(メール転送です) 使用済核燃料の再処理は、「過去分」か「将来分」か + 村田三平元スイス大使からのメール
- 2016年 5月 17日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
(最初に村田三平元スイス大使からのメールです)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
皆様
本日午後のCNNのニュースで、カナダの大学教授のリオ五輪延期要請(ジカ熱の拡大防止のため)が報じられました。一人から広まったこの病気に50万人ものオリンピック時の来訪者が感染の危険に触れることは到底認められないとの考えです。ブラジル大統領の職務停止決定もなされ、五輪開催への影響が注目されます。
これは直面する危機に対するものですが、東京五輪においては、福島原発事故への対応・放射性物質による汚染除去・被災地復興や熊本地震災害への対処も直面する緊急の課題であり、同時に今後数年、数十年を要する重大責務です。
これを軽視するかの如き東京五輪の開催に反対する声を遂にマスコミも取り上げつつあり、ご報告したとおりIPPNWのNidecker博士が事故対応の現状に鑑み8年ないし14年の延期を提案しております。
他方、5月11日付英国のガーディアン紙は別添の通りIOC関係者の贈収賄疑惑を報じ、12日発行の「夕刊フジ」は別添の記事を掲載しました。不道徳な行為を許さぬ天地の摂理が働いていることを感じます。
村田光平
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(上記に関連)
●【東京五輪】疑惑のシンガポール振込先は老朽公営住宅 玄関先にサンダルやポリ袋、看板もなし コンサルタント企業の実態は不明 – 産経ニュース
http://www.sankei.com/world/news/160514/wor1605140029-n1.html
http://www.sponichi.co.jp/sports/news/2016/05/15/kiji/K20160515012590420.html
(ここから本文)
==============================
下記は、東電株主代表訴訟の堀江鉄雄さんのメールです。ご参考までにお送りします。事態は堀江さんのおっしゃる通りだと思います。再処理にかかる費用が不透明でアンフェアな形で電力の消費者から吸い上げられています。他の業界では考えられないことです。電力自由化では、これが正されなくてはいけないものを、逆に、より出鱈目で反社会的な制度を創り「再処理延命」の「焼け太り」をしようとしていることなどが指摘できると思います。
注:メールの文頭に半角文字の①②③を置きますと自詰まりなどのバグが出やすいので、全角文字の(1)(2)(3)に変えておきました。その他は原文のままです。
釈迦に説法ですが、再処理事業は、下記のことの他にも、
(1)原発どころではない超危険な核施設であること。海外でも事故だらけの施設であること。
(2)何の事故もなく運転されていても原発1年分の放射能を環境にまき散らすこと、それがきちんと地域住民に知らされていないこと、
(3)情報非公開の固まりの様な施設で、再処理工場で何が起きているのか、有権者・国民・市民や地域住民にさっぱりわからない、
(4)商業ベースの発電施設としては採算に合わず、その目的が軍事用プルトニウム以外に考えられないこと、海外で再処理事業を商業ベースでやっている国はありません。
(5)マスコミが再処理工場について、全くと言っていいほど報道しないこと、大半の大学教授どもが沈黙を守っていること
(6)手抜き工事で再処理工場が造られ、それがアクティブ試験後、長きにわたり止まったままであること、これを稼働させることは、通常以上に危険であること
(7)再処理工程のガラス固化などに関して技術が未熟で、全体の工程がうまく回らず、稼働してしょっちゅう運転停止になることが予想されること(東海村の再処理工場の稼働率も極めて低水準)
(8)再処理工程で生まれてくる高レベル放射性廃液は極めて危険なモノですが、これが東海村と六ケ所村にガラス固化されないまま放置され続けていること(最近、少しずつガラス固化を始めたようですが、原子力規制委員会の安全審査を受けておりません)
(9)青森県六ケ所村再処理工場の立地場所である下北半島は、大陸棚外縁断層という巨大な活断層がすぐそばに存在することに加え、そこから派生してきている活断層が再処理工場の真下を通っています。また、この地域は昔から「プレート型地震」がしょっちゅう起きている地震・津波地帯であることに加え、恐山をはじめ、火山活動地帯でもあるのです。かような場所にこともあろうに再処理施設などの核燃料サイクル施設を設置すること自体が狂気の沙汰です。
