マンション生活から知り得た社会問題を考える(13) ―その後の理事会の動向1 管理規約・細則の改正
- 2016年 6月 13日
- 評論・紹介・意見
- マンション管理組合羽田真一
1. いきさつ(シリーズ(1)~(12))
2011年度のマンション管理組合理事長羽田を2度にわたる辞任勧告で引き摺り降ろした後、管理中枢を形成していた有力者で臨時総会を開いて新管理体制の承認を行った。理事長の交代という重要事を全く正式な手続きもせず、旧専門委ボスが出てきてエセ自主管理の管理人(管理会社代理人)を退け、管理会社直轄の管理組合に変えてしまった(元々から管理会社直轄)。それは今から想えば「管理会社マンション」を象徴する出来事であった。素人理事長の純粋な正義感から(素人と言えば免罪されると思わないが)余りに目に余る老獪管理人の振舞(後ろに管理会社)に我慢ならず全戸文書配布の形でそれを知らしめた。その報復が辞任勧告であった。しかし、不可解なことは一般住民から賛否とも何らかの意見が一切上がらなかったことである。その現象は5年後の現在に至るまでずっと続いている。いくら管理中枢の締め付けが強くとも、基本的に自由社会だから何らかの手段で自分の意見を出せるのに、どうしたらほぼ全体が無言一色に染まるのか理解できず苦しんでいる[最近、こちらから申し込んで前理事長と面談する機会があったが、その席で彼が「あんたの文書に答えたら、あんたの土俵に乗ってしまうから答えないのだ」と発言した。これで全てを理解納得した。文書配布による資産価値の下落(彼の言い分)と結び付ければ完成]。
辞任後、毎年理事会役員は交代する(理事長は1年、理事は2年の任期)。次の理事長は総会に懸けず開店休業の店舗棟に内科診療所を開設させた(3店舗買い取り改築・医療機器購入・近隣に駐車場付き薬局開設などが理事長一任)。その次の理事長は来る大規模な給排水管交換工事のための計画立案や工事実施に向けてコンサルタントとの癒着協業を進めると共に、羽田が起こした組合会計閲覧要求の簡易裁判調停への対応を主事業とした。その次の理事長は工事施工手配と1年前倒しで秋に半年の工事を着工し、4月に約2億5千万円予算の工事を完工させた。同時に未解決の羽田による会計公開要求を阻止するための動きを開始した。即ち、マンション外部に拡大して内部情報を伝える羽田の文書配布差止請求とそれに基づく羽田刑事告訴手続きの遂行であった。ほぼ5年毎に来る大修繕工事を一段落させ、2015年度の理事長は懸案の管理規約・細則の改訂を事業計画に打出していた。
2. 住民を置き去りにした改正原案て何?
規約の全廃・新設は2013年2月に突然理事長が言いだしたものである。エセ自主管理体制[前管理人(管理会社代理人)を組合雇用にしただけで、会計等の管理は管理会社の続投]の不都合を羽田に見抜かれて、管理中枢にいた住民側代表でない専門委員大ボスたちが出て来て前管理人を逃してやり、管理会社雇用の新管理人に変えただけのこと。それで現行の管理規約のままでは違反の組合運営が所々出てきたのと、国交省の標準管理規約が部分的に改正されたことからの予防線であろう。一般住民は全く無関心であるから、理事会も総会の度に事業計画に掲げるものの開店休業状態であった。ようやく前々期に理事会に改正小委員会を設けたが、素人集団には荷が重すぎたのか勉強会でお茶を濁していた。ところが前期になってその委員会にコンサルタントの紹介で弁護士事務所からマンション管理士が派遣され主導する形で改正作業が進んだようだ(委託予算120万円)。コンサルタント会社はすでに約20年前から管理組合の運営サポートを委託されているから、この規約改正が管理会社にさらに都合のよいものになることは十分予測された。それを誰も疑わず総会で承認されてしまい、ここで規約改正の手続きの管理会社のレールが敷かれてしまった。
羽田はそれまでの理事会との確執から、この規約改正を疑いの目で注視していたので、管理事務所で管理人が「原案は出来ている」との発言を聞いて総会で理事長に「原案ができているなら住民に開示して、十分検討する機会を与えよ」と要求したが、理事長は「早くから見せると、それが最終案として独り歩きされたら困る」と開示を拒んできた。その後、全く無しの礫であったのが、今年2月8日にいきなり標準管理規約等と比較検討された改正原案が全戸に配られ、2月29日までに意見があるものは書面で提出しろ、3月19日に説明会を開催すると通知してきた。今夏に臨時総会を開いて改正案の承認を採るとのスケジュールも示された。この原案は専門委員会が答申し、理事会で審議し承認したものである旨が案内書の冒頭に記載されている。咄嗟に私はこの改正手続きは手順が間違っていると断定した。まず、理事たちは一度も住民の意見を聞いていないし、順番くじ引き制で選ばれた理事たちは住民を代表していない。それでいてもう原案は理事会が承認したものだと書いてある。当マンションお得意の事後承諾である。僅か20日で160ページを超える新旧交錯した規約条文を隈なく読みこなし意見を記述できる住民が何人いるだろうか。羽田も20日余りで一通り読んで不都合な箇所に羽田の提案要求を書き込んで数ページの意見書を29日に提出するのがやっとであった。約束の会計処理細則が説明会の原案から抜けていた。意図的としか言いようがない。約束違反と詰め寄ったが、理事長は総会を延期してでも会計処理細則を検討すると約束した[信用できないが、核心をはぐらかすのは彼らの常套手段]。住民が会計問題に触れるのはタブーの扱いが透けて見える。
3. 説明会はアリバイ工作
