参議院選挙結果を観て英米の国民の選択に学ぶ
- 2016年 7月 15日
- 交流の広場
- 熊王 信之
参議院選挙結果の評価は、人に依り、様々のようで改憲派が改正発議に必要な議席数を得たのみ、とする人から、先行きに悲観的になり、既に改憲されたかのように云々される人まで色々なようです。
何れにしても、改憲派が、選挙で国民に理解を得られた、とするのは、聊か性急な情勢判断と見受けられます。 第一、改憲の内容を国民に提示して、議会では、改憲作業も進める、と訴えて当選された方々が居られるのでしょうか。 私が知る限りでは、何方も改憲に関しては、言及されておられません。
改憲の骨子すら国民に示さず、当選して後に、改憲に言及するのは、騙し討ち、或は、詐欺的手法ではないのでしょうか。 例えば、自民党候補であるならば、自党の改正案が存在するのですから、それを国民に提示し、説明する義務がある筈です。
そもそも国民一般は、自民党の改正草案なるものを読んで理解しているのかどうかが疑問ですし、その存在すら知らない人が多数でしょう。 自民党も、その案文と説明を国民一般に冊子形式にでもされて配布されれば如何でしょうか。 案文に依れば、改正賛成の国民も増えるかも知れませんからね。
尤も、私が読んだ印象では、近代民主主義国家の憲法改正草案と言うよりも、60年代英国テレビ映画の「プリズナーNo.6」(The prisoner)の舞台である「村」(The village)の憲章並みに思えましたが。 若しくは、監獄の囚人向けの注意書き、のように。
そもそも、国民投票になれば、この国に民主主義が根付いたのかどうか、国民の主権者意識が正常に機能するのかどうか、等が実際に検証されることになるので、有意義でしょう。
その参考になるのは、英国の選挙、それに今回の国民投票です。 選挙では、第二次大戦後、勝利の象徴的なチャーチル率いる保守党から、戦後の国民福祉向上に必要な施策を実施する労働党に、あっさりと投票先を変える決断をした経過がありました。
今回の国民投票では、長年のEU傘下にあって自国主権を制限され、国民の福利向上よりもEU傘下の東欧諸国からの移民対策に翻弄される等、国家の上位に君臨する官僚組織の専権に耐えられなくなった一般国民が、一握りの上層階級と富裕層へ鉄槌を下す決断をしたのでした。
ところが、この国のリベラル、左派は、己が、日常的に新自由主義反対を言い、グローバル資本主義の限界を言い募る性癖を有する処、一般庶民が本能的に、それらの敵に抗うと、その正体を見極めずに、これまた、本能的に、一般庶民の行為を非難し、愚民の仕業、と非難するのです。 一般国民から見れば、それらの輩も、敵性のものに観えるのが当然でしょう。
私から観れば、EUの正体見えり、枯れ尾花、ですが、これが見えないのですね。 だから、温暖化詐欺に騙されるのです。
流石に、英米の政治家は、敏感です。 トランプ氏は、すぐさまに、主権を回復した英国民を賞賛されました。 EU離脱を思い止まるよう脅迫したオバマ大統領とは相違します。 オバマもクリントンも同じ穴の貉と観えて、EU賛歌を合唱されるのは同じです。
ところで、このトランプ氏。 実業で鍛えた感性で、二酸化炭素地球温暖化の嘘を見破っておられます。 従って、「米大統領選で共和党の候補者指名を確実にしたドナルド・トランプ氏は、当選後に協定から脱退すると宣言し、枠組みが骨抜きになる懸念も強まっている。」と報道される処です。
地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」、年内発効へ努力 トランプ氏の脱退宣言で骨抜き懸念も 産経ニュース 2016.5.27 20:53更新
http://www.sankei.com/life/news/160527/lif1605270029-n1.html
蛇足ですが、一般の英国民は、強かです。 日常の英国を生活者目線で語られるブレイディみかこ氏の文中には、こうした遣り取りがありました。
「子供を学校に送った帰り道、車の上に4本聖ジョージの旗をたてている近所の離脱派の中年男性が車内に掃除機をかけていた。
「離脱だったね。大変なことになるってテレビも大騒ぎしてる」と言うと彼は言った。
「おう。俺たちは沈む。だが、そこからまた浮き上がる」
残留派のリーダーたちにはこのおじさんや郵便配達のお父さんや、ストリートのリアルな生活者の姿が見えていなかったのである。」
地べたから見た英EU離脱:昨日とは違うワーキングクラスの街の風景 ブレイディみかこ ニューズウィーク日本版 2016年6月28日(火)16時05分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/06/eu-29_2.php
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