●大陸棚外縁断層
https://kotobank.jp/word/%E5%A4%A7%E9%99%B8%E6%A3%9A%E5%A4%96%E7%B8%81%E6%96%AD%E5%B1%A4-1691835
等に留意が必要かと思われます。
それから、電力自由化の時代にこの再処理を延命するために、新しい認可法人を創設するなどの新法がこのほど国会で可決成立しておりますが、その新法法案に与党のみならず民進党が賛成票を投じていることです。信じがたいという他ありません。かような野党第1党など、不要な集団であることも、私たち有権者・国民・市民は肝に銘じるべきでしょう。
<新再処理法案に関する報道>
●再処理等拠出金法が成立(デーリー東北) – goo ニュース
http://news.goo.ne.jp/article/dtohoku/region/dtohoku-35388625.html
●核燃再処理、新法人に 国の関与を強化 改正法成立:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/DA3S12352016.html
●民進会派11人も欠席・棄権 原発関連の参院採決 – 産経ニュース
http://www.sankei.com/politics/news/160511/plt1605110024-n1.html
(民進党の菅直人や近藤昭一、自民党の河野太郎や秋本真利ら、「原発ゼロの会」の国会議員はどうしていたのでしょうね? 常日頃は核燃料サイクルやめろ・やめろで、うるさいほど大演説をしている方々です。上記の朝日新聞記事によれば、何人かの「原発ゼロの会」国会議員は反対はしないまでも棄権したりしていたようですが、この4人の名前はこの記事では確認できません。:田中一郎)
(ところで、上記のデイリー東北の記事では、(再処理)拠出金を義務化されるのは原発を持つ電力会社に限られているような書き方ですが、では、原発電力を買い取って販売する新規参入の電力会社や、まったく原発由来電力を扱わない電力会社はどうなっているのでしょう? 発電会社と電力販売会社では扱いが違うのかもしれません。配電網を使うすべての電力会社に再処理費用や核のゴミ再処分費用を払わせる(託送料金に上乗せする)という話はどこまで進んでいるのでしょうか? ご存知の方がおられたら教えてください:田中一郎)
(以下は堀江鉄雄さんのメールの転送です)
==============================
Sent: Wednesday, May 11, 2016 5:00 PM
Subject:使用済核燃料の再処理は、「過去分」か「将来分」か
堀江鉄雄です。重複ご容赦ください。転送・利用可
認識不足や間違った認識などはご指摘ください。相変わらず整理不十分ですから難解かと思います。皆様からのご意見を頂き、修正してご利用ください。
<問題提起>
(1)再処理は、ゴミ処理ではなく核燃料加工事業「将来分」であること
(2)再処理は、ゴミ処理ではないので、「再処理等に要する費用」を「過去分」として消費者が負担する理由はないこと
(3)したがって、託送料金で「再処理等に要する費用」を「過去分」として回収すべきではないこと
(4)電力自由化で総括原価方式ではなくなり、分社化されるので尚のこと「再処理等に要する費用」は、原子力発電事業者が負担するべきであり、回収は原発の発電を選択する消費者から電気料金でするべきこと
以下、意見です。
1 使用済核燃料の再処理は、「過去分」か「将来分」か
私が何故、再処理は、「過去分(ゴミ処理)」と「将来分(核燃料加工)」を問題にするのかと言えば、経産省は都合良く使い分けているからです。そして、今回の再処理拠出金制度と電力完全自由化において、原子力関連費用を全消費者に負担させようと企んでいるからです。このことをキッチンと整理、認識しなければなりません。
使用済核燃料の「再処理事業」は、使用済核燃料をゴミとして処理しているのではありません。原発の核燃料となるPuとUを回収し、核燃料を製造するための加工事業です。ゴミ処理事業ではありません。
もし、再処理を「ゴミ処理事業」だと言うならば、まずは使用済核燃料の管理・処理・処分方法(直接処分)などを論議し具体的な方策・計画を決定するべきです。そこで「ゴミ処理事業」の責任と負担も明確するべきなのです。