当日はマンション管理士を含む改正小委員会(専門委)3名と理事会役員3名の計6名が前列に並び、管理会社マネージャーは住民に背を向けて座っていた。住民はおよそ35名(全240戸)、不思議なことに顔見知りの役員・有力者の姿が殆ど見当たらず、名前も知らぬ住民が既に前方大半を占めていた。これは明らかに羽田の詰問を避けるお得意の動員作戦と見た。書類で意見を寄せた5名(実名3名、匿名2名)でその実名3名の質問・要求の発言で終わった。印刷する時間が十分あったのに提出意見は説明の端々で紹介しただけで住民の手元に残したくはなかったのであろう。マンション管理士のみが延々と主に標準管理規約を準拠として改正点を説明した。こんなやり方でどれだけの住民が理解しただろうか。提出意見を挟みながら、マンション管理士の見解を加えていたが、殆どが「後の理事会で審議する事項」が答えであった。羽田はこの際とばかり「あなた方はこの原案を一度でも住民の声を聞いて検討したか。このマンションは全て住民の管理費で運営されているのに、住民の代表でない管理会社の意向を汲んだ理事会が審議決議して事後承諾させるやり方を通してきた。この規約改正の動きもそれで進もうとしている。」と少数派に発破をかけた。すると理事長が「未だ説明すべき項目が多数残っているから先へ進めたい。後で聞こう」と中断させた。今回は説明会であって改正内容の審議の場ではない、意見は聞くが、あくまで専門委で決めた改正案を説明するだけで予定の臨時総会に出す議案へのガス抜きの機会と考えるのが正しい。一般住民は無関心の上に、専門家マンション管理士が主導しているのだから任しておけばよいのだ、と言う態度である。
羽田はこの管理規約・細則の改正は明らかに管理会社支配をさらに都合の良いものに強化されると原案を読み取った。羽田の目的は管理会社支配を崩して住民本位のマンション管理の実現である。だから、ゆっくり条文を一つ一つ咀嚼しながら、住民の観点に立つ管理規約を実現する大きなチャンスと考え立ち上がったのだが、敵はさるもの、専門委員会を設けて既に外堀を埋めていた。本末転倒の改正手続きに警鐘を鳴らしたかったのだが。自分たちで自分たちの自由を尊重する掟を作るのは当たり前である。組合会計の不正を見つけ、確たる証拠を掴み、専門委などの費用不記載、管理人の小口現金処理の逸脱などに気付き、当然の住民の権利である会計帳簿の公開閲覧を要求し、内外に文書配布して理解して頂こうと運動する羽田の行動を封じようとする。
説明会はやはり管理会社マンション管理継続のための儀式に過ぎなかった。理事長のスケジュール変更や新たな改正専門委の募集などその場逃れの言動は信用できない。すでに答えは見透せる。機先を制することができず、改革の難しさを痛感する。でも怯むわけにいかない。改正内容には、こそっと管理中枢に有利な文言を入れてある(専門委の選任が総会の承認を不必要とする条文が組み込まれていた)。また、「建て替え」に関する条文が随所にやたらと目につく。「建て替え」を推進したい国交省や建設業界・不動産業界などの意向の先取りであろう。住民は着いていけず準備不足のうちに制定されて規約が既存だと後の祭りとなる恐れが大きい。そもそも標準管理規約そのものが業界・官界・学会・組織代表の妥協の産物である。その上、理事会が住民の「共同の利益に反する行為」に対する訴訟・罰則の詳細を強化している(それなら公的に訴訟が受理されなければ、即ち、訴えが不正であった時の理事会の謝罪・弁済の規定しなければ不公平と考えるべきである)。
4. 住民本位のマンション管理を目指して
ほぼ完成された管理会社マンションの管理体制を本来の住民本位の管理組合に変えることは並大抵の努力でできるものではないと痛感する。羽田の数年にわたる文書配布による啓蒙活動でも、今のところ2,3名の賛同者を得たに過ぎない。それもやっと匿名から抜け出してくれたのだ。地道な努力にも時間が必要である。頑張るしかないが、体力と精神力が続かなければならない。
重要な規約条項や細則が必要なのになぜ制定しないのか。会計処理・管理運営マニュアル・広報活動・関係書類閲覧・理事会傍聴・苦情処理・要望書等の諸制度細則がないのだ。それは管理会社の支配に不都合だからとみれば、理解できる。住民が交代で受け持つ理事会は短期任期のお飾りでよい。修繕工事費の分け前に与かれる専門委は永久就任が可能な規則となっている。それを助ける管理人も継続承認で同様であった。だから、年令制限・年数制限などを設けることと不都合時にはリコールできる制度にしろと要求した。同時に悪の運営の温床となっている組合事務所を完全オープン化し、会計資料・会議議事録・工事発注契約書等の閲覧自由化も要求した。何より、年月をかけても住民の自治意識の啓発準備の地道な努力と、その上での順番クジ引き制に替わる自発他発的立候補を基本とした役員の投票選挙制度の採用を訴えた。意欲ある住民が生まれることである。
しかし、理事長の回答は「専門委を募集するから応募しろ。専門委にならなかったらあんたの意見は通らないことになってもよいのか」であった。即ち、危険なことに理事会に取り込んで反対する手足をもぎ取る魂胆であろう(過去にその例を何回も見てきた)。管理中枢の中心である管理会社やコンサルタントが替わ(変わ)らない限り少数派は手も足も出ないのが現状である。やはり、もどかしくとも在野精神で外の社会を頼りに頑張るしかないと決意を新たにしている。(2016年6月13日) (13)報終り
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〔opinion6140:160613〕
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