最後の一戦は国民投票での攻防に - 参院選で改憲勢力が3分の2を獲得 -
- 2016年 7月 11日
- 時代をみる
- 参院選岩垂 弘改憲
これからの日本の命運を決めるとされた参院選で、民意が示された。日本国民は、改憲勢力を勝利の舞台に立たせた。勢いに乗る安倍政権は、衆参両院での憲法改正発議を急ぎ、改正案を国民投票にかけることになるだろう。敗れた護憲派に残された道はただ一つ、この国民投票で多数派となることである。
7月10日投開票の参院選の結果は自民56人、民進32人、公明14人、おおさか維新7人、共産6人、社民1人、生活1人、無所属4人であった。非改選議員を加えると、参院で、自民、公明、おおさか維新、日本のこころなどの改憲勢力が、議員総数242人のうち3分の2(162人)を占め、改憲発議が可能となった。
護憲派の野党4党(民進、共産、社民、生活)は1人区で善戦したものの、最大の目標であった「改憲勢力3分の2阻止」はかなわなかった。
54・70%という投票率の低さも響いた。無党派層の多くが棄権したため、組織力に勝る自民・公明両党が順調に票をのばした。
参院選前に実施されたいくつかの新聞社の全国世論調査では、いずれも、憲法を「改正しないほうがよい」が半数を超えていた。また、朝日新聞の世論調査では、安倍政権のもとで憲法改正を実現することへの賛否を尋ねたところ、賛成は31%で、反対の48%が上回っていた。毎日新聞の世論調査によると、参院選後、憲法改正の手続きを進めることへの賛否を聞いたところ、「反対」との回答が45%で、「賛成」の36%を上回っていた。
にもかかわらず、参院選で改憲勢力が勝利しえたのは、自民党が明文改憲を目指しながらも選挙戦でそれを徹底的に封印し、その代わり「アベノミクス推進」を強調するという「争点隠し」に徹し、それが功を奏したからだろう。
護憲派の野党4党と、これに連携する市民団体は、「自民党の改憲草案が目指す方向は極めて危険」と有権者に訴えたが、一部選挙区で成功したものの、全国には浸透しきれなかった。
いずれにしろ、安倍首相はすでに3月2日の参院予算委員会で、「私の在任中に憲法改正を成し遂げたい」と明言、参院選で自民、公明両党に一部野党も加えた勢力で改憲発議に必要な3分の2以上の議席を確保することに強い意欲を表明していた。首相の自民党総裁任期は2018年9月まで。首相は、参院選に勝利したことで、我が意を得たりと一気に改憲に向けた作業を加速させるだろう。
日本国憲法第96条には「憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」とある。
衆院は、すでに改憲勢力が3分の2を占める。参院でも3分の2を占めたことから、安倍首相は改憲への作業を開始し、具体的には、衆参両院に設置されている憲法審査会の審議を早急に再開させ、ここで改正原案をまとめることに力を注ぐだろう。9条削除には国民の反発も強いと予想されるところから、まず「緊急事態条項」を加えるなどの改正原案を目指すことになるのではないか。
憲法審査会では、護憲派は少数派となる。したがって、ここでいかに闘っても勝てない。となると、勝負時は国民投票だ。それまでに、有権者に日本国憲法堅持を浸透させることができるがどうか。
日本国憲法を城に例えれば、すでに外濠も内濠も埋められた。もはや残るのは天守閣のみである。護憲派は、果たして最後の一戦で天守閣を護ることができるかどうか。
野党間で、「野党共闘」をめぐる論議も出てくるに違いない。引き続き「野党共闘」を進めて行くのか、それとも以前の個別の選挙戦に戻るのか。有権者の関心も高いことから、論議の行くえが注目される。
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