使用済核燃料、廃炉、事故炉解体など原子力関連廃棄物の第一義的責任は、原子力事業者(電力会社など)です。発生したゴミの処理と処理費用は、電力会社が発電コストとして売電時の電気料金に組み込んでいなければなりません。発生したゴミは何とか処理しなければ仕方ないとして、安易に国民や消費者が負担するべきではありません。まず原子力事業者とステークホルダーが相当(破綻処理を含め)の負担をするべきです。
2 使用済核燃料の再処理は、会計処理上からもゴミ処理(過去分)ではない
(1)エネルギー基本計画の中で再処理の目的は、使用済核燃料を再処理して資源の有効利用することとしており、回収Puと回収Uを核燃料に加工し、原発の燃料として使用することにしています。再処理をゴミ処理とはしていません。
(2)使用済核燃料の「再処理」は、使用済核燃料をゴミとしての「廃棄物処理」ではなく、原発で発電をするための核燃料を製造するための「再処理加工」の事業工程だということです。
したがって、使用済核燃料は、加工中等核燃料に備忘価額(今は価値がないが、これから価値が附加されるということで1円)として資産計上されています。
(3)回収Pu、U資産計上の誤魔化し
「再処理加工」により抽出された回収PuとUは、「二酸化ウラン価額換算」で加工中等核燃料に計上されています。本来は、「再処理等に要した費用」を費用処理せずに、回収PuとUに資産計上するべきですなのです。
二酸化ウラン価額は、ウラン鉱石採掘、精製加工などの費用から決まっています。同様に回収PuとUの計上する資産価額も「再処理等に要した費用」を会計上は全額按分計上するべきなのです。
そうすると、一つは回収Puと回収Uの単価が分かってしまい再処理加工の費用対効果(経済性)が一目瞭然となってしまいます。二つ目は、「再処理等に要した費用」を資産計上すると「費用処理」が出来なくなり、総括原価に費用として算入できず「再処理等に要した費用」を「電気料金での回収」ができません。
(4)「再処理等に要した費用」を全額資産計上すると
全額資産計上した場合、ウラン燃料工程同様に転換・濃縮・再転換・成型加工などに要した費用を上乗せしますからウラン燃料集合体と回収ウラン燃料集合体の比較となり、回収PuはMOX加工に要した費用を上乗せしたMOX燃料集合体との比較で如何に不経済なことかが判明します。
また、全額資産計上した場合で時価評価することになれば、「二酸化ウラン価額換算」して残りの価額は減損処理することになります。そうすると「損失処理」となり電気料金での回収は出来なくなります。
と言うことで、「二酸化ウラン価額相当」を資産計上し、あとの「再処理等に要した費用」の殆どを費用処理して「電気料金から回収」しているのです。都合良く会計処理をしているのです。
(5)つまり「再処理」とは、会計処理上からも核燃料製造工程の「再処理加工事業」工程なのです。再処理は、将来の原発発電のための核燃料を製造しているのですから「過去分」ではなく「将来分」なのです。
(6)もし、最初から使用済核燃料の再処理を「過去分(ゴミ処理)」だとするならば、最初から発生した使用済核燃料の全量を再処理引当金で引当てなければなりません。
何故、引当なかったのか?ゴミ処理ではなく核燃料加工事業としたからです。海外再処理引当金、動燃分再処理引当金、日本原燃(3.2万t分)再処理引当金と「再処理計画」のあるものに限定しています。
(全量見積と莫大な額になるので本音は、負債の先送りです)
3 「将来分」は、売電時の電気料金で回収するべき
再処理は「過去分」ではなく「将来分」ですから再処理等費用は、将来、回収Pu及びU燃料で発電した時の電気料金で消費者から回収するべきなのです。誰もそんな高額の電気は購入しないと思います。ですから電力自由化における電源の選択自由と発電源別電気料金は必要なのです。
4 「過去分」の意味
(1)再処理を「過去分」とする意味は、原発による発電の「利益」を享受したのだから、ゴミとしての使用済核燃料を「廃棄物処理」する費用を応分に「負担」するべきだとしているのです。これが新電力から電力購入している消費者の支払う電気料金(託送料金に入っている「再処理費用」)を負担する過去分の意味です。
(2)電力の一部自由化(大口消費者:企業への解禁)により、電力会社からではなく、新電力から買電をする消費者は、総括原価方式に基づく電気料金から外れることになりました。そこで新電力から買電する消費者に「再処理費用」を負担させるために託送料金から回収することにしたのです。
5 普通の事業では「過去分」の請求はない
(1)「過去分」などと言って、発電のゴミ処理費用を電気料金で売買した後に請求する事にも問題があります。商品を買った後、商品製造工程のゴミ処理費用を消費者に請求しますか?
