本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(122)
- 2016年 5月 23日
- 評論・紹介・意見
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政策リスクの非対称性
先日の「クルーグマン教授のオフレコ発言」では、「政策リスクの非対称性」がコメントされていたが、このことは、「景気の好転と悪化の時に、リスクが違う」という考え方のことである。具体的には、「景気が好転し、インフレ率が上昇した時には、イエレン議長やドラギ総裁、そして、黒田総裁も、対処法を知っている」というものだが、一方で、「世界経済が悪化し、デフレに陥った時には、対処法が難しくなり、より大きなリスクにさらされる」という理解のことである。
別の言葉では、「大恐慌」と「大インフレ」の「違い」を述べているようにも感じたが、基本的に、現在、多くの人が恐れていることは、いまだに、「1929年の大恐慌」が再来する可能性でもあるようだ。つまり、現在でも、世界中で、多くの人々が「過去の亡霊」に怯えているようだが、実際には、「株価が暴落し、失業率が増える状況」のことである。しかし、この点については、きわめて「時代遅れ」の意見であり、「2008年のリーマンショックの時に、終了した議論」とも言えるようである。
別の言葉では、これから危惧すべき点が、「大恐慌」ではなく、「大インフレ」だと考えているが、実際には、「民間銀行の連鎖倒産」が引き起こしたものが、歴史上、唯一の「1929年の大恐慌」であり、その時には、「国家財政は、きわめて健全な状態」だったのである。しかし、「過去100年間で、30ヶ国以上で発生した大インフレ」については、「国家財政の行き詰まり」により、「金融システム」や「通貨制度」が崩壊したことが、最も重要な原因だったが、現在の世界的な金融情勢については、まさに、この通りの状況となっているようにも感じられるのである。
つまり、現在の「リスク」としては、クルーグマン教授の意見とは反対に、「景気の好転やインフレ率の上昇に対して、対処法が無くなりつつある状況」とも考えられるのである。別の言葉では、「出口戦略」という「金融の正常化」が困難なために、「国債の買い支えを継続することしか方法が無くなっている状況」のことだが、クルーグマン教授は、この点が理解できずに、「財政政策を実施すれば、世界経済が好転し、問題が片付く」と考えているようである。
別の言葉では、「ケインズ経済学」の一面だけを捉え、ケインズが、最も注目していた「貨幣論」が無視されているようだが、本当のリスクとは、「勝海舟」が述べたように、「学術を以て天下を殺す」という「世界的な国家財政の破綻」でもあるようだ。(2016.4.19)
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三度目、そして、最後の警告
今回の「熊本の大地震」については、いろいろな点で驚かされたが、結局は、「人智の限界」が明らかになるとともに、「三度目、そして、最後の、天からの警告」だったようにも感じている。つまり、東洋学では、基本的に、「天災は天からの警告であり、人災が起きていることを気付かせるために発生する」とも考えられており、今後は、「マネーの大膨張」という「人災」が、人々に、大きな影響を及ぼすことが予想されるのである。
そして、「三度の警告」については、私自身が、約20年間参加した「芹沢文子先生」の勉強会で、よく語られたことだったが、実際には、「信仰深い人が、災害に遭った時」の話である。つまり、「私は信仰が深いから、どのような災害にあっても、必ず、神様が助けてくれる」と考えた人が、周りの警告や忠告を聞かなかったそうだが、具体的には、「近所の人」や「警官」、そして、「消防士」が、再三、避難を勧めたのである。しかし、結果としては、「その場所に留まり、災害で亡くなった」というものである。
そのために、この人が天国に行った時に、「神様、なぜ、私を助けてくれなかったのですか?」と尋ねたそうだが、この時の答えは、「私は、三度も助けに行った」というものだった。つまり、「天に声なし、人をして語らしむ」という言葉のとおりに、「天」や「神」の声は、「周りの人から聞こえてくる」ということが、「芹沢光治良先生の三女」である「芹沢文子先生」が、深く信じていた「真理」だったのである。
また、この点を、「1995年の神戸大震災」、「2011年の3・11大震災」、そして、今回の「熊本の大震災」の時に、「人々が、どのように考え、どのように行動したのか?」を、「貨幣の流通速度」の観点から眺めると、実に興味深い事実が浮かび上がってくる。具体的には、「震災のたびに、貨幣に対する信頼度が上昇していた」という事実だが、このことは、「お金(貨幣)が、徐々に、現代の神様になっていった過程」であり、また、「マイナス金利が世界的に発生した理由」とも考えられるのである。
しかし、現在では、「バルチック海運指数の上昇」や「株価や貴金属価格の上昇」に表されるように、「貨幣に対する信頼度」が減少を始めているようだ。別の言葉では、「現代の神様」となった「お金」が、徐々に、その本質を表し始めたようにも感じているが、実際には、「神」が「紙(紙幣)」に変化し始めている状況のことである。そして、このことが、本当の「インフレ(通貨価値の下落)」を意味するのだが、残念ながら、現代人は、依然として、この警告を無視し続けているようである。(2016.4.25)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion6109:160523〕
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