野党の選挙共闘は痛い。痛いからこその反共攻撃なんだ。
- 2016年 6月 21日
- 時代をみる
- 澤藤藤一郎
私が、アベです。「アベ政治を許さない」って、全国津々浦々に回状をまわされている、お尋ね者同然の、あのアベ。
参院選が近くなったのに、最近何もかもうまく行かない。手詰まり状態でね。出るのは愚痴と溜息ばかり。ホントにどうしちゃったんだろう。唯一の慰めは、ダブル選挙をやろうとして思いとどまったこと。こんな状態で総選挙も一緒にやっていれば、オウンゴールで地獄に落ちかねないところだった。その点は不幸中の幸い。まあ、致命傷にはならなさそうだ。
見え透いているって評判は悪いけど、今度の選挙は「経済政策を問う選挙」「道半ばのアベノミクスへの支持を求める選挙」と訴えている。「憲法改正の是非を問う選挙」とも、「改憲発議の議席を求める選挙」とも言ってない。それなのに、「アベの本心は改憲だ」「与党に議席を与えたら平和憲法が危うくなる」って大合唱だ。それがまんざら嘘でもなく、当たっているから始末に悪い。
一番心配なのは、アベノミクスの評判が悪いこと。そりゃそうだろう。もう、3年半にもなるんだ。ダマシダマシひっぱって時間を稼いできたけど、ボロ隠しもそろそろ限界だろう。選挙直前の世論調査で、軒並みアベノミクスの評判が悪い。「アホノミクス」とか、アベノ「ミス」クとか、うまいこと言うもんだと私が感心していてはしょうがない。
毎日新聞が、今日(6月20日)の朝刊で、最新の全国世論調査の結果を発表している。安倍内閣の支持率は5月の前回調査から7ポイント減の42%、不支持率は6ポイント増の39%。まあ、この程度は想定内だ。ところが、安倍政権の経済政策「アベノミクス」を「見直すべきだ」という回答が61%で、「さらに進めるべきだ」の23%を大きく上回っている。これはショックじゃないか。経済政策選択選挙とこちらが設定した土俵で勝ち目がないことになるんだから。
さらに、問題は地方だ。今朝(6月20日)発表の福島民報と福島テレビの県内世論調査の結果では、「安倍晋三首相が進める経済政策「アベノミクス」について「評価しない」は51.2%となった一方、「評価する」は19.7%で全体の2割弱だった。」。しかも、「安倍内閣支持」は34.6%で、「支持しない」は47.2%という恐るべき数字。おいおい、これでは参院選挙は惨敗ではないか。
実際、最近手詰まりでうまく行かない。基本は、私が信奉する大国主義・軍国主義・新自由主義の改憲路線が、国民の意識と大きく乖離しているということなんだ。国民は、右翼の軍国主義者はキライなの。そのことは、前から分かっているんだけど、これまではなんとか右へ右へと国民をひっぱってくるのに成功してきた。もう少しで、憲法改正まで漕ぎつけることもできそうだったのに。どうすれば国民を欺しおおせるか。私だって真剣に考えているんだ。
こういうときは、アタマを切り替える。経済政策がうまく行かないのも、貧困や格差も、地方の疲弊も、原発再稼働も、沖縄問題も、福祉や教育の財源を調達できないこともTPPも、そして政治とカネの問題も、すべてはアベ政権の政策が悪いからではない、と割り切ること。責任転嫁は私の得意技だ。
経済の指標って、どうにでもいじって操作することができるんだよね。これがダマシのテクニック。手品のタネ。ちょっとでもよい面があれば、針小棒大にアベノミクスの成果だと言い立てる。それでもごまかせないときは、「民主党政権時代の負の遺産が、まだ払拭できていない」と民主党のせいにする。あるいは、「リーマン級の世界経済のデプレッションが原因」と責任転嫁する。これまでは、こうやつて切り抜けてきた。
でも、今一番頭が痛いのは、野党の選挙共闘。しかも、市民の後押しがついている。これには、これまでのマニュアルでは対応しかねる。実にやっかいだ。こいつが悩みの根源だ。
