとしか、小生には思えて仕方ない。最近、トヨタ、日産、ホンダといった会社へ部品を供給している会社でISO/TS16949の認証のための条件である遠隔基地監査(それほど緊密な監査を要するわけでもないが)をオミットする対応をしてきたので退社したのだが、その会社は認証監査の第一期で不合格になったようだ。日本車の主要メーカーに部品供給をしている会社がこのざまである。日本車の安全神話はすでに確実に「神話」以外の何ものでもない。
7.ニホンジンの「知性」を支えてきた学校教育、報道機関や文化産業の問題なのだろうが、最近のコミュニケーション形態の変化に対する歯止めが必要ではないだろうか。最近の日本語には各単語ごとに解説をいただかなければわからない面もあるが、奇妙な権威主義が横行している。ウザイとかね。他方、大使館など出会う官僚たちのボキャブラリーや対応には一種のニホンジンたちだけにしか通用しない「内輪」の了解傾向があり、部外者に対する無礼と映ることさえある。また大使などの発想も強権的でコミュニケーション的ではない。同時に、そのような強権性が左翼のメンバーの中にも見られるのは、ニホンジンの場合、昔からだが、残念なことでもある。
8.日本が確実にラテンアメリカの強権支配とよく似た社会になりつつあることは慶賀の至りであるが、それなのに「選挙結果」をそのまま信じる「機構信仰」がまだ支配的なのはどこか片手落ちの文化だなという個人的な観察もできてしまう。選挙集計システムの会社の株主が現在の政治首班であるというのに誰も何も告訴もできないでは、日本は社会形成上の基本的な常識から検討していかなければならず、またニホンジンの「質」も問われていくことだろう。選挙不正の可能性は突き詰めていかねばならず、最終的には安価なガソリンの手も借りねばならないだろう。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6080:160509〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。