(2) 販売価格は、事後発生、将来の発生費用も含めて決めるものです。「競争相手があり販売価格を下げなければ、当時は売れなかったのです。」とか「皆さん買った時は喜んでいたでしょう」とかの理由で、「ゴミ処理費用」を販売後に請求する企業はありません。
(3)まして電力会社は、「独占、総括原価方式」ですから将来の投資・発生する費用と電源別の特性など全て含めての「電気料金」なのです。総括原価方式に基づく電気料金とは、そう言う意味なのです。その発電コスト計算ミスは、経営者の判断ミスです。消費者の責任は、電気料金を支払った時点で終わっています。
原子力発電の場合は、こうした不良債権を隠したり先送りしたりして、原発の発電コストは安いとしているのです。消費者が後で負うべき負債ではありません。
原子力関連の財務処理に共通する根本的問題は、「負債の過少評価」と「負債の先送り」です。
6 「再処理等費用」の負担の経過と方向性
(1)電力会社独占・・・費用処理をした(再処理等費用)を総括原価方式により「電気料金」で回収
(2)電力一部自由化・・・「再処理積立金制度」成立(05年)以前に発生した使用済核燃料の(再処理等費用:電源税の入っていないことは未確認)は、消費者全体の負担ということで「託送料金で回収」している。
(3)小売り全面自由化・・・05年以後に発生した使用済核燃料の(再処理等費用+電源税)を消費者全体の負担ということで「託送料金で回収」する。
(4)電力完全自由化・・・20年、総括原価方式に替わり「再処理拠出金制度」(使用済核燃料全量の再処理等料金+電源税+MOX燃料関連費用、廃棄物管理・処理費用)。拠出金回収は、電力会社が「小売りで回収」と言っている。
(5)今後・・・拠出金対象を(廃炉等費用、損害賠償金)へと広げる。
発電の利益を享受した残りの使用済燃料(過去分)の再処理費用の負担には、仕方ないと誰も文句は言わないだろうとの意図があります。新電力から買電する消費者も公平に負担するべきとのことから「託送料金」から「再処理等費用」の回収となったのです。
経産省の考えていることは、総括原価方式により原子力関連費用を全消費者に負担させていたものを、如何に再処理拠出金制度で継続させるかです。この現在、実施されている「託送料金」からの「再処理等費用」の回収を利用、拡大しようとの意図は透けています。
この意図を阻止するためには、電力会社の解約、託送料金から「再処理等費用」の排除することです。
7 発電に係る費用を託送料金で回収することは、電力自由化の思想に合わない。
(1)電力の完全自由化では、発電、送配電、売電は分離・分社化されます。発電事業、売電事業は自由競争、つまりコスト競争となるのです。発電に要する費用は発電コストに、売電に要するコストは売電コストにしなければなりません。この分社化を完全分離にするのには、「法的分離」では不十分で「所有権分離」にしなければなりません。
(2)特に送配電事業は中立でなければなりません。実は電力会社の資産の大半は、送配電の施設・設備・機器などの資産なのです。それまでの全消費者が負担した共有の財産なのです。電力会社は、それを勘違いしてはいけません。
ですから送配電事業者は、全ての事業者に対して公平でなければなりません。託送料金は、「送配電に要する費用」に限定するべきであり、出来るだけ安価にすることです。
(3)発電事業の原発の不良債権である再処理等費用を消費者に負担させておいて、消費者の共有資産である送配電設備を自由に使わせないというのは、負債のみを押しつける都合の良い分社化だといえます。
(4)したがって、一部電力会社や特定発電源を補助するような費用、再処理費用などを託送料金には含めるべきではありません。現在、託送料金に含まれている「再処理等費用」は除外されるべきです。「再処理等費用」は、原発の発電に係る費用です。元々再処理等費用は、電力会社の「託送料金」ではなく「電気料金」で回収されるべきものです。総括原価方式は終わるのですから電力自由化の主旨に添った処理をするべきです。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
〔opinion6096:160517〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。