私が政治戦術において師と仰ぐのは、もちろんヒトラーさ。あの戦術を学ぶべきだとするのは、ひとり麻生さんだけではない。ヒトラーの戦術の成功は、例のニーメラーの言葉として定式化されているように思う。要するに各個撃破だ。ユダヤ人、共産主義者、社会民主主義者、労働運動、自由主義者、宗教家…。それぞれが、順次各個に撃破されて、ナチスの独裁が完成した。宗教弾圧を受けた牧師ニーメラーが自分のこととして立ち上がったときには、時既に遅しだったというわけだ。実に、各個撃破こそが、歴史から学ぶべき見事な教訓。これをわがこととして使いこなさなければならない。 ところが今、市民と野党が共同して政権に襲いかかっている。共産主義者も、社会民主主義者も、労働運動も、自由主義者も、宗教家もだ。女性運動も、若者も、学者も弁護士もではないか。表にには出て来ないが、在日もだろう。みんな一緒に束になってのことだ。各個撃破戦術が通じなければ、アベ政権の危機と言わざるを得ない。冷や汗が出て来る。こんなときには、基本に還ろう。彼らの共闘をぶちこわすための基本だ。そのキホンのキが、いうまでもなく反共攻撃。実はこれも、私の得意技。 基本原理は、ヘイトスピーチとおんなじだね。「キョーサントー」と「ニッキョーソ」という言葉を、いかにも醜悪なもののように繰り返す。「野党の共通政策は、まるでキョーサントーの政策そのものではありませんか」「まさか、そこまでキョーサントーと一緒に行動できるはずはない」「どこまで、キョーサントーと運命共同体になろうと言うのでしょうか」「あなたもキョーサントーですか」「どうした。ニッキョーソ、ニッキョーソ」
キョーサントーとは、悪魔の教えの信奉者ではありませんか。世の中には、まだまだキョーサントーとレッテルを貼られることを恐れる人たちがいる。それなら、そのことを最大限に利用するのが、政治家である私のやり方。共産主義が何であるか、日本共産党がどんな綱領や政策をもっているか、そんなことは問題ではありません。キョーサントーとレッテルを貼られてもいいのかい、という脅しの楔の打ち込み方。これが、「野合批判」の本質。
私には、臨機応変という才覚はない。だからもっぱら、ワンパターンの反共演説となる。動画で繰り返されるから、ワンパターンがみっともないと言われるが、しょうがない。
最近のワンパターンは、「私は子供の時、お母さんからあまり他人の悪口を言ってはいけない。こう言われました。あまり野党のことを批判したくありませんが、分かりやすくするために少し批判させてください」と野合批判をする。「気をつけよう、甘い言葉と民進党」「民進党には、もれなく共産党がついてくる」を、繰り返す。
あの口の悪い日刊ゲンダイが、「口撃するほど票が逃げる 安倍首相の“反共”ネガキャン演説」と大きく報じている。「立法府の長である総理大臣」を夕刊紙が批判するなんて、民主主義の世の中で許されることなのだろうか。しかも、こんなにあくどい筆致。
「安倍首相が参院選の全国遊説で「野合批判」を強めている。とりわけ目立つのは共産党に対する“口撃”だ。安倍首相は国会質疑でいつも共産議員にコテンパンにやり込められている。だから「共産憎し」に力が入るのだろう。」「また共産批判だよ。ウンザリだね」「安倍首相の演説パターンはこうだ。最初に候補者を紹介した後、アベノミクスの“果実”とかいうインチキ数字を並べ立て、最後は野合批判で締めくくる。決まって批判の矛先は共産だ。」ああ、本当のところまったくそのとおり。やっぱりよく見られているんだな。 問題は、有権者の中に戦前からある「天子様に楯突く不敬・不届きな共産党」のイメージがどのくらい残っているのか。共産党員に対する差別意識に乗りかかることが吉と出るか、凶と出るか。実は、私にも確信はない。
日刊ゲンダイは、「安倍首相の頭の中には、一昔前の有権者の共産アレルギーの印象が強く残っているのだろう。それで調子に乗ってネガキャン“口撃”を続けているワケだが、効果は全く期待できない。」「有権者はちゃんと理解していますよ。若い世代なんて、アレルギーどころかシンパシーを感じている人の方が多いくらいです(野党クラブ担当記者)」などと言っているが、じゃあ、反共攻撃以外になにか効果のあるやり方があるかね。 私の反共ワンパターン。品がない。低次元の誹謗中傷。まともな政策論争になっていない。悪評は知っているよ。でも、志位さんだって相当なものだ。産経新聞が紹介する志位演説の最後はこうだよ。
「自公とその補完勢力を少数に追い込めば、参院選であっても安倍政権は総辞職になる。もうあの顔を見なくてもよくなる」と締めくくった。
「もうあの顔を見なくてもよくなる」って。こっちだって、「もうあの顔は見たくない」ね。 (2016年6月20日)
初出。「澤藤統一郎の憲法日記」2016.06.20より許可を得て転載
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